2012-01-01から1年間の記事一覧

他種との相互作用なしに生息する種は存在する

先日の特集記事で種間相互作用の普遍性を紹介する時に、「他種との相互作用なしに生息する種は存在しない」と書いたのですが、例外があることを今さらながら知りました。 One-Organism Ecosystem Discovered in African Gold Mine 「たった1種の細菌からなる…

「種間相互作用の島嶼生物地理」の特集記事

かの大震災から1年と9ヶ月。地震が起こったのは、札幌開催の生態学会において自身が企画していた「種間相互作用の島嶼生物地理」での講演の最中でした(参考:「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画)。その企画集会の内容をもとに、学会の和文誌に特集記事…

個体数の定義

昆虫などの動物の個体数は、しばしば「abundance」として表記されます。 生態学者は、abundance を以下の4つの方法で捉えている。 1. Global abundance:ある種の地球上の総個体数。 2. Local abundance:ある種の特定時期、区画、地域の個体数。 3. Relativ…

種数の定義

「種の豊かさ」とも訳される「species richness」は「生物種の数(種数)」のことを意味します。 群集生態学を勉強し始めた大学4年生の頃、論文の中で頻繁に出てくる「species richness」が最初何を示しているのかわかりませんでした。種数のことを言ってい…

ヒメバチ類の種多様性は熱帯林でも低くない?

緯度が低くなるほど種数が多い。温帯より熱帯の方が種多様性が高いのはさまざまな生物群で言われてきたことです。種数ー面積関係と同様、生態学では数少ない頑強な「一般則」の一つと考えられています。これまでも緯度ー種数関係についてはさまざまな視点か…

パターンの抽出とメカニズムの提案

Whittakerらの「海洋島の生物地理学における一般動態理論」は、生態学ではよくある研究の流れにのって提案されたものでした。 Emerson & Kolm (2005) は、ネイチャー誌上で、ハワイやカナリア諸島において種数の多い島ほど単島固有種率が高いことを明らかに…

海洋島の生物地理学における一般動態理論

2009年に「島の生物地理学の理論、再び」を紹介しました。その中で、Robert J. Whittakerらが、マッカーサーらの理論は孤立した海洋島ではうまく説明できないことが多く、新たに「海洋島生物地理学における一般動態理論(general dynamic theory of oceanic …

論文のカラー図作成

論文の中で、研究に使った試料や動植物をカラー写真を使って示したい時がしばしばあります。また、複雑な図をわかりやすくするために凡例や線を色分けしたい場合もあるでしょう。つい数年前まではカラーチャージを気にして、なかなか思い切ってカラーにでき…

メールで論文請求

職場で図書委員というのをやっています。確か中学1年生の時以来です。中学生の頃の図書委員会では廃棄する本を決めたりしたことを覚えていますが、今は研究所で購読する学術雑誌を決めたりすることが主な仕事です。 今の職場ではNatureやScienceの冊子は購…

ホットスポットで昆虫採集

以前にホットスポットという言葉の使用法について紹介したことがあります(ホットスポットとは)。それから原子力発電所の大事故が起こって、日本ではホットスポットといえば放射性物質でひどく汚染された地域を指すことが多くなったように感じます。 先日、…

カブトムシと樹液

子供の頃からずっと昆虫採集を続けてきましたが、今年ほどカブトムシをたくさん採集した年はなかったでしょう。たくさんの個体を必要とする案件があったからですが、今の職場の構内だけでかなりの数を採ったと思います。実家は大阪の住宅街にあって、少年時…

奥日光のシデムシ

先日、梅雨の晴れ間を狙って奥日光まで行ってきました。 今回の目的は、山地性のシデムシ*1を採集することです。曇ったり、晴れたり、雨が降ったりの天気にも関わらず、目的のホソヒラタシデムシとカバイロヒラタシデムシを無事採集することができました。実…

論文質をとられる

論文を投稿していてしばしばあることなのですが、投稿先の雑誌から他人の論文の査読を頼まれます。もちろん、論文を投稿するからには、自分の論文に少なくとも3人(担当編集者と査読者)が関わるわけですから、自らがその役割を求められたら従うのは当然でし…

