島の生物学

進化学・島の生態学を学べるオススメ本

進化学や島の生態学について、日本語で気楽に読めて勉強にもなる本。学部生には少し難しいかもしれませんが、大学院生くらいになるとかなり理解が深まると思います。進化学や生態学、島の生物学について研究をしている人にはおすすめです。 歌うカタツムリ-…

孀婦岩における島の法則

先日放映された「ダーウィンが来た!」の「世界初調査!東京の秘境 孀婦(そうふ)岩」は楽しめました。 伊豆諸島最南端において、海上からほぼ垂直に100mも突き出た巨大な岩(孀婦岩)を調査したところ、本州などに見られる種(個体)に比べて巨大化したウ…

ハワイガラスの道具使用

最も有名な科学雑誌の一つ『Nature』誌で、個人的には最近おもしろいという記事はあまりなかったのですが、久しぶりに興奮した論文に出会えました。 以前に「島での道具使用と食性進化」という記事で、ガラパゴス諸島固有のキツツキフィンチとニューカレドニ…

絶滅種の再発見:「絶滅」論文は撤回されるべきか?

以前に気候変動で絶滅した種としてとりあげた陸貝が、2014年8月に再発見されたというニュースがありました。 むしのみち 「島に固有のカタツムリが気候変動で絶滅?」 ナショナルジオグラフィック ニュース 「“絶滅”の陸貝を再発見、セーシェル」 いないこと…

アマゾンの巨大ダム建設がもたらす種間相互作用ネットワークの崩壊

南米の熱帯雨林では、水力発電を目的に多数の巨大なダムが建設されてきました。さらに今後20年間でアンデス山脈沿いのアマゾンでは151、ブラジルのアマゾン低地では118ものダム建設が計画されているそうです。熱帯雨林における巨大ダムは、二酸化炭素吸収能…

「種間相互作用の島嶼生物地理」の特集記事

かの大震災から1年と9ヶ月。地震が起こったのは、札幌開催の生態学会において自身が企画していた「種間相互作用の島嶼生物地理」での講演の最中でした(参考:「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画)。その企画集会の内容をもとに、学会の和文誌に特集記事…

パターンの抽出とメカニズムの提案

Whittakerらの「海洋島の生物地理学における一般動態理論」は、生態学ではよくある研究の流れにのって提案されたものでした。 Emerson & Kolm (2005) は、ネイチャー誌上で、ハワイやカナリア諸島において種数の多い島ほど単島固有種率が高いことを明らかに…

海洋島の生物地理学における一般動態理論

2009年に「島の生物地理学の理論、再び」を紹介しました。その中で、Robert J. Whittakerらが、マッカーサーらの理論は孤立した海洋島ではうまく説明できないことが多く、新たに「海洋島生物地理学における一般動態理論(general dynamic theory of oceanic …

日本人と生物地理

去年の3月11日は、私自身にとっても日本全体にとっても忘れない日となりました。地震が起こったのは、ちょうど、札幌で開催されていた日本生態学会の大会にて、私自身が企画した研究集会の発表の最中でした。 この一年を振り返って、自身の研究の意義を見失…

南極にも外来種

ナショナルジオグラフィックニュースより「南極で増える外来植物、原因は防寒具」 研究者や旅行者に付着して南極にも外来種が侵入しているというPNAS発表の論文です。 研究を指揮した南アフリカのチョウン教授は、南氷洋のさまざまな島の生物相を調べ、島面…

千石先生と島の生物学

悲報でした。 千石先生が死去 「わくわく動物ランド」「どうぶつ奇想天外!」で人気 私の子供時代、「わくわく動物ランド」を毎週楽しみに観てたものです。しばしば番組に登場されていた当時の千石先生の年齢が、現在の(私の)年齢に近いと知って少し感慨深…

哺乳類の系統樹

久しぶりの更新です。3年ぶりの日本のフィールドシーズンということで、生活面も研究の面でもどちらのペースもうまくつかめずに忙しい日々でした。そろそろ、このページも、研究面でも、生産的なペースに戻したいところです。 さて、最近読んだ本でとても良…

種数面積関係にもとづく絶滅率の推定は過大?

本日5月22日は国際生物多様性の日だそうです。 久しぶりにナショナルジオグラフィック ニュースの記事から 「種の絶滅率はそれほど高くない?」 昨今地球上の生物はかなりの速度で絶滅していると言われています。絶滅原因の最も大きな要因は、生息地の破壊で…

日本の固有植物

ようやく初夏らしい日が続くようになってきました。フィールドシーズン到来です。ゴールデンウィークより、いろいろな花を見る機会がありました。日本の初夏は3年ぶりということで、日本の植物の良さを感じるとともに改めて自身が日本で生まれ育った日本人な…

「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画

日本生態学会の札幌大会に参加しました。 この数年、島の生物学を勉強したり研究したりして、島の生物間相互作用について少しまとまった形として何かしたいなあと漠然と考えてきました。ハワイから帰国して、次も島の生物学を研究できるという保証(例えば研…

