海外メディアの取材と対応

 毎日、世界中で多くの科学論文が出版され、同時に最新の論文に関する記事がさまざまなメディアに取り上げられています。では、メディアの記者がどのように論文の出版を知り、出版と同時に記事にすることができるのでしょうか。

 

論文を書いて出版をしている研究者の人には当たり前のことかもしれませんが、それ以外の人にはあまり知られていないプロセスかもしれません。

  

 科学関係の記事が出版される海外メディアにはどういうものがあるのでしょうか。下の図を御覧ください。

 

f:id:naturalist2008:20190209224127j:plain

Infographic: The Best And Worst Science News Sites (American Council on Science and Health) 

www.acsh.org

 

 図では、各メディアのロゴ(名前)が2つの軸からなる散布図としてしるされています。米国科学衛生審議会(American Council on Science and Health)が作成したものです。詳細は「科学ニュース、どのサイトなら信頼できる?主要海外メディアのインフォグラフィックが公開」の記事にあります。

meridia.tech

 

 ようは、科学や医学の記事については、図の左上にあるほど信頼性があり、右下ほど質が低いメディアということになります。科学者自身がこぞって投稿するネイチャー(Nature)やサイエンス(Science)が最も科学的証拠に基づく信頼性の高く、デイリー・メイル(Daily Mail)とかハフィントン・ポスト(The Huffington Post)が科学的証拠に乏しい信頼性の低い記事を多く載せている傾向があるということになります(この見解には異論はもちろんありえます)。

 

 最新の学術論文がメディアにとりあげられるのにはいくつかのパターンがあります。最も多いのは、掲載雑誌の出版社や論文著者の研究機関によるプレスリリースをもとに記事が書かれることです。論文を受理した出版社や論文を執筆した著者は、当該論文の出版に先駆けて(例えば1週間前)、プレスリリースを行うことがあります。プレスリリースというのは、メディア向けの素材提供です*1科学ジャーナリストや記者はこのプレスリリース素材をチェックし、必要に応じて出版予定の論文にアクセスしたり著者に取材し、記事を書くことができます。そして、その記事は解禁日(通常は論文の電子出版日)に公開するという流れです。メディアはこのプレスリリースで知り得た内容を解禁日前に公開することは禁止されています。その他のパターンとしては、すでに出版された論文について記者が取材を行ったり、メディアにすでに取り上げられた論文について二次的に記事にしたりすることもあります。

 

 1年半くらい前に、私自身が執筆した論文が多数の海外メディアにとりあげられたことがあり、どのような取材を経て記事になるのかを体験できました。時代によってそのスタイルも変遷するとは思いますが、今回の体験(2018年2月)をメモとして残しておこうと思います。以下、代表的なメディアごとに記します。

 

National Geographicナショナル・ジオグラフィック

 

 米国に本拠地を置く「NatGeo(ナショジオ)」としてよく知られている媒体です。伝統ある雑誌を出版し、英語を筆頭に数十カ国語で発行されています。紙媒体の雑誌がかつては主流でしたが、現在はオンライン記事も充実しており、最新の研究成果もウェブサイト上で取り上げられています。

 出版社のプレスリリースをチェックしたようで、NatGeoによく記事を書いているらしいフリーのライターから電子メールが届きました。論文内容について取材がしたいので都合の良い時間帯と電話番号を教えてくれというものでした。もちろん、英語での会話のやりとりは大変なので、質問事項を電子メールで送ってくれとお願いしました。その後、6つくらいの質問事項がメールで送られてきて、それに答えました。また、Dropboxの共有リンクで記事に使用可能な動画と画像を提供しました。

 その後は、NatGeoのビデオ・プロデューサーとフォト・プロデューサーから別々にメールが届き、動画や画像の編集と使用についての許可関係について説明されました。内容としては、動画や画像が世界中に様々な言語で配信されることなどが明記されていました。

 ライターによって執筆された記事は、論文出版日にオンライン記事として配信されました。記事内の動画は最終的にはYouTubeのNatGeoの複数チャンネルからも配信されました。最終的には日経サイエンスナショナル・ジオグラフィック(日本語版)のオンライン記事として翻訳され掲載されました。

 配信後、英語記事においてクレジット上の問題があったのと、記事や動画から原著論文へのリンクを貼ってももらえず(通常の英語記事にはリンクがある)、記事を書いたライターや上記プロデューサーにメールを送ったのですが、そのまま放置され改善されませんでした*2。憧れのNatGeoでしたが、やや不満が残りました。

 

Science Magazine

 

 米科学誌Science(サイエンス)を発行するAAASが配信するメディアです。オンライン記事として最新研究成果なども配信しています。

 論文に関連する動画や画像を使用可能かどうかについて電子メールで問い合わせがありました。生態学Ph.Dをとり、Science Magazineで編集者をやっている方のようでした。Dropboxへのリンクを送り、その後は動画の使用許可やクレジットについてやりとりました。特に、論文内容への質問はなく、事前の記事チェックもありませんでした。

