ナショナルジオグラフィック ニュースから
AFBB News から
「マダガスカルのほ乳類、流木群に乗って漂着 研究」
Journal Watch Online から
「Hitchhiker’s Guide to Biodiversity」
マダガスカルは、かつての巨大大陸であったゴンドワナの一部でした。マダガスカルはインド亜大陸と一緒に、少なくとも1億4000万年前頃にはアフリカ大陸から分離し、さらに約8800万年前にはインド亜大陸(後にユーラシア大陸に衝突してインド半島になる)と分離したと考えられています。したがって、海の中から突然出現した海洋島と違って、マダガスカルの生物相は、他の陸地と分離する前からすでにできあがっていたと考えられがちです。
しかし、マダガルカルの生物相をみると、カメレオンは世界で最も多様性が高い一方、サンショウウオが1種も分布しないなど、ちょっと変わった構成をもっていたりします。大陸から隔離した後の期間が長かったので、元々いた種の多くが絶滅し、その後一部のグループで多様化が起こったと考えられてきました(参考:島の固有種:その進化)。
近年、分子系統学的な手法を容易に使えるようになったため、マダガスカルの多くの生物群でその分岐年代に関するデータが集まりつつあります。それらのデータを集計すると、多くはアフリカ大陸に起源(祖先種)をもち、分岐年代は9000万ー7500万年前以降にピークがありました。つまり多くの分類群では、マダガスカルがアフリカ大陸から離れた後に、海をわたってやってきた可能性が指摘されるようになってきました。
ここでも、Vicariance vs. Dispersal 論争があったわけです(参考:分散/分断分布論争、再び)。しかし、キツネザルのような哺乳類がいかに海を渡ってきたのか、ちょっと想像しにくいかもしれません。このため、マダガスカルとアフリカの間にはかつて陸橋があって、これを渡ってやってきたという仮説もあります。
しかし、上記のニュース記事によれば、コンピューターによってかつての海流の状況をシュミレーションし、哺乳類でも丸太などに乗って、アフリカからマダガスカルに流れ着いた可能性を示唆した論文がネイチャーで発表されました。
アフリカとマダガスカルの間の(数千万年前の)距離は430kmで、最もはやい海流が流れていたら筏に乗って約3週間で到達できるそうです。これくらいの期間なら、小型の哺乳類の中に、空腹に耐えてマダガスカルにたどり着いた個体がいたのかもしれません。