論文リジェクトの種類

 論文を投稿すると、掲載不可(リジェクト)か、改定要求(レビジョン)か、そのまま受理(アクセプト)という結果が返ってきます。ただ、その境界は曖昧で、一旦リジェクトするけど、査読者の指示にしたがって論文をうまく改訂できたらもう一度再投稿しても良いという判断もあります。一方、改訂要求を出され、論文を改訂しても、さらなる査読の結果最終的にリジェクトされたりする場合もあります。


いずれにせよ、最終的にはリジェクトされるかアクセプトされるかのどちらかでしょう(厳密には、投稿を取下げるという選択もあります)。


リジェクトは研究者にとっての試練のようなものですが*1、どんな種類があるのか、自身の研究をもとにまとめておきたいと思います*2

  1. 編集者による査読前のリジェクト:論文の掲載について判断する編集者が、複数名による査読前に編集者自身の判断でリジェクトする場合。
  2. 編集者による査読前の一旦リジェクト:論文の掲載について判断する編集者が、査読に回す前に編集者自身の判断で一旦リジェクトして、改定後に再度投稿を促す場合。論文のフォーマットの不備があるような細かい場合や、論文の大きなストーリーに対して変更を指示する場合など。
  3. 査読後のリジェクト:編集者により1-5人の査読者に論文を送り、それらの査読コメントに従い、編集者が最終的にリジェクトと判断する場合。一般的によくいわれるリジェクト。
  4. 査読後の一旦リジェクト:編集者により1-5人の査読者に論文を送り、それらの査読者のコメントに従い、編集者が一旦リジェクトし、再度の投稿を指示する場合。データの追加、再実験や再解析といった重要な改訂要求が含まれ、それらが実施できるかどうかで最終的な判断を下される場合。また、改訂部分が多い場合、論文の投稿から受理までの期間を短くしたい時に行われることも近年多いようです。


 個人的には、1のリジェクトが時間のロスがもっとも少なく、立ち直りもはやいような気がします。2と4のような一旦リジェクトの場合は、再投稿せずに他の雑誌に出し直すこともできますが、その判断に苦悩することも多いです。3では、査読者のコメントは掲載を示唆しているのに、編集者の判断でリジェクトされている場合には悔しい思いもするし、立ち直りに時間がかかる場合も多いでしょう。最も疲れるのは、3をいろいろな雑誌で繰り返すことと、何度も4のリジェクトをされてそのたびに再投稿することです。


 この2年くらい、あらゆるタイプのリジェクトを経験してきてかなり疲れました*3。そういうこともあって、この半年くらいは論文執筆からは離れ、フィールドに行ったり、学会に行ったり、論文を読んだり、哲学したりして研究している気になっていました。とはいっても、論文投稿から永遠に逃げ続けることはできないので、今週久しぶりに論文を投稿しました。1つは新しくまとめたもの、もう1つは3と4のリジェクトを経験し1年くらい放置されていたもの。後者は再投稿を諦めて別の雑誌に出したのですが、それならもっとはやくに判断すれば良かったと反省・・・。


知り合いで、再投稿に向けて8ページにもおよぶ改訂の手紙を書いたのに、結局それを捨てて別の雑誌に投稿することを決めたという話を聞いて、ちょっと他人事ではない感情を抱きました。

*1:もちろん査読とそれに従った改訂は、論文の質を保つ上で大事なことであるのは間違いありません。

*2:これらのリジェクトの種類は、雑誌に強く依存しています。つまり読者の多い人気雑誌では、1や4のリジェクトが必然的に多くなるでしょう。

*3:身の程をわきまえつつ堅実に投稿しろということですが。