 記事は論文出版日にオンライン記事として配信されました。記事内の動画はYouTubeのScience Magazineのチャンネルからも配信されています。クレジットも原著論文へのリンクも適切で良い印象です*3

 

Nature

 

 英科学誌Nature(ネイチャー)は有名ですが、最新論文以外にも科学にまつわる様々な話題についてのオンライン記事も配信しています。 

 「Research Higlights」という最新論文を紹介するコーナーの記事としてとりあげたいと電子メールが届きました。メールにはすでに書き上がった文章(記事の草案)が添付されており、間違いがないかチェックしてほしいとのことでした*4。Nature専属かどうかはわかりませんでしたが、Ph.D.をもつ記者でした。論文の内容を、大げさでなく、要領よくまとめられていました。その後は、photo researcherから画像を求められたりしました。

 記事は論文出版日に「Research Higlights」のオンライン記事として配信されました。クレジットも原著論文へのリンクも適切でした。掲載画像は静止画ではなく、動画をもとにしたGIFに編集されていました。「Research Higlights」ではGIFの記事あまり観たことがなかったので新鮮でした。なお、紙媒体にも記事として掲載されているらしいのですが、今や日本では紙媒体での販売を行っていないため未見です。

 

The Atlantic

 

 米国の一般向け雑誌で、科学以外にも文芸、政治、外交などについての記事も多いようです。

 The Atlanticの科学ライターから論文に関連する7つの質問が電子メールで送られてきました。丁寧に質問に答えて、Dropboxのリンクを送り、動画や画像をダウンロードできるようにしました。

 記事は論文出版日にオンライン記事として配信されました。私たちの研究だけでなく、関連する論文もレビューし、一つのエッセイとしてまとめられていました。ただし、クレジットは明記されていたものの、残念ながら原著論文へのリンクはありませんでした。

 

Science News

 

 米国のサイエンスに関する一般向けの雑誌です。

 プレスリリースをチェックして電子メールが送られてきました。Science Newsの記者からで、論文のおもしろさを讃えてくれ、お話したいのでスカイプか電話番号を教えてほしいとありました。米国東海岸との時差も大きいので電子メールで質問を送ってもらいました。9つもの質問が送られてきて、丁寧に答えました。画像を求められましたので、Dropboxのリンクから画像・動画をダウンロードできるようにしました。 

 記事は論文出版日にのオンライン記事として配信されました。記事内の動画はYouTubeのScience Newsチャンネルでも配信されました。クレジットも原著論文へのリンクも適切で、満足できるものでした。

 

New Scientist

 

 英国の週刊科学雑誌です。

 New Scientist所属の記者から、〆切まで時間がないが、4つの質問に答えてほしいという電子メールが届きました。その後何度か電子メールでやりとりしました。

 記事は論文出版日にオンライン記事として配信されました。ややタイトルが大げさになっていましたが、クレジットも原著論文へのリンクも適切でした。著者(私)らのウェブサイトへのリンクまでありました。

 

Live Science

 

 Purch Groupが運営する科学ニュースのウェブサイトです。

 論文出版後に、Live Scienceの記者から 動画と画像をシェアさせてほしいと電子メールが送られてきました。Dropboxのリンクを送りました。

 オンライン記事では、動画や画像とともに論文の詳細を紹介されました。クレジットも原著論文へのリンクも適切でした。

 

DPA(ドイツ通信社)

 

 ドイツ最大の通信社で、ドイツ国内でドイツ語の記事を配信しているようです。配信した記事を、ドイツの各メディア(オンライン、雑誌、新聞)などが使用するようです。

 プレスリリースをチェックしたのか、電話と電子メールを使って東京支局から連絡がありました。画像等の使用許可と、1,2つの質問がありました。

 記事は論文出版日に、数多くのドイツメディアによって配信されました。ドイツ語なのでほとんど読めなかったのですが、原著論文へのリンクやクレジットは、適切な場合もあれば不適切な記事もありました。

 

Newsweek 

 

 米国の週刊誌で、科学だけではなく政治や社会についての記事が多く、日本でもニューズウィークとして出版されています。

 Newsweek科学ジャーナリストから電子メールが届き、電話番号を聞かれました。電子メールで質問を送ってくれるようお願いしたところ、10を超える質問が送られてきました。丁寧に質問に答え、動画と画像がダウンロードできるようにDropboxの共有リンクも伝えました。

 記事は論文出版日にオンライン記事として動画とともに配信されました。クレジットも原著論文へのリンクも適切でした。

 

  上記以外の記者からも多数電子メールがあって眠れない1週間でした*5。ちなみに、日本語でのプレスリリースを全く行わなかったこともあり、日本のメディアは、ナショナル・ジオグラフィックの翻訳記事を読んだ記者の方が取材してとりあげてくれた1件のみでした。日本の記者は英語のプレスリリースはあまりチェックしていないか、日本人好みではない研究テーマだったのかもしれません。

 

