外来植物ほど化学防衛力が強いか?

 外来植物が新たに侵入した土地で繁栄する理由として、在来の植食者が外来種をあまり食べないということがいわれてきました(天敵開放仮説:参考:外来植物は在来植物より食べられにくいか?)。さらにより具体的にいえば、在来の植食者が(進化史上)これまで出会ったことがない化学防衛物質を外来植物が持っている可能性が論じられています(novel weapon hypothesis:新奇防衛仮説)。


 これまでの調査では、在来植物と外来植物の野外での被食率を測定したり、また、在来のジェネラリスト植食者に在来種および外来種の植物の葉を与えてその選好性を測定したりする手法がとられてきました(参考:植食者は外来植物を好んで食べるか?)。しかし、実際、化学防御物質を抽出してその効果を直接比較した研究はなかったようです。


 まず、系統関係を考慮しつつ同所的に生育する在来植物21種と(侵略的な性質をもつ)外来植物19種を選んだ。そして、それぞれの種の葉から二次代謝物質(防御物質)抽出し人工飼料と混ぜ人工餌を作った。ジェネラリストとして知られているヒトリガ科の一種(Pyrrharctia isabella)の幼虫に、各種の二次代謝物質を含む人工餌と、コントロールとして二次代謝物質を含まない人工餌を与え、どちらを食べるか選択させた。


 結果、二次代謝物を含む人工餌が含まない人工餌に比べて、外来植物種の方が在来植物種よりも特に好まれない(避けられない)傾向はなかった。また、防御物質の忌避程度は、外来種の侵入時期と関係はなかった(つまり侵入後時間がたつほど植食者の外来植物の防衛に対処できるようになっているというわけではなかった)。最も好まれる(嫌われない)植物種は、(在来種であれ外来種であれ)野外で個体数が多い傾向があった。


 つまり、特定の外来種が強い化学防衛物質をもっていることがあるにせよ、それが外来植物が侵略的になりやすい一般則というわけではないだろう。


文献
Lind EM, Parker JD (2010) Novel weapons testing: Are invasive plants more chemically defended than native plants? PLoS ONE 5(5): e10429.


参考サイト(Journal Watch Online)
http://journalwatch.conservationmagazine.org/2010/05/05/unarmed/


 成長速度と(二次代謝物質による)防衛強度にはトレードオフ(成長がはやければ防衛は弱く、防衛が強ければ成長は遅い)があるののは、在来植物でも外来植物でも同じということのようです。


「成長のはやい種が他種を排他しつつ侵略的に個体数を増やす」という古典的な見方を支持する結果といえるでしょう。