2009-01-01から1年間の記事一覧

情報の源

今年ももう終わりです。ハワイはやっぱり温暖で、むしろ最近は寝苦しいくらい気温が高い。昨晩は28℃もありました。天候もおおむね穏やかで、多少雲はあっても毎日お天道様を拝めます。ハワイで心を病む人はほとんどいないかもしれません。むしろそういった療…

「日本語が亡びるとき」を読んで

一年ほど前に話題になった「日本語が亡びるとき」を今更ながら読んでみました。 思い切って要約すると 英語はかつてのラテン語のような普遍語になった。 英語を母語としている人の多くは英語が普遍語であるということをほとんど意識していない。 日本語は普…

生物界にひそむ諸法則

科学のおこないの一つとして、「自然界に繰り返しあらわれるパターンを抽出して定式化し、そのメカニズムを明らかにしてあらゆる事象を予測可能なものにする」というのがあります。しかし生物学には数多くの例外があって、あらゆる事象を統一的に説明できる…

クリスマス休暇

12月も後半になり本格的な冬の季節です。ホノルルは、半袖ではさすがに肌寒いとはいえ25℃は常にこえているのでやっぱりハワイです。ただ、こちらの生活も2年目に入っているということで、何かのアレルギーに(ちょっと)苦しんでいます。花粉か、ハウスダス…

緑ひげ効果とは

昆虫などが他の動物から捕食されるのを免れるために、その体色や形を背景である草木の色に似せるのを隠蔽的擬態と呼ばれており、その体色を隠蔽色と呼んでいます。一方、自らが危険であるとか毒をもっていることをアピールするために派手な体色をもつ昆虫な…

論文が受理される喜びとは

もう長い間やりとりしている論文があります。リジェクト(却下)されたり改訂して再投稿したりというのを毎月のように繰り返しています。 そして今日ついに論文が受理されたというお知らせが届きました。電子メールによると、最終原稿として(一人の)査読者…

「利己的な遺伝子」を読んで

研究室に入ったばかりの学生たちがリチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)の著書を知らないことに先生は嘆いておられました。もちろんその著書とは「The Selfish Gene」(1976年)のことです。 私は大学院に入ってからすでに十年以上たっているのでおお…

ハワイの珍奇なる虫たち(8)樹上に進出したヨコエビ

先日夜間に調査する機会がありました。場所は、オアフ島の標高700mくらいの尾根部で、おもにオヒア(ハワイフトモモ)の低木林で構成される原生植生です。 懐中電灯でオヒアなどの樹冠部を照らして観察していると、ピョンピョンと跳ねる1cmも満たない「むし…

理想の論文?

ナショナルジオグラフィック ニュース 「メジロダコの不思議な生態:道具を使う」 無脊椎動物では珍しい道具を使うという行動を報告した論文です。タコがココナツの殻に隠れるのですが、移動する時にも持ち歩くというユニークな行動がビデオに撮影されていま…

ハワイ大学発行の科学雑誌

ハワイ大学には、大学の教員が主な編集者となって発行している「Pacific Science」という雑誌があります。日本語に訳すと「太平洋地域の自然科学」とでもいいましょうか、動物学、植物学、分類学、生態学、地質学、海洋学、古生物学、考古学といった多様な分…

「種の起源」を読んで

ダーウィン(Charles Darwin)による「種の起源」の出版から150年を記念して新訳が出版されました。改めて通読し、さらに「読み方ガイド」で当時の背景をふまえながらダーウィンの考えたことをたどってみました*。 「種の起源(上)」 「種の起源(下)」 …

Ph.D. Defense の条件

昨日で今年の授業関係は終わりということで、最後のセミナーはまたもや Ph.D. Defense(博士論文公聴会)がありました。今回は、副査の人の質問に対する返答なども公開されていました。内容は、ザトウクジラの音響についての研究。 この1年、何度もDefenseを…

SLOSS 論争からアマゾンでの森林断片化大規模実験(BDFFP)へ

マッカーサーとウィルソンによる島嶼生物地理学の平衡理論が提唱され(1963年、1967年)、この理論が国立公園など保護区の設定への応用が試みられました(1970年代前期ー中期)。さらに、保護区は、単一の大面積がいいのか、複数の小面積がいいのか(Single …

グラント獲得とか

R さんが NSF(米国科学財団)に申請していた研究費が採用されたそうで、今日はそのお祝い?の飲み会がキャンパス内でありました。およそ3年で500,000ドルということなので、日本の科研費でいえば基盤Aの最高額に相当するのかな。しかし「分類・系統」という…

サンドウィッチ諸島

ウォーレス(Alfred R. Wallace)の「Island Life」(1881年)の復刻版を買ってみました。何かの本で、「島の生活」と訳されていましたが、「島の生命」の方が適している気がします。 目次 Part 1: 生物の分散 Chapter 1: 導入 Chapter 2: 分布の基本 Chapte…