念のため申し上げておきますが、これは私の限られた経験だけで紹介したもので、このようなプロセスを常に経るとは限りません。同じ時期でも記者によっては対応が違うでしょうし、時間が変われば各組織の体制も変わるでしょう。あくまで、個人的経験に基づく私の意見であることをご承知おきください。

 

*1:プレスリリースはウェブサイトへの提示や文書の配布、記者会見などいくつかの手段があります。海外メディア向けには、ウェブサイトへの提示が多いと思います。 

*2:日本語への翻訳時には、担当の方から電子メールをいただき、訳の確認や内容の修正、クレジットは明記してもらえました。ただし、日本語のナショジオの記事はすべて原著論文へのリンクがありませんが、これがなぜなのかは聞き忘れました。

*3:別の論文でも、出版後に別のフリーライターから論文PDFを送ってほしいと電子メールが送られてきたこともありました。論文を読んだその後、記事をための動画や画像の使用許可が求められました。数日後、オンライン記事として動画も含めて掲載されました。その場合もクレジットや原著論文へのリンクなどすべて適切で、満足できるものでした。

*4:出版予定の記事のチェックを依頼してきたのは海外記者ではNatureの記者からだけでした

*5:時差があるので主に深夜に連絡が来て、しかも記事の締切があるとかですぐに返事を求められるのが大変でした

孀婦岩における島の法則

 先日放映された「ダーウィンが来た!」の「世界初調査!東京の秘境 孀婦(そうふ)岩」は楽しめました。

 

伊豆諸島最南端において、海上からほぼ垂直に100mも突き出た巨大な岩(孀婦岩)を調査したところ、本州などに見られる種(個体)に比べて巨大化したウミコオロギ(未記載種)やイソハサミムシを発見したというドキュメンタリー番組です。

 cgi2.nhk.or.jp

 

 島で昆虫が巨大化するという現象自体、私自身は大変興味をもって観ました。しかし、番組内での解説で、二点ほど気になる部分がありました。

 

 一点目は、番組内で「普通、島に棲む生き物は体が小さくなるのが一般的です。例えば、九州の屋久島に棲むサルやシカ、本州のものに比べるとこの通りです(小さくなります)」という説明にひっかかりました*1。確かに例で述べられたような大型脊椎動物では島で小型化(矮小化)しますが、逆に小型脊椎動物では大型化(巨大化)することがよく知られています。これはフォスターの法則、もしくは島の法則と呼ばれるものです。この法則、10年ほど前にじっくり勉強したことが思い出されます。

 

島が大きくなると体サイズが増加する?

島の法則 Island Rule(1)動物の巨大化と矮小化

島の法則 Island Rule(2)ヒトも島では小型化した?

島の法則 Island Rule(3)巨大化した鳥たち

島の法則 Island Rule(4)一般性への批判

島の法則 Island Rule(5)昆虫や植物は?

 

 Wikipediaでも「島嶼化」という項目で解説されています。

 

つまり、「島に棲む生き物は体が小さくなるのが一般的です」というよりも、「大型動物は島で小さくなるが、小型動物は島で大きくなるのが一般的です」とするほうが生態学、進化学では一般的です。

 

大西洋のセントヘレナ島で世界最大のハサミムシが生息していたように、昆虫の巨大化が孀婦岩だけに起こった現象というわけではありません。もちろん、孀婦岩での発見自体は大変貴重なものであるのは間違いありません。

 

以下のサイトで、孀婦岩で設置されたベイトトラップ*2に一晩でかかった大量のハサミムシの動画を視聴できます。

 

ベイトトラップにかかった大量のイソハサミムシ動画

www.nhk.or.jp

 

 二点目はウミコオロギとイソハサミムシの巨大化プロセスについてです。番組内で解説されていたように、孀婦岩のような絶海の孤島では捕食者がいないため、昆虫が巨大化しても捕食されにくいという背景があることは間違いないでしょう。ただし、巨大化したプロセスの中で、「ライバル(ウミコオロギvs.イソハサミムシ)と獲物を奪い合っているうちに互いに巨大化の方向に進化したというんです」という説明についてはあまりピンときませんでした。そもそも、孀婦岩において奪い合うほど食べ物が限られているのでしょうか? もし餌資源が限られていたとして、一晩で大型個体が200頭も捕獲できるほど密度が高いのはなぜでしょうか?

