2010-01-01から1年間の記事一覧
日本列島に固有の生物について、その多様性や地理的変異を明らかにするという研究に強く興味をもっています。最近、Evolution 誌に日本固有のマイマイカブリの地理的変異についての論文が出版されたようで、さっそく読んでみました。 カタツムリを捕食するマ…
待望の(?)潜葉虫(せんようちゅう)に関する本が出ました。 絵かき虫の生物学 目次 絵かき虫の生物学(序論) I. 絵かき虫の分類・多様性 コウチュウの絵かき虫 葉に潜るハエとその進化史 潜葉性をもつガ類の多様性 ハチの絵かき虫 II. 絵かき虫の生態 チ…
沖縄本島北部に来ています。先月の西表島に引き続き、大陸島の生物多様性の高さを感じているところです。南西諸島で最大の島ですから、多様性が高いのは当たり前かもしれませんが。 北部の森林(イタジイと呼ばれるシイが優占する常緑広葉樹林) 沖縄といっ…
先日の日曜日、久しぶりに昆虫学会の支部会に参加してきました。 京都にいる時は毎年のように支部会に参加していたのですが、関東地方に移ってからは参加したことがありませんでした。ちょっと遠い場所で開催されていたのと、いろいろ忙しかったからです。 …
以前から気になっていた蔓脚類(まんきゃくるい)についての一般向けの書物を、西表島への出張の道すがら読んでみました。 フジツボ―魅惑の足まねき 一般にはフジツボと呼ばれていますが、ダーウィンもかなり真剣に研究に取り組んだ動物の仲間です。固着性で…
西表島を訪れています。帰国後の寒さで顔にあかぎれができそうなほどでしたが、当地ですっかり回復しました。やっぱり南の島は心地よいです。 大きな地図で見る ここ数年、小笠原諸島やハワイ諸島といった海洋島でのフィールドワークがメインでしたので、南…
とあるグループの種多様性が減少することで、食物網を通じて他の生物にどのような影響を与えるのでしょうか。 例えば、植物の種数が増えれば、それらを食べる植食者の種数が増えることが予想されます。では、植食者を食べる捕食者の種数や個体数は増えるので…
ホノルルから帰国する機中で、キイロショウジョウバエを見かけました。自然状態で何千から何万年に一度くらいしか成功しないような、異なる生物地理区を越える移動イベントは、飛行機に乗るとほんの数時間でなしとげてしまいます。 島に固有の鳥類を絶滅に追…
小笠原諸島など海洋島における生物相やその進化について一般的にわかりやすい本が出版されていました。この2年間ここで紹介してきたような話が、かなりわかりやすくまとまっています。 小笠原諸島に学ぶ進化論 ―閉ざされた世界の特異な生き物たち― 「Island …
帰国して最初に読む本は決まっていました。*1 生命は細部に宿りたまう ミクロハビタットの小宇宙 日本列島の生物とは、生物多様性の保全とは、いろいろと考えるのに良い本です。日本列島に固有の生物とその種間相互作用について、さまざまな事例を紹介してい…
ようやく1本の論文が受理されました。データをとりはじめたのが11年前、取り終えたのが8年前、博士論文の1章としてまとめたのが6年前、最初に論文を投稿したのが4年前、そして複数誌に却下されて、ようやく受理に至ったというわけです。特に難易度が高い雑誌…
この二年間でいろいろな話題をとりあげてきましたが、その都度、できるだけ原著論文や総説論文を引用するようにしてきました。どういう位置づけの雑誌であるかはふれてきませんでしたが、実にさまざまな専門雑誌があります。具体的に引用文献、参考文献とし…
今日届いた電子メールを開くと、アンケートの依頼がありました。最近、投稿雑誌や新規雑誌のアンケート依頼がよくあるのですが、「Managed Relocation」というキーワードをみて、真剣に取り組んでみる気になりました。今話題の「気候変動に備えた人為的な生…
本土の大学で学位を取得されハワイ大の隣の研究室にやってきたポスドクの人がいます。なんと、日本での昆虫少年の経験もありながら米国で昆虫学を学んだという憧れの経歴を持っておられます。 先月昼食をとりながらじっくり話す機会があったのですが、昆虫少…
尖閣諸島に関する話題の中、魚釣島でのノヤギ問題を解決しようという活動がはじまったようです(センカクモグラを守る会)。 「センカクモグラを守る会」設立記者会見 ヤギはこれまでに尖閣諸島だけでなく世界のさまざまな島に放たれ、その強い増殖率によっ…