サギを観察

連休中、わずかな晴れ間を狙って鳥を見に行きました。 実は、鳥が好きでして、小学生の頃は日本野鳥の会の探鳥会というのにも参加したことがあります*1。 人混みと車を避けて比較的近くの河原で観察しました。ちょうど時節柄(繁殖期)サギの飾り羽や冠毛が…

なぜすぐに論文を再投稿できないのか

せっかくの良い季節なのに、天気がこうも悪いと本当にもったいないなあと感じる日々です。 さて、最初に投稿してから長く時間がかかっている論文があります。その改訂を行いようやく再投稿しました。論文の改訂や再投稿について、いろいろ反省することが最近…

大学院修了後の歩む道

わたくしごとですが、大学院を修了後、ポスドク(国内の大学研究室)を経て、独立行政法人(独法)の研究所に入所し、研究留学(海外の大学研究室滞在)をはさんで、現在も独法研究所で勤務しています。独法研究所というのは、たぶん、一般の人からだけでな…

ジュラシック・パーク

さて、恐竜図鑑の次は、動く恐竜も見てみたい。ということで、かの『ジュラシック・パーク』を改めて観てみました。続編の『ロストワールド/ジュラシック・パーク』および『ジュラシック/パークIII』も含めて、DVDはすごく安いしお手頃でした。 『ジュ…

恐竜図鑑

『決着! 恐竜絶滅論争』を読んだのをきっかけに、 白亜紀末の大量絶滅に興味をもったので、『絶滅のクレーター―T・レックス最後の日』や『ネメシス騒動―恐竜絶滅をめぐる物語と科学のあり方』、『恐竜はネメシスを見たか』と続けて読んできました(参考:恐…

恐竜絶滅と周期的大量絶滅

白亜紀の終わりを告げる6500万年前の小惑星衝突による恐竜の絶滅について最初に知ったのは、中学生か高校生の頃でした。確か、英語の教科書に載っていたので単語を調べて熱心に読んだ記憶があります。恐竜を含む多くの生物が絶滅したと思われる地層の粘土層…

種間関係の多様性を俯瞰する

さまざまな生物間相互作用に興味のあるナチュラリスト向けの本が出版されました。 『種間関係の生物学―共生・寄生・捕食の新しい姿』 目次 はじめに 第1部:食うー食われるの新しい姿 第1章:形を変えるオタマジャクシ:操作実験からのアプローチ 第2章:右…

日本人と生物地理

去年の3月11日は、私自身にとっても日本全体にとっても忘れない日となりました。地震が起こったのは、ちょうど、札幌で開催されていた日本生態学会の大会にて、私自身が企画した研究集会の発表の最中でした。 この一年を振り返って、自身の研究の意義を見失…

南極にも外来種

ナショナルジオグラフィックニュースより「南極で増える外来植物、原因は防寒具」 研究者や旅行者に付着して南極にも外来種が侵入しているというPNAS発表の論文です。 研究を指揮した南アフリカのチョウン教授は、南氷洋のさまざまな島の生物相を調べ、島面…

南極氷底湖の生物相解明にむけて

ナショナルジオグラフィック ニュースより「南極最大の氷底湖、到達を確認」 ついに南極大陸最大と推定される氷底湖ボストーク湖に到達したというビッグニュースです。昨年末に読んだばかりの「地球環境を映す鏡 南極の科学」の中では、氷底湖の発見は南極大…

千石先生と島の生物学

悲報でした。 千石先生が死去 「わくわく動物ランド」「どうぶつ奇想天外!」で人気 私の子供時代、「わくわく動物ランド」を毎週楽しみに観てたものです。しばしば番組に登場されていた当時の千石先生の年齢が、現在の(私の)年齢に近いと知って少し感慨深…

ミツバチは重要な送粉者か?

生態学・進化学の最新のトピックを扱うTrends in Ecology and Evolution、略してTREEという雑誌があります。新規なデータに基づく原著論文は含まれておらず、出版された論文紹介(Update)や、意見交換(Letter)、新規なアイデアや意見(Opinion)、そして…