 

 孀婦岩には草はほとんど生えておらず、一次生産からはじまる食物網(生食連鎖)は乏しいのは確かでしょう。しかし、孀婦岩を営巣場所や休息場所として利用する海鳥が海から運んでくる資源はかなりの量と推測されます。ウミコオロギもハサミムシ*3も基本的には雑食性で、動物の遺体を餌資源にしています。つまり、これらの餌となる海鳥の吐き戻し、雛のために持ち込んだ魚の残骸や雛の糞、遺体が孀婦岩には豊富にみられるのではないでしょうか。実際、番組でも孀婦岩には多数の海鳥が生息しており、また雛の死体が観られました。

 

このような、海鳥を介した系外(ここでは海)からの持ち込みは資源流入(allochthonous inputもしくはresource subsidies)と呼ばれています。小さな島では地上部で生産された資源よりも海から供給される資源の方が上回ることがよくあります(参考:島が小さくなるとクモの密度が増加する)。つまり、海から運ばれた資源(動物遺体や糞、吐き戻し)からはじまる腐食連鎖が孀婦岩の昆虫群集を形成している可能性があります。

 

 絶海の孤島に限らず、鳥の集団営巣地(コロニー)でハサミムシが高密度に見られることは本州でもあります。例えば、田んぼや川、湖沼に普通に見られるサギ類は、森林の樹冠部に集団営巣します。集団営巣地の林床には水界由来の資源(サギのエサの吐き戻し、糞、ヒナの遺体)が豊富で、それらを餌とするハサミムシや昆虫類が多数見られます。茨城県において、サギ類の集団営巣地が見られる林床と、見られない林床でベイトトラップを設置し、捕獲されたハサミムシの個体数を比較したのが以下の図です。集団営巣地ではトラップあたり多い場合で300個体近くのハサミムシが捕らえられている一方、営巣が見られない林床(対照区)ではほとんど捕らえられていません。

 

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図. サギ類の集団営巣地と対照区(非営巣地)でベイトトラップによって捕獲されたハサミムシの個体数比較(Sugiura & Ikeda 2003より描く)

  

つまり、豊富な動物遺体がある環境では、ハサミムシが非常に多く生息しているということです。孀婦岩において、一晩のベイトトラップに200頭近い大型イソハサミムシが捕獲されており、この高い密度を支えるほどの豊富な餌資源が孀婦岩にあると推測されます。*4

 

 昆虫は一般的により大型のメスほど産卵数は多いことが知られています*5。つまり、天敵が不在で捕食されるリスクが少ない条件下では、餌資源が多ければ多いほど、大きく成長して多くの子孫が残せます。

 

したがって、ウミコオロギやイソハサミムシの巨大化をもたらした大きな要因は、強力な捕食者がいないことに加えて、海鳥によってもたらされた豊富な餌資源にあるのではないかと考えております。もちろん番組内で紹介されていた仮説が間違いというわけではありません。いろいろな解釈、仮説があって良いと思います。今後のさらなる研究を楽しみにしています。

 

*1:つまり、普通とは違う現象が孀婦岩で発見されたと番組では解説しているわけです。

*2:ベイトトラップというのは、餌をいれた捕獲罠です

*3:ハサミムシは「はさみ」で他の昆虫を捕え、食べることもあります。

*4:もちろん、代替仮説として、餌資源が極めて乏しいので1つのベイトトラップに島中のハサミムシが多数集結したという可能性も考えられます。

*5:オスは体サイズが大きいほど子孫を増やせるかどうかは種によります。ただし、ある種のハサミムシではメスにとって大型オスと交尾するほうが利点があることが知られているようです(Kamimura 2013)。

何時間とりくむべきか

  日に何時間くらい研究や勉強に取り組むべきか。トータルで何時間取り組めば、ある分野の専門家になることができるのでしょうか。

 

 スポーツや音楽で一流プロになるには、練習にかけたトータルの時間(例えば10,000時間)が重要になってくることが知られています。ただし、時間をかければ良いわけではなく、意味ある練習時間が重要であることが近年の研究によってわかっています。

 

超一流になるのは才能か努力か? (文春e-book)

超一流になるのは才能か努力か? (文春e-book)

 

超一流になるのは才能か努力か? (文春e-book)

 

 意味ある練習とは、上記の本では「限界的練習」と定義しています。似たようなテーマを扱っている以下の本も読みましたが、根拠となる多くのエビデンス(論文、研究)は共通していました。

 

究極の鍛錬

究極の鍛錬

 

 究極の鍛錬

 

やり抜く力

やり抜く力

 

 やり抜く力

 

 研究や勉強も同様に、闇雲に長時間かければ良いというわけではないでしょう。時間をかけるにしても、アイデアなり効率を重視する必要がありそうです。

 

 最近はKindleのような電子書籍の利用が増えてきました。本の置き場に困らないのが良いですね。

 

動画のインパクト

 動物の行動を研究していると、研究内容を人に伝えるのに長々と説明するよりも、その動物の動画を見せることが手っ取り早いものです。外国人研究者に説明する時には特にそうです。撮影した動画を編集していつでも再生できるようにスマートフォンに保存しておけば有用です。

 

 最近は論文にも動画が付いていることが多く、メディアでも動画で研究を紹介することが一般的になりました。ナショナルジオグラフィック(National Gegraphic)とか、サイエンス(Science Magazine)でも動画をつかった研究紹介記事が増えました。

 

 サイエンスで配信された動画で、2018年で私がもっとも印象深かった映像です。

 


First footage of deep-sea anglerfish pair

 