忘年会

ちょっとはやいけど、研究室のクリスマスパーティーが土曜日にありました。日本でいえば、職場の忘年会にあたるような感じ。でも、研究室の先生が家に招待して、肉を焼いてお酒をふるまって、そしてゲームして遊ぶ、というのはさすがに日本ではほとんどない…

博覧強記

11月からずいぶん涼しくなった気がします。といっても、夜の気温で2度ほどさがったくらいですが(26℃)、日本でいう秋の夜長な良い気候です。去年の経験からいうと、気温はやや下がるもののこのまま初夏まで快適なまま移行するでしょう。つまり、読書をする…

書店めぐり

Thanksgiving Day は研究室の大学院生が実家のパーティーに招いてくれました。実家といっても、大学から自転車で10分くらいの近所にあります。ハワイ大学の院生には、地元の大学を出てそのまま大学院に残るという人がけっこういます。米国本土では、学部、修…

「種の起源」出版から150年

ダーウィンによる「種の起源」がちょうど150年前(1859年11月24日)に出版されたということで*、昨日から「種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)」を読み始めました。 これまで、岩波文庫の八杉龍一訳の「種の起原」があったのですが、これはもうずいぶん前…

温帯からやってきた外来種

今日は研究室のMさんの博士論文公聴会(Ph.D. Defense)でした(参考:Ph.D. Defense)。ハワイの在来陸産貝類の保全や生態、外来種による影響についての研究です。 ハワイは常夏の島で知られるように、熱帯か亜熱帯に所属する温暖な島々です。一方で、ハワ…

島嶼生物地理学の理論を保全へ応用:SLOSS 論争とは

国立公園など保護区を設定するときに、どのような基準を用いて決めれば良いのでしょうか。できるだけ単一の大きな面積を残すのが良いのか、細切れでも良いから大きな面積を残すのが良いのか。これについて過去に大きな論争がありました。 マッカーサーとウィ…

ダーウィンのマネシツグミ

英国軍艦ビーグル号でガラパゴス諸島を訪れたダーウィン(Chales Darwin)は、生物進化を確認するに至る重要な観察を行ったと言われています。ダーウィンフィンチ(ガラパゴスフィンチ)がその重要な観察対象としばしば思われがちですが、実はダーウィンは現…

日本の若手研究者支援の今後

文部科学省:若手研究支援についての事業仕分け(2009年11月13日) 全文テキスト 結果メモ 対象(平成22年度予算) (1)テニュアトラック制度(任期付き大学院教員)+企業へのインターンシップ補助:125億円? (2)科研費若手枠(年齢40歳未満対象):282…

日本から本を取り寄せる

帰国することを考えると(郵送料が高いので)あまり本を買いすぎないように注意してきました。しかし、ハワイは本を読むには良い気候であるし、じっくりと読んで考えをめぐらすにはこれ以上ない機会かもしれません。 ということで、日本の本も読むべきかなと…

島の生物地理学の理論:ウィルソンによる回想

昨日紹介した書籍「The Theory of Island Biogeography Revisited(島の生物地理学理論の再検討)」について。編者による序文を読むと、2007年に「The Theory of Island Biogeography(島の生物地理学の理論)」出版40周年としてハーバード大学にてシンポジ…

スーパー閉店と祭日

頻繁に利用していたスーパーマーケットの一つ(Star Market)が閉店してしまいました。せっかく商品の並びを把握していたのと、別のスーパーが少し遠いのとで、ちょっと残念です。 さて、今日もはりきって大学にやってきたら、祭日でした。これまで、周囲の…

島の生物地理学の理論、再び

マッカーサー(Robert H. MacArthur)とウィルソン(Edward O. Wilson)による「The Theory of Island Biogeography(島の生物地理学の理論)」(1967年)の出版から42年、以後の知見をまとめた本が出版されました。 The Theory of Island Biogeography Revi…

聴衆の法則

今日は3人分のセミナーがありました。一つめはC3植物とC4植物がハワイ島の標高に沿ってどのような分布をしているか、またこの数十年の気候変動で分布が変わったか、というお話。二つめは、インドで草食獣のグレイジングと野火が固有のヤシに与える影響を実…

塩をまけば虫が増える

いつも楽しみにしているナショナル・ジオグラフィック・ニュースから興味深い記事が・・・。 「アマゾンの塩分不足がCO2排出を抑制」 熱帯林ではシロアリが主な分解者として働いていることはよく知られています。葉や枯れ木(セルロースなど)は、シロアリや…

署名入りコメントに込められた意味

論文は常に出し続けておきたいという思いから、審査中に別の論文を投稿することを目標にしています。通常は投稿から数ヶ月は審査待ちの時間があるので、その間に投稿するということです。また、最近の論文投稿はすっかりインターネットに依存しているので、…