ダーウィンによる「種の起源」がちょうど150年前(1859年11月24日)に出版されたということで*、昨日から「種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)」を読み始めました。
これまで、岩波文庫の八杉龍一訳の「種の起原」があったのですが、これはもうずいぶん前に訳されたものなので、活字も小さく訳も独特でちょっと馴染みにくい感じでした。また、(私自身が)ダーウィンの英語を誤解なく読み解くほどの英語力もありません。しかし、今回出版150年にあわせて訳されたバージョンは、かなり読みやすいです。
これは、訳者による以下のような配慮があったからでしょう。
ダーウィンの文章は一文がきわめて長く、しかも文と文のあいだも接続詞なしで、単にコロンで区切られ、延々と続いていたりする。また、一段落もきわめて長い。本書では、古典新訳文庫の刊行趣旨に沿い、読みやすさを優先するために臨機応変に段落を改めた。
(訳者まえがきより転載)
翻訳者は、これまでにも多数の自然科学書の翻訳に携わっておられ、実際私自身はその多くを読んでいるので、より馴染みやすいのかもしれません。ちなみに、まだ下巻は出ていませんが、今年中には出る予定だそうです。
明日から Thanksgiving Day にはじまる4連休です。多少お呼ばれもありますが、本を読んだりのんびりと過ごしたいところです。
これまで読んでおもしろかった渡辺政隆訳の本。
野外で生き物を観察する魅力について語られた本です。プロの研究者は、論文にはごく限られた科学的に新しい結果だけを載せます。一方で、論文には掲載されないけれど多くの興味深い観察結果や体験があります。そんな体験などがつまった良書。
カンブリア紀の化石研究の紹介と、その進化について語られた書。ちょっと専門的な内容が多いけれど、化石や進化研究の現場がどのようなものかを知るにも参考になります。
変温動物である昆虫も自ら体温を調節している、という事実をさまざまな昆虫を例に紹介しています。昆虫の生態や行動に関心がある人には興味深い内容です。上述の「ヤナギラン」本と同じ著者です。
著者は、(先に紹介した)カンブリア紀の化石を詳しく観察すると、それらの無脊椎動物にはきらびやかな体色があったことを発見しました(化石では色を失っている)。このことから、これらの動物がこの時期にはじめて眼というものを進化させたというアイデアを思いつきます。そこで、現在世の中にたくさん見られる動物はこの眼の獲得によって多様化したという説を提唱しました。これが、今まで見えなかった「光」を見ることができるようになったという意味で「光スイッチ」仮説と著者は呼びました。原著論文にして6ページの内容(Parker 1998)を、本一冊かけて丁寧に解説したといって良いかもしれません。
アメリカの行動生態者がソノーラ砂漠にすむさまざまな生物(サボテン、トカゲ、昆虫など)の生態を解説した良書。
追記
*「種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)」の訳者あとがきによれば、発売後すぐに完売したという出版元からの手紙をダーウィンが受け取った日が11月24日らしい。これをダーウィンが11月24日に発売と同時に完売したと日記に記したことでこの説が定着してしまったようです。ということで、実際の出版は24日より前ということなんでしょう。