 アンコウの一種の交尾シーンです。メスに比べて小さなオスも印象的ですが、何よりインパクトがあるのは、メスの体から出ているたくさんの光り輝く長い突起です。美しいです。

 


Watch this eel inflate its head like a balloon

  

 次の動画はフクロウナギの生きた姿です。風船のように膨らんだ口がどのように閉じられるのか。これもすばらしい映像です。

 

 いずれの映像にも「Rebikoff Foundation」というクレジットが付けられています。この財団は、大西洋にあるアゾレス諸島を拠点とした海洋研究のための非営利組織です。研究者と協力しつつ有人潜水艇LULA1000で深海動物の調査を行っているようです。

 


Rebikoff Foundation Intro

 

 ウェブサイトからはどういう資金で運営されている組織なのかよくわかりませんでしたが、世の中には夢のある仕事があるものです。

 

ヘッピリムシの護身術

 「ヘッピリムシ」ことミイデラゴミムシという昆虫がいます。江戸時代には「行夜(こうや)」という名称で、別名「へひりむし」「へこきむし」と呼ばれ、その後「三井寺はんめう」「ミイデラゴミムシ」と呼び名が変遷してきたことが知られています。

 

「へっぴりむし」や「へこきむし」の名前からわかるように、お尻の先端から「ぷっ」と聞こえるほどの音でガスを噴射します。この行動は古くから知られており、江戸時代の絵巻物「放屁合戦」があった滋賀県三井寺にちなんで「ミイデラ」という名前がついたと推測されています。

 

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さて、そんなミイデラゴミムシですが、オナラをする昆虫として、古くから昆虫図鑑や子供向けの本に必ず登場します。ミイデラゴミムシが所属するオサムシ科ホソクビゴミムシ族(Brachinini)には世界に数百種が分布し、多くの種がオナラをします。ホソクビゴミムシ類は、腹部内に貯蔵されたヒドロキノン過酸化水素をある種の酵素で反応させ、高温の水蒸気とベンゾキノンとして腹部先端から発射します。その熱はしばしば100℃に達するため、「爆撃虫」として英語では「ボンバディア・ビートル(bomberdier beetle)」と呼ばれています。

 

 ホソクビゴミムシ類がオナラをする意義として、天敵から身を護るためであることは国内外でよく知られています。例えば、1898年の「昆蟲世界」という昆虫学雑誌に、ミイデラゴミムシがハサミムシをオナラで倒したという観察例が報告されています。おそらく、いろいろな人がミイデラゴミムシのオナラを目撃してきたことと思います。しかし、文献を調べてみても、ミイデラゴミムシについては上記のような観察例はほとんどありませんでした。

 

そこで、ミイデラゴミムシを実際に天敵に襲わせる実験が行われました。ミイデラゴミムシは飛翔能力がなく、地面を這って生活します。地面で最も出会いやすく、実験室でも飼いやすい天敵としてカエル類が使用されました。ヒキガエル類(ニホンヒキガエルとナガレヒキガエル)とトノサマガエルです。 以下の動画を御覧ください。

 


ミイデラゴミムシはヒキガエル体内から脱出可能/Successful escape of bombardier beetles from inside toads

 

 ヒキガエル類は素早く舌でミイデラゴミムシを捕らえ口に入れてしまいました。捕食された直後に体の中から微かに「ぷっ」とオナラの音がするもむなしく飲み込まれました。ところが、一部の個体は数十分後、長くて1時間半後に、ミイデラゴミムシを吐き出しました。驚いたことに、吐き出されたミイデラゴミムシはヒキガエルの粘液でべとべとでしたが、元気に生きていたのです。

 

その後、さまざまなサイズのヒキガエルに襲わせたところ、いずれのヒキガエルもミイデラゴミムシを飲み込みましたが、小型のヒキガエル(幼体)ほど吐き出すことが多いことがわかりました。ヒキガエルの成体は吐き出さずミイデラゴミムシを無事消化していました。ミイデラゴミムシの方も、小型よりも大型ゴミムシの方が生きて吐き出される傾向にありました。

 

 ミイデラゴミムシはピンセットで刺激を与えオナラを出させた後も、さらに刺激を続けると何度かオナラをして、最終的にはガス切れになってしまいます。体内の防御物質がなくなったものと思われます。ガス切れ前と後とで体重を測定したところ、防御物質は多い個体で体重の10%も占めていました。

 

ガス切れのミイデラゴミムシをヒキガエルに食べさせると、小型個体、大型個体にかかわらず、ほとんどヒキガエルは吐き出すことはありませんでした。つまり、ミイデラゴミムシはヒキガエルの体内でオナラをすることで嘔吐をひきおこしていることがわかりました。

 

 カエル類は一般に、食道や胃を反転させて口外に出すことができます。これによって、有毒昆虫を吐き出すことができるわけです。ミイデラゴミムシは高温でかつ有毒なオナラをすることで、ヒキガエルに嘔吐を引き起こしました。ただし、食道や胃を反転するにはコストや時間がかかるため、嘔吐までの時間が長くかかった可能性があります。一方でヒキガエルの大型個体(成体)は毒耐性が強く、ミイデラゴミムシを吐き出さずに消化できたのでしょう。

