2010-01-01から1年間の記事一覧

同好の士

研究への情熱を感じる良い話。 九州のアマチュア天文家が見つけた新星が、強い放射線を出す新種の天体であることを、京都大・広島大などの研究グループが確かめた。13日付の米科学誌サイエンスに、アマとプロ、連名で発表する*1。研究者は「連携がうまくい…

ベルクマンの法則 (Bergmann's Rule):パターンかメカニズムか?

動物の体サイズの地理的変異に関して、島の法則(フォスターの法則)やアレンの法則について紹介してきました。最も有名なベルクマンの法則(Bergmann's Rule)については Wikipedia の一般的な定義を引用することですませてきました。 恒温動物においては、…

ハワイのインターネットトラブルなど

自宅ではケーブルテレビと一緒にインターネットも使えるよう契約しています(テレビと込みで月々78ドル)。このブログも家で書くことが多いのですが、しばしばサーバーがダウンしているのか、つながらないことがあります。これまでも比較的大きな停電の際に…

ハワイで歯科に行ってみた

夏といってもずいぶん過ごしやすいと改めて感じる日々です。なにより良いことは、夜は30℃をこえないこと。寝る前に必ず気温をチェックしていますが、だいたいは27から28℃くらいで安定しています。平地だと急に寒くなることもないので、寝冷えも今のところあ…

ハワイのエスカルゴ

久しぶりにハワイの外来生物についての話題でも。 ハワイの低地は年中温暖な熱帯地域に属するわけですが、オアフ島でも最高1000m、マウイ島で最高3000m、ハワイ島では最高4000mをこえる山があります。つまり、山にいけば熱帯というよりも温帯に近い気温にな…

インパクトファクターの信頼性

インパクトファクター(impact factor:以下IF)とは、トムソン・ロイター(Thompson Reuters)社の有料サービス Journal of Citation Reports によって提供される科学雑誌の評価基準です。IF は毎年計6月下旬頃に発表されています。例えば、最新の2009年の …

島にゾウガメを放そう!? 島嶼生態系への代替種導入(taxon substitution)

北米大陸での再野生化計画に関して極めて否定的な見解が多いことを紹介しました。 メガファウナに限らず絶滅種の代替種を導入しようという考え方(taxon substitution)は、島を含めてさまざまな地域に適用できるものです。 島環境では生態系に強い影響を与…

北米大陸にライオンを放そう!?? 再野生化(rewilding)をめぐる論争

害虫や外来種を駆除するために原産地の天敵を導入するのが「古典的生物(的)防除」と呼ばれる考え方です。これまでにも繰り返し述べてきたように、この人為的な外来種の導入はしばしば標的としない生物にも影響を与えるという意味で、その問題点が指摘され…

捕食よりも種内競争の淘汰圧が強い?

種内(個体群内)の激しい競争が強い淘汰圧となり表現型が変化するというのがダーウィン以来の進化の一般的な考え方です。表現型の変化というのは、体サイズが大きくなったり、脚が相対的に長くなったりといった形態変化を含みます。 種内競争といっても、餌…

アレンの法則(Allen's rule):鳥の嘴は高緯度ほど小さい

動物の体サイズの地理的変異に関するパターンとして、ベルクマンの法則や、フォスターの法則(島の法則)などがあります(参考:島が大きくなると体サイズが増加する?;島の法則)。 ベルクマンの法則は1847年に Christian Bergmann によって提唱されたパタ…

唐辛子が辛い進化生物学的な理由*

先日、研究室のメンバーがランチに誘ってくれました。タイ料理、メキシコ料理、インド料理のどれがいいと聞かれ、特に食べ物にこだわりはないので、どれでも良いと言ったのですが、選んでほしいとのこと。しかし、その選択肢の中にある意味をちょっと察して…

有機農法が害虫の天敵の多様性を高め収穫量を増やす

生物群集を記載する時に重要なのは、まずは種数(=種の豊かさ species richness)でしょう。10種からなる群集A、同じく10種からなる群集B、そして5種からなる群集Cを比較するとき、群集Cより群集AとBの方が種多様性が高いと言う場合があります。 しかし同じ…

共生細菌が外来線虫から宿主を防衛する?

先日の学会で口頭発表を行うとき、セッションがはじまる前にプレゼンのファイルを備え付けのパソコンに入れておく必要がありました。セッションには講演者の紹介を行い質問を受け付ける座長(チェア)というのがいます。 チェアは紹介するにあたって、読みに…

W杯のこと

たいていの試合は早朝にあったためでしょうか、米国ではほとんど話題になっていないW杯でした。そもそも生中継はするけれど、試合の再放送は全くみかけませんでした。 日本戦はポートランドで朝にちらっと観たくらい。ただ、3位決定戦と決勝戦は土日の朝にあ…

被子植物の未記載種数の推定

熱帯の節足動物の未記載種の多さを紹介したわけですが、ちょうど被子植物の推定種数についての論文が英国王立協会紀要に出版されています。 これまでの期間記載されてきた努力量を考慮したモデルで推定を行い、専門家の推定値をと比較して検討しています。結…

種の記載がすべて終わるのは何年後か?