新しい院生候補の人が研究室プロジェクトの見学にきていたこともあって、土曜の夕方に教授宅でのいつものホームパーティーにおよばれしました。なかなか締め切りに追われてのんびりもしていられないのですが、ここは米国でしかもハワイ。週末に忙しくしてい…
これまでなんとなく英語でのセミナー発表を避けてきたのですが、ついに発表をせざるをえなくなりました。もっとも、研究室のミーティングや学会(Evolution 2010)などで15分程度の短い発表はしてきたのですが、30分をこえる発表は準備などがちょっと面倒な…
ニュージーランドの飛べない鳥キウイは、夜行性で視力はかなり弱く、嘴の先端にあるセンサーを使って餌を探してるそうです。そんな奇妙な習性をもつ鳥が、ハワイにもかつて生息していたのではないか、というお話です。 ハワイ諸島は、世界でも最も多くの種の…
「むし」と聞けば、昆虫やムカデ、ダンゴムシといった節足動物を思い浮かべる人が多いでしょう。実際、最も種数が多いグループですし、陸上で目にする虫のほとんどは節足動物(門)です。しかし、他にも「むし」と呼ばれる動物門がたくさんいます。 その一つ…
さまざまな地域間で比較すると、在来種数が多い場所ほど外来種数も多い傾向があることが知られています。あれ?在来種が多い群集ほど外来種は侵入・定着しにくいのではなかったのでしょうか。実は、在来種数と外来種数の関係は複雑で、どの空間スケールでみ…
ありがちな質問として、 「外来種は種多様性を高めているんじゃないでしょうか?」 というのがあります。実際、以前に紹介したように島嶼部では外来植物の増加によって本来の種数の二倍にもなっています(参考:島で植物の種数は二倍になる 1、2)。 種多様…
英国王立協会の速報誌 Biology Letters にて新種記載されたオドリバエの前脚が謎めいていておもしろい。 オドリバエ科(Empididae)といえば、成虫は捕食性で、オスは餌(小昆虫)を捕まえ、それをメスにプレゼント(婚姻贈呈)して交尾するというちょっとキ…
プラナリア(ウズムシ綱 Turbellaria)は生物の教科書に頻出するため一般にもよく知られた扁形動物(Platyhelminthes)でしょう。体の一部を切断しても、その切断片から一つの個体に再生可能なことで知られ、このため生物実験によく使われているわけです。 …
昨今「生態系サービス(ecosystem service)」という用語が一般的にも普及しつつあります。生態系が保持している機能から人々がいかに恩恵をうけているかを定量的に査定したものです*1。 島の固有種が生態系サービスを提供しているかもしれないという興味深…
ミツバチやアリなどの社会性ハチ類、そしてシロアリ類では、自らは繁殖しない階級(カースト)の存在が知られています(参考:真社会性)。例えば、ミツバチのワーカーは餌をとり幼虫の世話をしますが、自らは繁殖しません*1。繁殖するカーストとしないカー…
論文を投稿して査読者によるコメントをもとに編集者がその掲載の是非を検討するというのが、ピア・レビュー(peer review)と呼ばれるシステムです(参考:査読という仕事 / 査読コメントが辛いわけ)。 論文の掲載が断られなかった(リジェクトされなかった…
本土の大学からやってきていたインターンシップの学生が先週帰っていったそうです。2ヶ月くらいの滞在で、がんばって実験していたのが印象的でした。 せっかく実験するのだから学術論文としてまとめたらいいいのにと内心思っていたのが通じたのか、先生がけ…
南の島といえば椰子の木、ここハワイにも多くのヤシが生育しています。もちろん、ワイキキのビーチに生えているヤシは人が持ち込んできた園芸種です。ハワイには Pritchardia というヤシ科の属に23種もが分布しています。すべての種は一つの島ごとにしか見ら…
野ブタとは、文字通り、人によって持ち込まれ野生化したブタです。 ハワイ諸島は18世紀終わりにキャプテンクックが発見する以前からポリネシアの人々が入植し生活してきました。彼らは、西洋人よりも前からハワイにブタを持ち込んでいました。初期にポリネシ…
ハワイ諸島での絶滅や種の保全、外来種による影響などを語る上で欠かせない事例としてハワイミツスイ類があります。あまりに有名な話なので、これまで特別にとりあげてきませんでしたが、2009年に良い総説論文が出ていたのでそれを含めてざっと紹介しておき…