 

 このように、ヒキガエル類の成体にとってはミイデラゴミムシは餌として利用できるものの、幼体や若い個体の一部はミイデラゴミムシのオナラに耐えきれず吐き出すことがわかりました。しかも、ヒキガエルの消化管内で長時間生存できる耐性を備えていました。

 

 次に、ヒキガエルより小型のトノサマガエルではどうだったのでしょうか? 以下の動画を御覧ください。

 


ミイデラゴミムシのトノサマガエルに対する防衛/Anti-frog defences of a bombardier beetle

 

 ヒキガエルの全個体がミイデラゴミムシを一旦は飲み込んだのに対し、トノサマガエルはほとんどの個体が飲み込む前に攻撃をやめるか、たとえ口の中に入れたとしてもすぐに吐き出すことが観察されました。

 

口の中に入れたミイデラゴミムシがオナラをすることで、トノサマガエルが「オエッ」と吐き出すのは予想通りでした。しかし、多くの個体が口の中に入れるよりも前、つまり舌でミイデラゴミムシの体に触れたとたんに攻撃をやめたのです。どうも、オナラをする前に攻撃をやめているようです。この原因についてはまだ確実な証拠は得られていませんが、 ミイデラゴミムシの体表に付いた防御物質を舌で感知して反射的に攻撃をやめているのではないかと考えられています。

 

 夜に田んぼの畦を訪れるとミイデラゴミムシがたくさん見られます。ちょっと触っただけでも「ぷっ」とオナラをされる経験から、「もしカエルが口の中に入れたらどうなるのだろう?」という小学生並みの発想から生まれた研究でしょう。ミイデラゴミムシにとっても、カエルにとっても大変迷惑な実験だったでしょうが...。

 

 文献

 

華渓生(1898)ヘコキムシ、ハサミムシを斃す. 昆蟲世界 2: 24–25.

 

八尋克郎(2004)ミイデラゴミムシの語源. 地表性甲虫談話会会報 1: 2–6.

 

兼久勝夫(1996)オサムシ科とクビボソゴミムシ科の防御物質の分泌. 岡山大学資源生物科学研究所報告 4: 9–23.

 

Sugiura S, Sato T (2018) Successful escape of bombardier beetles from predator digestive systems. Biology Letters 14: 20170647.

 

Sugiura S (2018) Anti-predator defences of a bombardier beetle: is bombing essential for successful escape from frogs? PeerJ 6: e5942.
 

 

記事

ナショナルジオグラフィック・ニュース「カエルの胃腸を「屁」で攻撃、嘔吐させる虫を発見」(2018年2月9日)

 

 

 

はてなブログへの移行

 久しぶりの更新となりましたが、以前使っていた「はてなダイアリー」が終了するということで、「はてなブログ」に移行しました。もうやめても良かったのですが、以前の記事も編集可能にしておくために年に1回でもほそぼそと続けていくことにしました。

イモムシ・ケムシの護身術

 イモムシやケムシといえば、柔らかい体にたくさん脚があってうねうねと動くので、気持ち悪がられる代表的な虫たちです。実際、虫好きを自認する私も子供の頃から生理的に受け付けませんでした。イモムシが多い4,5月は森や林に行くのもためらわれるほど。しかし、イモムシ、ケムシの形態や生態は学術的には大変おもしろいのです(参考:イモムシ・ケムシは手足をどう使うか)。


 イモムシ、ケムシは、一般には鱗翅目幼虫のことを指しています。彼ら彼女らの被食防衛(護身術)について、クロカタビロオサムシを捕食者モデルとした一連の研究(3部作)を紹介したいと思います。


1. ケムシの「毛」の意義


 ケムシ(毛虫)といえば、チャドクガの危険性がよく知られていますが、触っても特に人間に害のないものがほとんどです。そのような無害な毛も、捕食性昆虫に襲われた時にはバリアのように有効に働きます。クロカタビロオサムシは、長い毛が密に生えるクワゴマダラヒトリ幼虫を襲ってもしばしば捕食に失敗します。しかし、毛を短く刈ることで捕食成功率が上昇しました。つまり、長い毛がオサムシの大顎から身を護っているのです。動画にあるように、毛を剃る時に鼻毛カッターを用いている点が笑いのポイントです。



ケムシの防衛/Caterpillar hair as a physical defence


Sugiura, S. & Yamazaki, K. (2014) Caterpillar hair as a physical barrier against invertebrate predators. Behavioral Ecology, 25:975–983.


