外来種

南極にも外来種

ナショナルジオグラフィックニュースより「南極で増える外来植物、原因は防寒具」 研究者や旅行者に付着して南極にも外来種が侵入しているというPNAS発表の論文です。 研究を指揮した南アフリカのチョウン教授は、南氷洋のさまざまな島の生物相を調べ、島面…

南極氷底湖の生物相解明にむけて

ナショナルジオグラフィック ニュースより「南極最大の氷底湖、到達を確認」 ついに南極大陸最大と推定される氷底湖ボストーク湖に到達したというビッグニュースです。昨年末に読んだばかりの「地球環境を映す鏡 南極の科学」の中では、氷底湖の発見は南極大…

ミツバチは重要な送粉者か?

生態学・進化学の最新のトピックを扱うTrends in Ecology and Evolution、略してTREEという雑誌があります。新規なデータに基づく原著論文は含まれておらず、出版された論文紹介(Update)や、意見交換(Letter)、新規なアイデアや意見(Opinion)、そして…

クニマスの定着に導入圧は重要だったのか?

過去に絶滅したと思われていたクニマスが本来生息していなかった湖から再発見されたというニュースが昨年末にちょっとした話題になりました(参考:“絶滅”した幻のクニマスを発見)。10年くらい前学生だった頃に「むしクン」と呼ばれからかわれた身としては…

飛行機によって運ばれる外来種

ホノルルから帰国する機中で、キイロショウジョウバエを見かけました。自然状態で何千から何万年に一度くらいしか成功しないような、異なる生物地理区を越える移動イベントは、飛行機に乗るとほんの数時間でなしとげてしまいます。 島に固有の鳥類を絶滅に追…

気候変動に備えた人為的な生息地移動(managed relocation)の是非

今日届いた電子メールを開くと、アンケートの依頼がありました。最近、投稿雑誌や新規雑誌のアンケート依頼がよくあるのですが、「Managed Relocation」というキーワードをみて、真剣に取り組んでみる気になりました。今話題の「気候変動に備えた人為的な生…

尖閣諸島の生物相と外来種問題

尖閣諸島に関する話題の中、魚釣島でのノヤギ問題を解決しようという活動がはじまったようです(センカクモグラを守る会)。 「センカクモグラを守る会」設立記者会見 ヤギはこれまでに尖閣諸島だけでなく世界のさまざまな島に放たれ、その強い増殖率によっ…

陸生のヒモムシ

「むし」と聞けば、昆虫やムカデ、ダンゴムシといった節足動物を思い浮かべる人が多いでしょう。実際、最も種数が多いグループですし、陸上で目にする虫のほとんどは節足動物(門)です。しかし、他にも「むし」と呼ばれる動物門がたくさんいます。 その一つ…

侵入のパラドックス:在来種数が多いほど場所ほど外来種数も増える?

さまざまな地域間で比較すると、在来種数が多い場所ほど外来種数も多い傾向があることが知られています。あれ?在来種が多い群集ほど外来種は侵入・定着しにくいのではなかったのでしょうか。実は、在来種数と外来種数の関係は複雑で、どの空間スケールでみ…

外来種は種多様性を高めていますか?

ありがちな質問として、 「外来種は種多様性を高めているんじゃないでしょうか?」 というのがあります。実際、以前に紹介したように島嶼部では外来植物の増加によって本来の種数の二倍にもなっています(参考:島で植物の種数は二倍になる 1、2)。 種多様…

陸生のウズムシ:最強の外来種?

プラナリア(ウズムシ綱 Turbellaria)は生物の教科書に頻出するため一般にもよく知られた扁形動物(Platyhelminthes)でしょう。体の一部を切断しても、その切断片から一つの個体に再生可能なことで知られ、このため生物実験によく使われているわけです。 …

島固有の捕食者がもたらす生態系サービス

昨今「生態系サービス(ecosystem service)」という用語が一般的にも普及しつつあります。生態系が保持している機能から人々がいかに恩恵をうけているかを定量的に査定したものです*1。 島の固有種が生態系サービスを提供しているかもしれないという興味深…

ハワイビロウの多様性と絶滅の危機

南の島といえば椰子の木、ここハワイにも多くのヤシが生育しています。もちろん、ワイキキのビーチに生えているヤシは人が持ち込んできた園芸種です。ハワイには Pritchardia というヤシ科の属に23種もが分布しています。すべての種は一つの島ごとにしか見ら…

ハワイの野ブタ:生態系に及ぼす影響

野ブタとは、文字通り、人によって持ち込まれ野生化したブタです。 ハワイ諸島は18世紀終わりにキャプテンクックが発見する以前からポリネシアの人々が入植し生活してきました。彼らは、西洋人よりも前からハワイにブタを持ち込んでいました。初期にポリネシ…

ハワイミツスイ類が絶滅した原因

ハワイ諸島での絶滅や種の保全、外来種による影響などを語る上で欠かせない事例としてハワイミツスイ類があります。あまりに有名な話なので、これまで特別にとりあげてきませんでしたが、2009年に良い総説論文が出ていたのでそれを含めてざっと紹介しておき…

