国が富めば外来種はふえる

 島が大きければ人口が増え、これによって外来種の持ち込み(導入圧:propagule pressure)がふえる傾向があることは以前に紹介しました(参考:島が大きくなると外来種数も増える)。これは何も島に限らず、大陸でも同じことです。


 欧州はEUの統合により諸国間の交流がますます盛んになっています。人口の多い国や経済活動が活発な地域ほど人の出入りが多くなり、外来種の持ち込みも増えそうです。



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 ヨーロッパにおいて、コケ類(bryophytes)、菌類(fungi)、維管束植物(vascular plants)、陸上昆虫(terrestrial insects)、水生無脊椎動物(aquatic invertebrates)、魚類(fish)、両生類( amphibians)、爬虫類(reptiles)、鳥類(birds)、哺乳類(mammals)といったさまざまな分類群の外来種数について、各地域の地形(島嶼or大陸、緯度、経度、面積、陸水面積)、気候(平均降水量、平均年気温、夏と冬の気温の差)、土地被覆(生息地の数、生息地の不均一性に加え、人為的要因(人口密度、道路密度、国の経済的豊かさ)の観点から解析を行った。


 結果、外来種数は、陸上昆虫類と菌類で人為的要因によって、鳥類と水生無脊椎動物で人為的要因と気候要因により、コケ類で地形要因(島嶼)により、哺乳類は気候要因により、維管束植物と爬虫類は複合要因によって影響されていた(魚と両生類は有意に重要な要因がなかった)。


 また、人為的要因の観点からみると、最も外来種数が多かったのは、人口密度が1平方kmあたり91.1人以上で、経済的な豊かさが1人あたり25万米ドルを上回る地域だった。最も外来種数が少なかったのは人口密度が1平方kmあたり8.5人未満の地域だった。


 このように外来種数にとって、気候や地形といった要因以外に、国(地域)の豊かさや人口密度が統計的に重要な指標となっていた。


文献
Pyšek P et al. (2010) Disentangling the role of environmental and human pressures on biological invasions across Europe. PNAS early edition.


参考ページ
Conservation Magazine Journal Watch
Alien Nation外来種の国)」


 人口密度や経済的な要因を考慮すれば、今後増加しうる外来種数をある程度予測することができるかもしれません。