2. ミノムシの「蓑」の役割


 ミノムシ(蓑虫)が身にまとっている「蓑」をはがすと、中から黒いイモムシが出てきます。この「みの」が、天敵から柔らかい身を護っているのです。チャミノガは枝や葉柄を使って強固な蓑をまとっています。その蓑をはがしてやると、簡単にクロカタビロオサムシに捕まって食べられてしまいます。加えて、いつもとは違う柔らかい葉(ヨモギ葉)でできた蓑に着せ替えてやっても蓑の防衛効果はあります。子供のころ、蓑を剥がして中の幼虫を取り出して、毛糸や紙くずで新たな蓑を作らせる遊びをしたものです。



ミノムシの防衛/Bagworm bags as armor


Sugiura, S. (2016) Bagworm bags as portable armour against invertebrate predators. PeerJ, 4: e1686.


3. 巨大イモムシの反撃


 スズメガの幼虫といえば巨大イモムシで、さわると頭を「ブンッ」と振って威嚇するので、苦手な人も多いでしょう。特に、日本最大のスズメガであるオオシモフリスズメの幼虫は、おそらく日本でも最大サイズのイモムシでしょう(日本最大のヨナグニサンの幼虫と同等かそれよりも大きいかもしれません)。本種幼虫は最大サイズに成長すると、「シュー」と大きな音をたてて頭突きをしてきます。この反撃行動はどれくらい威力があるのでしょうか? クロカタビロオサムシに襲わせて反応を観察。クロカタビロオサムシは自分よりも大きなイモムシにも果敢に攻撃をしかけます(噛みつきます)。しかし、オオシモフリスズメの場合は何度も頭突きをするだけでなく、大顎でオサムシの脚をとらえて投げ飛ばす行動まで見られました。しかもある個体は捕まえたオサムシの脚を切断するほど。


ちなみに、オオシモフリスズメの「シュー」という音は、オサムシに聴こえているかどうかはわかりませんが、腹部第8節に1対ある気門から空気を吹き出して発音しています。水の中で「鳴かせて」空気がどこから出ているのかを突き止めたのが笑いのポイントです。



オオシモフリスズメ幼虫の反撃行動/ Hornworm counterattacks



オオシモフリスズメ幼虫の発音機構/Sound production by hornworm larvae


Sugiura, S. & Takanashi, T. (2018) Hornworm counterattacks: Defensive strikes and sound production in response to invertebrate attackers. Biological Journal of the Linnean Society, 123: 496–505.


4. イモムシハンター・クロカタビロオサムシ


 これらのケムシ・イモムシはクロカタビロオサムシの捕食圧のもと防衛・反撃行動を進化させてきたのでしょうか? 実際はクロカタビロオサムシだけが天敵ではなく、さまざまな昆虫や鳥などがイモムシ・ケムシを捕食します。クロカタビロオサムシは多数いる捕食者の1種にすぎません。ただし、鳥や他の昆虫と比べて、実験室でもどこでも簡単にイモムシやケムシを襲ってくれるという便利な昆虫なのです。



イモムシを捕食するクロカタビロオサムシ


 クロカタビロオサムシは、一般的によく知られるオサムシ類とは違い、翅をもちよく飛翔能力があります。加えて、地表徘徊性種とは違い、地表だけでなく樹上でもイモムシやケムシを好んで食べます。そのため、ブナアオシャチホコの大発生時にクロカタビロオサムシもたくさん見られることが知られてきました。


クロカタビロオサムシ近畿地方ではもともと珍しい種で、初夏にイモムシがたくさん発生するような雑木林に局所的に見られる種でした。甲虫好きの私にとっては小さな頃からの憧れの虫でした。ところが、2013年から2015年頃にかけて近畿地方の各地で非常に多く見られるようになりました。ちょうど、マイマイガをはじめ各種鱗翅目幼虫も多数見られた年と一致しています。


イモムシやケムシ、そしてその捕食者であるクロカタビロオサムシがたくさん確保できないとできない実験だと思います。

ハワイガラスの道具使用

 最も有名な科学雑誌の一つ『Nature』誌で、個人的には最近おもしろいという記事はあまりなかったのですが、久しぶりに興奮した論文に出会えました。


以前に「島での道具使用と食性進化」という記事で、ガラパゴス諸島固有のキツツキフィンチとニューカレドニア固有のニューカレドニアガラスが枝などを使って朽木の中の昆虫などをほじくり出して捕食するという興味深い行動について触れました。このような道具を巧みに使用する種はほとんど知られていませんでした。そしてこのような行動は、孤島という特殊な環境で進化してきた性質である可能性が指摘されてきました。


今回読んだ論文では、ハワイ諸島固有のハワイガラスで、上記の種と同様に、道具を積極的に使うということが報告されていました。ハワイガラスはニューカレドニアガラスとはそれほど近い種ではないようで、道具を巧みに使用するという行動はそれぞれが独自に獲得したものと考えられているようです。



Rare crow shows a talent for tool use


ハワイガラスはすでに野生絶滅状態にあるため、野外条件下でどのような生活をしていたのかは想像するしかありません。ただ、ガラパゴスフィンチやニューカレドニアガラス、ハワイガラスのように、他の孤島でも同様の進化をとげた固有種がいるかもしれません。


文献
Rutz, C. et al. (2016) Discovery of species-wide tool use in the Hawaiian crow. Nature 537:403-407.