ハワイのエスカルゴ

久しぶりにハワイの外来生物についての話題でも。 ハワイの低地は年中温暖な熱帯地域に属するわけですが、オアフ島でも最高1000m、マウイ島で最高3000m、ハワイ島では最高4000mをこえる山があります。つまり、山にいけば熱帯というよりも温帯に近い気温にな…

島にゾウガメを放そう!? 島嶼生態系への代替種導入(taxon substitution)

北米大陸での再野生化計画に関して極めて否定的な見解が多いことを紹介しました。 メガファウナに限らず絶滅種の代替種を導入しようという考え方(taxon substitution)は、島を含めてさまざまな地域に適用できるものです。 島環境では生態系に強い影響を与…

北米大陸にライオンを放そう!?? 再野生化(rewilding)をめぐる論争

害虫や外来種を駆除するために原産地の天敵を導入するのが「古典的生物(的)防除」と呼ばれる考え方です。これまでにも繰り返し述べてきたように、この人為的な外来種の導入はしばしば標的としない生物にも影響を与えるという意味で、その問題点が指摘され…

共生細菌が外来線虫から宿主を防衛する?

先日の学会で口頭発表を行うとき、セッションがはじまる前にプレゼンのファイルを備え付けのパソコンに入れておく必要がありました。セッションには講演者の紹介を行い質問を受け付ける座長(チェア)というのがいます。 チェアは紹介するにあたって、読みに…

国が富めば外来種はふえる

島が大きければ人口が増え、これによって外来種の持ち込み(導入圧:propagule pressure)がふえる傾向があることは以前に紹介しました(参考:島が大きくなると外来種数も増える)。これは何も島に限らず、大陸でも同じことです。 欧州はEUの統合により諸国…

侵略的外来種とは

外来種問題でしばしばよく耳にする「侵略的外来種(invasive alien species)」とはどういう外来種を指すのか。 一般には、自然(在来)生態系や人間活動に強い影響を与える外来種のことを言います。しかし、科学者が一般的に使っているにもかかわらず、定量…

外来植物の植栽から逸出するまで

外国産の樹木を公園や植物園などに植栽することは古くから世界各国で行われていることです。しかし、一部の種がそういった人工的な環境から逸出し、野外に定着します(参考:種苗会社と外来植物)。特に、熱帯の海洋島では、その逸出が頻繁に起こり、一部の…

種苗会社と外来植物

外来植物はどのように持ち込まれ、定着するのか。人の活動が強い影響を与えているのは間違いないですが、具体的な活動を分析するのは重要なことです。 最も考えられる道筋として、園芸植物として売られ、野外へ逸出し定着することで侵略的な外来植物になるこ…

外来植物ほど化学防衛力が強いか?

外来植物が新たに侵入した土地で繁栄する理由として、在来の植食者が外来種をあまり食べないということがいわれてきました(天敵開放仮説:参考:外来植物は在来植物より食べられにくいか?)。さらにより具体的にいえば、在来の植食者が(進化史上)これま…

メクラヘビの生物地理

ナショナルジオグラフィック ニュースから 「新種のメクラヘビ、生息分布の謎に迫る」 ミミズそっくりの小型(せいぜい全長20cm)のヘビ、メクラヘビ類は、地表や地中にいるアリやシロアリの卵や蛹などを食べると言われています(もちろん人に危害は加えない…

外来植物の島嶼生物地理

島の面積とともに種数が増加する(参考:島面積と種数の関係)。また、島が本土(Mainland)から遠ざかる(隔離度が増す)につれ種数が減少する。これは、絶滅率が島の面積とともに減少すること、そして移入率が島の隔離度とともに減少することによって説明…

島面積と種間相互作用の関係

大きな島には、小さな島よりも多くの種類の生物が生息しています(参考:島面積と種数の関係:メカニズムのまとめ)。外来種もまた大きな島には持ち込まれやすく定着しやすい可能性が指摘されてきました(参考:島が大きくなると外来種数も増える)。つまり…

IUCN / SSC 専門家グループのニューズレター

研究室のRさんが一人で編集しているIUCNの軟体動物専門家グループのニューズレターが発行されました(フリーでPDFをダウンロードできます)。毎年この季節に出すようですが、いつも豊富なカラー写真や図が満載で、カタツムリ好きの人には楽しめる内容です。…

固有種保全のための生物的防除

いわゆる古典的生物(的)防除(Classical Biocontrol)とは、農作物にとって害となる外来生物対して、その原産地から天敵を導入することでした。しかし、防除のために持ち込まれた外来の天敵が、標的となる生物以外の在来生物を攻撃するという問題点が繰り…

温帯からやってきた外来種

今日は研究室のMさんの博士論文公聴会(Ph.D. Defense)でした(参考:Ph.D. Defense)。ハワイの在来陸産貝類の保全や生態、外来種による影響についての研究です。 ハワイは常夏の島で知られるように、熱帯か亜熱帯に所属する温暖な島々です。一方で、ハワ…