マイマイカブリの地理的変異:首が細いか太いか

日本列島に固有の生物について、その多様性や地理的変異を明らかにするという研究に強く興味をもっています。最近、Evolution 誌に日本固有のマイマイカブリの地理的変異についての論文が出版されたようで、さっそく読んでみました。 カタツムリを捕食するマ…

亜熱帯大陸島・沖縄本島を訪問

沖縄本島北部に来ています。先月の西表島に引き続き、大陸島の生物多様性の高さを感じているところです。南西諸島で最大の島ですから、多様性が高いのは当たり前かもしれませんが。 北部の森林(イタジイと呼ばれるシイが優占する常緑広葉樹林) 沖縄といっ…

亜熱帯大陸島・西表島を訪問

西表島を訪れています。帰国後の寒さで顔にあかぎれができそうなほどでしたが、当地ですっかり回復しました。やっぱり南の島は心地よいです。 大きな地図で見る ここ数年、小笠原諸島やハワイ諸島といった海洋島でのフィールドワークがメインでしたので、南…

飛行機によって運ばれる外来種

ホノルルから帰国する機中で、キイロショウジョウバエを見かけました。自然状態で何千から何万年に一度くらいしか成功しないような、異なる生物地理区を越える移動イベントは、飛行機に乗るとほんの数時間でなしとげてしまいます。 島に固有の鳥類を絶滅に追…

アイランド・シンドローム

小笠原諸島など海洋島における生物相やその進化について一般的にわかりやすい本が出版されていました。この2年間ここで紹介してきたような話が、かなりわかりやすくまとまっています。 小笠原諸島に学ぶ進化論 ―閉ざされた世界の特異な生き物たち― 「Island …

日本列島の生物多様性とは

帰国して最初に読む本は決まっていました。*1 生命は細部に宿りたまう ミクロハビタットの小宇宙 日本列島の生物とは、生物多様性の保全とは、いろいろと考えるのに良い本です。日本列島に固有の生物とその種間相互作用について、さまざまな事例を紹介してい…

尖閣諸島の生物相と外来種問題

尖閣諸島に関する話題の中、魚釣島でのノヤギ問題を解決しようという活動がはじまったようです(センカクモグラを守る会)。 「センカクモグラを守る会」設立記者会見 ヤギはこれまでに尖閣諸島だけでなく世界のさまざまな島に放たれ、その強い増殖率によっ…

ハワイのキウイ:盲目のカモ?

ニュージーランドの飛べない鳥キウイは、夜行性で視力はかなり弱く、嘴の先端にあるセンサーを使って餌を探してるそうです。そんな奇妙な習性をもつ鳥が、ハワイにもかつて生息していたのではないか、というお話です。 ハワイ諸島は、世界でも最も多くの種の…

陸生のウズムシ:最強の外来種?

プラナリア(ウズムシ綱 Turbellaria)は生物の教科書に頻出するため一般にもよく知られた扁形動物(Platyhelminthes)でしょう。体の一部を切断しても、その切断片から一つの個体に再生可能なことで知られ、このため生物実験によく使われているわけです。 …

島固有の捕食者がもたらす生態系サービス

昨今「生態系サービス(ecosystem service)」という用語が一般的にも普及しつつあります。生態系が保持している機能から人々がいかに恩恵をうけているかを定量的に査定したものです*1。 島の固有種が生態系サービスを提供しているかもしれないという興味深…

島にゾウガメを放そう!? 島嶼生態系への代替種導入(taxon substitution)

北米大陸での再野生化計画に関して極めて否定的な見解が多いことを紹介しました。 メガファウナに限らず絶滅種の代替種を導入しようという考え方(taxon substitution)は、島を含めてさまざまな地域に適用できるものです。 島環境では生態系に強い影響を与…

捕食よりも種内競争の淘汰圧が強い?

種内(個体群内)の激しい競争が強い淘汰圧となり表現型が変化するというのがダーウィン以来の進化の一般的な考え方です。表現型の変化というのは、体サイズが大きくなったり、脚が相対的に長くなったりといった形態変化を含みます。 種内競争といっても、餌…

種分化に必要な最小の島面積は?

大きなスケールでの種数ー面積関係を生み出すメカニズムの一つとして「島が大きくなるほど種分化がおこりやすい」ことを紹介しました。 カリブ海のアノール類の種分化と島面積の関係を調べたオリジナルな論文は2000年にNatureに掲載され、その後「The Theory…

海を渡るクロコダイル

ナショナルジオグラフィック・ニュース 「イリエワニ、ボディーサーフで海を渡る」 イリエワニ(Crocodylus porosus)は南西太平洋からインド洋の沿岸部にかけて広く分布するクロコダイルです。以前から、フィジーやバヌアツのよう離島にも分布することから…

生物地理学の教科書

「Biogeography 3rd edition」出版からおよそ5年、はやくも4th editionが出版される模様です。 Lomolino、Riddle、Brownといった従来の著者に、「Island Biogeography: Ecology, Evolution, and Conservation」や「Journal of Biogeogaraphy」の編者でおなじ…