なぜ今の研究に興味をもっているのか、というのを考えさせてくれた講演

 普段、学会発表や招待講演以外では滅多に講演を聴きに行くことはありません。もともと出不精な性格ということもあるのですが、論文を読んだりすれば新しい研究の知見は得られますし、学会発表のついでに聴ける講演でも多くの情報が入ってきます。大学にいれば、悪くいえば「石」ばかりな卒論・修論発表会をたくさん聴かされるため、食傷気味ということもあるかもしれません。


ともかくも約2年ぶりに休日に講演会に出かけました。では、どういう講演会なのか。それは、わかりやすく言えば憧れの研究者の講演です。2年前に出かけたのも、別の研究者ですが、日頃から研究の動向を楽しみにし憧れを抱いている方の講演でした。いずれの講演も比較的一般向けのもので、実はその内容はほとんど知っているものばかりでした。今日聴いた講演にしても、1時間くらいに登場した研究内容については(わずかな未発表のもの以外)すべて知っていました。自分でも驚きましたが、関連するすべての論文に目を通しており、「これはこの説明では初めて聴く人にはわからないだろうなぁ」ということまで想像できるほどに。おそらく講演者以外で、聴衆の中で最も深く理解できているのではなかったか、という変な自信まで湧いてきました。これは大好きなミュージシャンのライブで、すべてのCDや音源を持っていて、かつ(歌詞を暗記して)一緒に歌っている状態に近いのかもしれません。


すべての講演内容を知っていたからといって、聴きに行った意味がなかった、と言いたいわけではありません。むしろ、現在取り組んでいる研究や学問になぜ興味をもったのか、ということを思い出させてくれた幸せな時間だったと言えます。学部時代に読んでいた本、先達の導き、大学院に入ってから感銘をうけた論文、講演者や他研究者との出会い・交流・影響、登場した植物や昆虫についてなど、いろいろな想い出が次から次へと湧いてきました。


講演後は、一緒に聴きに行った昔からの知人と喫茶店で紅茶を飲みながら小一時間語り合いました(これもファンのオフ会みたいです)。一人になった帰りの電車では、今の学問への関心がいかに変遷してきたのかを改めて思い出し、いろいろな人や文献から刺激・影響を受けてきたことを再認識しました。


 初学者の頃の学問への興味の芽生えのようなものを思い出すことは、マンネリ化しがちな研究生活の中では良い刺激になります。学部生の頃に熱心に読んだ今日の講演者が書いた章を本棚から取り出し、当時のことを思い出しながら、その思いを記録に留めておこうと久しぶりに書いている次第です。

アルフレッド・ラッセル・ウォレス賞とは

 進化学や生物地理学で有名なウォレス(Alfred Russel Wallace)の名を冠した賞はいくつかありますが、国際生物地理学会(International Biogeography Society)が2004年から「Alfred Russel Wallace Award」を授与しています。

 
 国際生物地理学会が発行する『Journal of Biogeography』誌の電子版をみていると、2015年の受賞者であるシンバロフ(Daniel Simberloff)の紹介記事がありました。

Sanders NJ (2015) Island biology and the consequences of interspecific interactions. Journal of Biogeography


 記事では、生物地理学におけるシンバロフ博士のこれまでの業績をおおまかに紹介しています。シンバロフの業績として有名なのは、島嶼生物地理学の理論を検証するためにウィルソン(Edward Osborne Wilson)と一緒に行った珊瑚礁の島での野外実験でしょう。


島の生物地理学の理論:ウィルソンによる回想


さらに彼が指導し『Journal of Biogeography』誌に最近掲載された学生の論文についての概要も述べられています。この論文では、世界の多くの島に生物防除目的で導入され外来種として問題となっているマングースを材料に、他の捕食者との競争がある島とない島で形質を比較し、形質置換が起こっている可能性を指摘しています。この論文は、「島」、「外来種」、「生物防除」、「島の法則」、「ベルクマン則」、「種間競争」などがテーマとなっており、シンバロフのこれまで行ってきた研究や興味がよく反映されているそうです。


Barun et al. (2015) Possible character displacement of an introduced mongoose and native marten on Adriatic Islands, Croatia. Journal of Biogeography, doi:10.1111/jbi.12587 (WILEY link)


 ウォレス賞はシンバロフですでに6人目の受賞者とのこと。シンバロフの宿敵(?)ダイアモンド(Jared M. Diamond)や、マクロ生態学の名付け親のブラウン(James H. Brown)もすでに受賞されているようです。しばらくは生物地理学のリジェンドたちの受賞が続きそうです。


その他、参考ページ

島の生物地理学の理論、再び

島嶼生物地理学の理論を保全へ応用:SLOSS 論争とは

チェッカー盤分布をめぐる論争

半島効果(Peninsula Effect):半島部に種の多様性勾配はあるのか?