絶滅危惧種ほど研究されやすいか?

 パンダやライオンのようなカリスマ的人気のある大型哺乳類が絶滅の危機に瀕しているといえば、多くの人がその保護に関心をもつことでしょう。しかし、あまり注目されていなくても、同程度に絶滅の危機に瀕している動物は山のようにいます。また、絶滅危惧種でなくとも、広域に分布し生息環境を代表するような種を保全することで、それをとりまく環境や生態系をも保全するという考え方もあります。

 
 実際にどのような動物が主に研究されているのでしょうか。


 IUCN(国際保護連合)が提供するレッドリストRed List)に記載されているアフリカ産大型哺乳類131種、小型哺乳類299種、鳥類1233種、爬虫類47種、両生類199種の合計1909種に注目し、1994年から2008年にズオロジカル・レコード(Zoological Record Database)を検索することで、グループごとで種あたりの研究論文数を比較した。また、レッドリストの記載項目によって、絶滅危惧種(critically endangered, endangered, vulnerable)と低絶滅リスク種(conservation dependent, near threatened, least concern)に分け、この項目ごとでの種あたり論文数も検討した。


 結果、大型哺乳類と爬虫類では、絶滅危惧種の種あたり研究論文数が低絶滅リスク種にくらべて圧倒的に多い傾向があった。一方、小型哺乳類と両生類の絶滅危惧種は低絶滅リスク種よりも少ない傾向があった。鳥類では絶滅危惧種と低絶滅リスク種との研究論文数は同程度だった。


 動物分類群間での違いは大きく、絶滅危惧種の種あたり論文数でみれば、大型哺乳類は、爬虫類の2.6倍、鳥類の15倍、小型哺乳類の216倍、両生類の500倍にも及んでいた。


研究
Trimble MJ, Van Aarde RJ (2010) Species inequality in scientific study. Conservation Biology 24: 886-890.


 一般の認知度の高い大型哺乳類の絶滅危惧種ほど研究費や保全の予算がつきやすいという理由があるのでしょう。とはいえ、個人的には、あまり知られていない小型の動物こそもっと研究されてしかるべきとは思っています。