2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

古典的な生態学の論争:密度依存性をめぐって

とある種の個体数密度(単位面積あたりの個体数)が増加すると、死亡率も上昇することを「密度依存(density dependence)」といいます。例えば、致死性の高い感染病は、密度が高いところほど感染が広まりやすく死亡率が増加することが予想されるでしょう。…

無限に増えない理由

ゴキブリ嫌いの人には申し訳ありません。熱帯生活でのゴキブリあるあるネタからはじめます。 原稿をプリントアウトすると圧縮標本ができた(プリンターに潜んでいた) 食べかけのスナックの袋から出てきた(封があまかった) 夜中に部屋でガが飛んでいるかと…

ラボランチ

研究室の先生が1ヶ月半ほどヨーロッパに旅立ってしまわれます。ということで、今日は皆の持ち寄りで昼食会が開かれました。 ピッツァ、餃子、パイ、ちらし寿司、イエローライス、サラダ、ケーキなど国際色豊かなランチで楽しめました。 スクミリンゴガイ(ジ…

論文の出版コスト

とある論文の出版に伴なうコストの請求書が出版社から届きました。開くと、1,549米ドル。日本円にしておよそ14万円!今流行りのiPadにして2台分。 内訳は、ページ超過チャージ879米ドル、カラーページチャージ439米ドル。別刷りは配布していないばかりかオー…

シタバチに発信機を装着

私の大好きな生態学者であるハインリッチ(Bernd Heinrich)*1は、マルハナバチの採餌行動を調べるために、自ら走ってハチを追跡したという逸話があります。 多くの植物のポリネーター(送粉者)であるハナバチがどの程度の採餌範囲を持っているのかは、昆虫…

海洋島の比較生態学

Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Systematics という雑誌で、「Comparative ecological research on oceanic islands(海洋島の比較生態学研究)」というタイトルの特集号が組まれています。 Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Sy…

外来植物の植栽から逸出するまで

外国産の樹木を公園や植物園などに植栽することは古くから世界各国で行われていることです。しかし、一部の種がそういった人工的な環境から逸出し、野外に定着します(参考:種苗会社と外来植物)。特に、熱帯の海洋島では、その逸出が頻繁に起こり、一部の…

夏休み

今週から夏休みに入ったようで、キャンパス内の学生の出入がずいぶん少なくなりました。近くのレストランが閉まったりしてけっこう不便です。また、日中も夏休みらしく日差しが強くなりつつあるようにも感じます。 研究室は休みになるわけではないのですが、…

全生物は単一祖先種から進化してきたか

ダーウィンの「種の起源」の訳本を読んで、考察の深さに大変感銘をうけたのは昨年末のことでした(参考:「種の起源」を読んで)。 特に最後に全生物の祖先種に関する考察は特筆すべきものでした。再度引用しておきます。 動物はせいぜい4種類か5種類の祖…

種苗会社と外来植物

外来植物はどのように持ち込まれ、定着するのか。人の活動が強い影響を与えているのは間違いないですが、具体的な活動を分析するのは重要なことです。 最も考えられる道筋として、園芸植物として売られ、野外へ逸出し定着することで侵略的な外来植物になるこ…

ハワイはうつも自殺も少ないか?

珍しく社会情勢の話題でも。 日本の自殺者数やその割合の2009年データが公表されたようです。 警察庁 平成21年中における自殺の概要資料(PDF) これによると、2009年の1万人あたりの自殺者数は25.8人でした。しかも自殺の原因で最も多かったのが健康問題…

除菌ハンドジェル

野外調査ではいろいろな生物に触れることでしょう。個人的には植物に集まる昆虫に関心があるのですが、動物の糞や死体に集まる昆虫も大好きだし、他にもカタツムリなんかをみるとついつい触ってしまいます。ただ、そんな手のままお弁当を食べるのはちょっと…

論文リジェクトの種類

論文を投稿すると、掲載不可(リジェクト)か、改定要求(レビジョン)か、そのまま受理(アクセプト)という結果が返ってきます。ただ、その境界は曖昧で、一旦リジェクトするけど、査読者の指示にしたがって論文をうまく改訂できたらもう一度再投稿しても…

外来植物ほど化学防衛力が強いか?

外来植物が新たに侵入した土地で繁栄する理由として、在来の植食者が外来種をあまり食べないということがいわれてきました(天敵開放仮説:参考:外来植物は在来植物より食べられにくいか?)。さらにより具体的にいえば、在来の植食者が(進化史上)これま…

種のプール

群集生態学において「種のプール(species pool)」という概念はとても大切です。いろいろな場面で重要になってくるので整理しておきます。 島嶼生物地理学でも、島に移住してくる種というのは、島から近い他の陸地の群集、つまり「地域の種プール(regional…