2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

筆箱効果:地球の幾何学的なパターンから多様性勾配を説明できる?

高緯度地域(極、寒帯、温帯)から低緯度地域(熱帯)に向かうにつれ生物の種数が多くなるのはかなり一般的な現象です。この多様性勾配を生み出すメカニズムとして、低緯度地域の方が生物種間の関係が深いという仮説や、高緯度ほど分布域が広くなるという仮…

ハワイ大学の図書館

ハワイ大学マノア校にはハミルトン・ライブラリー(Hamilton Library)という図書館があります。館内には、コピー機、勉強机、コンピュター端末、図書、資料、トイレなどがあります。 雑誌についても、関心がある昆虫学や生態学の専門誌、生物学、科学関係一…

島面積と種数の関係:メカニズムのまとめ

小さな島より大きな島の方が種数が多く、大陸から遠く離れた島よりも近くの島の方が種数が多い(参考:種数面積関係)。この現象を説明するためにマッカーサーとウィルソンは種の移入(Colonization)*1と絶滅(Extinction)*2を考慮して平衡理論を提唱しま…

固有種保全のための生物的防除

いわゆる古典的生物(的)防除(Classical Biocontrol)とは、農作物にとって害となる外来生物対して、その原産地から天敵を導入することでした。しかし、防除のために持ち込まれた外来の天敵が、標的となる生物以外の在来生物を攻撃するという問題点が繰り…

保全生物学の研究は遅れがち?

地球温暖化、生物多様性の減少など、生物学がかかわる環境問題は近年ますます注目されつつあります。研究をうまく政策に活かすには、迅速な研究成果の発表が重要になってきます。しかし、生物多様性の保全にかかわる保全生物学の分野では、研究の公表が他の…

マダガスカルの起源

ナショナルジオグラフィック ニュースから「マダガスカルの哺乳類は大陸から漂着」 AFBB News から 「マダガスカルのほ乳類、流木群に乗って漂着 研究」 Journal Watch Online から 「Hitchhiker’s Guide to Biodiversity」 マダガスカルは、かつての巨大大…

ハワイの気候

今日は夕方から雨が強く降って帰宅するのに大変でした。日本で自転車通学していた時は、しょっちゅう雨に降られた気がしますが、ここホノルルではそれほど多く経験していません。坂道を自転車で登っても、汗まみれで気持ち悪いということもなく、むしろ心地…

ラポポートの法則(Rapoport's Rule):緯度の増加とともに分布域は広がる?

温帯より熱帯の方が種数が多い。 というのは、さまざまな生物群で見られるかなり一般的な傾向でしょう(参考:なぜ熱帯に植食性昆虫が多いのか?、または、熱帯ほど生物の種間関係が深い)。横軸に緯度をとり、縦軸に種数をとると、赤道から高緯度にかけてし…

直翅類による送粉

植物の花粉媒介(送粉)は、通常さまざまな種類の動物(鳥、昆虫など)によって行われます。ただし、一部の植物では、送粉を特定の動物にのみ依存することがあります。 海洋島では、分散力のある特定の種しか島にたどりつけなかったため、大陸などで優占して…

トキはなぜ絶滅しなかったのか

日本で「絶滅」といえば「トキ」、「トキ」といえば「絶滅」というほど種の保全のシンボルになっています。これはトキ*1の学名が Nipponia nippon という、いかにも日本固有種のような名前が大きく関係しているのかもしれません。また、日本での野生絶滅へと…

ハワイのファイトテルマータ

自然をどう観るか、という「自然観」は人によってさまざまでしょう。物理学者がみる自然と生態学者がみる自然では、おそらく同じものをみても全く異なった「もの」をみているに違いありません。 生き物のあり方をみる生態学者の自然観もまた人によって異なる…

アマゾンの漁師とカワイルカ

大河川など淡水域に分布するカワイルカは、その進化史からみても重要なのは言うまでもないでしょう。インドカワイルカ(ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカ)、アマゾンカワイルカ、ヨウスコカワイルカ、ラプラタカワイルカなどが知られており、それぞ…

爬虫類による送粉と種子散布

恐竜が種子散布を行っていたくらいですから、現存する爬虫類も植物との共生関係をもっていてもおかしくありません。実際、トカゲやヤモリが花を訪れて蜜を舐めたり、果実を食べたりすることは頻繁に観察されてきました。これらの観察結果を集計してみると、…

NSF の査読コメント

NSF(米国科学財団)の研究費申請の結果を見せてもらう機会がありました。総合評価は4段階で上位26%ほどが採用されるようです。日本の科研費で不採用の場合は短いコメントと総合評価(A、B、C・・・)が返ってくるだけですが、NSFではプログラム・オフィサー…

恐竜による種子散布

中生代のシリアゲムシによる花粉媒介を想像していたら、中生代といえば恐竜が優占していたことを思い起こしました。 鳥類も恐竜の一部から進化してきた可能性を考えれば、現在鳥類果たす生態的な役割を恐竜が担っていたとしても特に不思議ではありません。空…

被子植物以前:シリアゲムシによる送粉

ハナバチ、ハエ、チョウが花を訪れ蜜を吸い、そのお返しに花粉を運んで受粉する(以後、送粉と呼ぶ)。そんな被子植物と昆虫の共生関係はいたるところで観ることができます。ハナバチやハエ、チョウ類では花蜜を効率良く摂取するために口器を特殊化させた種…

Double-Blind Review:論文執筆者を匿名にすると・・・

2日、3日は土日だったので、4日から仕事始めと言う感じです。ここ最近気温が高めで長袖から半袖に戻りました。 先月問い合わせしていた論文に関してもようやく返事がありました。最初に推測した通り、同じ雑誌に投稿された複数の原稿を抱えている査読者が、…

ハワイトラカミキリの進化

ハワイ諸島では、ただ1種の祖先から多くの種に分化してきた動植物がいくつも知られています。キキョウ科のロベリア類(126種)、カタツムリのハワイマイマイ(100種)、ハワイショウジョウバエ(800種以上)、カザリバガ(350種以上)、ハワイメンハナバチ(…