名前も未だついていない節足動物の種数は膨大です。いちいちニュースにもなりませんが、毎日のように新種が発見され新たに記載されています。いつになったら全生物種のカタログは完成するのでしょうか。 そもそも、「地球上には何種類の生物が生息しているの…

昆虫少年の歩む道

米国でそれほど多くの知人がいるわけではないけれど、学生や大学院生、教員の中に、いわゆる子供の頃からその対象生物にどっぷりつかっているという人をほとんどみていません。 例えば、幼少の頃から昆虫を採集して標本を作成しているような昆虫少年が、その…

アリと植物の相互作用

先日参加した Evolution 2010 の会場では、進化学や生態学に関係する多くの書籍が販売されていました。学会も終盤になると、展示していた書籍の一部が50%引きという格安になっていたので、ついつい買ってしまいました。 そのうちの一冊が「The Ecology and …

米国開催の進化学会に参加

オレゴン州のポートランドで開催された Evolution 2010 に参加してきました。実は、日本国外で開催された学会に参加するのは初めての経験です。 ポートランド市街を走るマックス・レイル(町の中心部に限り無料で利用できる) ポートランドは札幌とほぼ同じ…

国が富めば外来種はふえる

島が大きければ人口が増え、これによって外来種の持ち込み(導入圧:propagule pressure)がふえる傾向があることは以前に紹介しました(参考:島が大きくなると外来種数も増える)。これは何も島に限らず、大陸でも同じことです。 欧州はEUの統合により諸国…

海外からのアウトリーチ?

最近の科学研究費に対する厳しい情勢なのか、海外に滞在する研究費にもアウトリーチ活動というのが求められているようです。義務ではないようですが、報告書には論文や学会発表などの業績の他に「アウトリーチ活動」の結果を書くよう求められているわけです…

ハワイで眼科に行ってみた

ハワイに来てずいぶんたちますが、最近まで風邪をひくこともなく割合元気でやってきました。しかしここしばらく足の古傷が痛んだり、体調を崩したり、健康面でもいろいろと不安なことがでてきました。日本で海外渡航保険に入ってきているので、米国の高い治…

種分化に必要な最小の島面積は?

大きなスケールでの種数ー面積関係を生み出すメカニズムの一つとして「島が大きくなるほど種分化がおこりやすい」ことを紹介しました。 カリブ海のアノール類の種分化と島面積の関係を調べたオリジナルな論文は2000年にNatureに掲載され、その後「The Theory…

英文の個人差

先日、とある論文について共著者であるネイティブのお二人に英文原稿をチェックしてもらった件について書きました。 一人目のコメントや修正案にしたがって直したのものを、二人目に送りました。一人目は、当然のことながら私の英文を真っ赤になるほど添削し…

絶滅危惧種ほど研究されやすいか?

パンダやライオンのようなカリスマ的人気のある大型哺乳類が絶滅の危機に瀕しているといえば、多くの人がその保護に関心をもつことでしょう。しかし、あまり注目されていなくても、同程度に絶滅の危機に瀕している動物は山のようにいます。また、絶滅危惧種…

夏休みのインターンシップ

先日、大学の図書館に行ったら、セメスター中にはあれだけいた学生がほとんどいませんでした。やはり試験や授業のために勉強していたのでしょう。夏休みは実家に帰ったり、アルバイトをしたりして過ごしているのかもしれません。 出入している研究室の一つに…

侵略的外来種とは

外来種問題でしばしばよく耳にする「侵略的外来種(invasive alien species)」とはどういう外来種を指すのか。 一般には、自然(在来)生態系や人間活動に強い影響を与える外来種のことを言います。しかし、科学者が一般的に使っているにもかかわらず、定量…

海を渡るクロコダイル

ナショナルジオグラフィック・ニュース 「イリエワニ、ボディーサーフで海を渡る」 イリエワニ(Crocodylus porosus)は南西太平洋からインド洋の沿岸部にかけて広く分布するクロコダイルです。以前から、フィジーやバヌアツのよう離島にも分布することから…

会議は火曜の午後3時が最適か?

今の研究室には、週一度のミーティングがあります。主な目的は、大学院生がサボらないように研究の進捗状況をチェックすることで、教育の一環なのでしょう。自身が学生だったら、そんなチェックされたくないですけど。 When Is The Best Time for a Meeting?…

共著論文のチェック

先日、とある論文についてネイティブに英文校閲をお願いした件を書きました。 今回は、二人のネイティブに原稿のチェックをお願いしました。共同研究でしたので、英文の校閲だけでなく研究内容に沿った改訂もしてもらいました。まず一人目に送ったら、翌日に…