研究の道

最終講義

3月も終わり、年度末です。この3月はお世話になった先生の最終講義が2つありました。1つはポスドク時代の受け入れの先生、もう1つは学生の頃から(そして)就職してからもお世話になってきた先生です。前者は最終講義と懇親会にただ参加するだけでしたが…

学問の系譜

最近はスマホ(Kindle)で本や漫画を読んだり、SNSを眺めることが多くなり、紙の本にふれる機会がかなり減ってしまいました。しかし、年末年始に家でゆっくりする時間がとれ、久しぶりに紙の本を手にすることができました。いろいろ読みたい本や読むべき本が…

論文を書くモチベーション

本日は、久しぶりに大阪市内まで出かけました。コロナ禍になって電車に乗るはまだ4回目です。ほとんど徒歩か車で生活しているので、電車や梅田の人の多さに驚きます。 私は中学生の頃から大阪市立自然史博物館に出入りしていて、学芸員さんや博物館に出入り…

「世界で」初めて...

初めて目にする現象を発見した時から研究がはじまることがあります。既存研究を調べ、その現象について、過去の文献にも観察された記述がない時、学術論文として発表する価値が増すため研究への意欲が高まります。 その現象について論文を執筆し、学術雑誌に…

オンラインでの研究活動

世の中はすっかりオンラインでの講義やセミナー、打ち合わせ、会議が一般的になってしまいました。ずいぶん前からオンラインでのコミュニケーションは可能であったのですが、コロナ禍で対面が制限されるまではなかなか定着しませんでした。これは、ヒトは主…

生態学・進化学におけるナチュラルヒストリー

生態学や進化学は、その学問の名前で呼ばれるようになる以前は博物学(Natural History)という学問分野に含まれていました。現在の生態学や進化学の礎を築いたダーウィンやウォーレスも、彼らが活躍した19世紀には博物学者(Naturalist)と呼ばれていました…

続:大学院修了後の歩む道

8年ほど前に「大学院修了後の歩む道」という文章を書きました。当時は独立行政法人(今でいう国立研究開発法人)の研究所に所属していたため、その当時の仕事内容を簡単に紹介しました。その後、大学教員に転職し、さらに7年が経過しました。 学生の頃、間…

画面を共有して議論

共同研究を行う時や、論文指導をする時される時、同じ資料(論文、プレゼン、データシート)を眺めながら議論する状況があると思います。 私がハワイに留学していた際、受入研究者の先生から論文指導をしていただく機会がありました(以前の記事:英文の個人…

海外メディアの取材と対応

毎日、世界中で多くの科学論文が出版され、同時に最新の論文に関する記事がさまざまなメディアに取り上げられています。では、メディアの記者がどのように論文の出版を知り、出版と同時に記事にすることができるのでしょうか。 論文を書いて出版をしている研…

何時間とりくむべきか

日に何時間くらい研究や勉強に取り組むべきか。トータルで何時間取り組めば、ある分野の専門家になることができるのでしょうか。 スポーツや音楽で一流プロになるには、練習にかけたトータルの時間(例えば10,000時間)が重要になってくることが知られていま…

動画のインパクト

動物の行動を研究していると、研究内容を人に伝えるのに長々と説明するよりも、その動物の動画を見せることが手っ取り早いものです。外国人研究者に説明する時には特にそうです。撮影した動画を編集していつでも再生できるようにスマートフォンに保存してお…

なぜ今の研究に興味をもっているのか、というのを考えさせてくれた講演

普段、学会発表や招待講演以外では滅多に講演を聴きに行くことはありません。もともと出不精な性格ということもあるのですが、論文を読んだりすれば新しい研究の知見は得られますし、学会発表のついでに聴ける講演でも多くの情報が入ってきます。大学にいれ…

絶滅種の再発見:「絶滅」論文は撤回されるべきか?

以前に気候変動で絶滅した種としてとりあげた陸貝が、2014年8月に再発見されたというニュースがありました。 むしのみち 「島に固有のカタツムリが気候変動で絶滅?」 ナショナルジオグラフィック ニュース 「“絶滅”の陸貝を再発見、セーシェル」 いないこと…

日本語論文のオープンアクセス

去年末に日本生態学会誌で出版された特集記事「種間相互作用の島嶼生物地理」はオープンアクセスになっています。 日本生態学会誌 62巻3号 http://ci.nii.ac.jp/vol_issue/nels/AN00193852/ISS0000485113_ja.html オープンアクセスというのは、学術論文を誰…

研究留学の手引き

6年ほど過ごした関東を離れ、およそ9年ぶりに関西に戻ってきました。3月いっぱいで前職を辞して、心機一転新しい住居、新しい職場で再スタートしたからです。関西に戻ってきたといってもはじめて住む町なので、全く新しい人生を歩むような気分です。引っ越し…

「Graphical abstract」とは

去年の夏くらいに論文をやりとりしている中で、査読者の一人*1から「Graphical abstract」というのを作成するように言われました。知らない用語だったので、調べてみると、Abstract(摘要)が簡潔な文章の要約または抜粋であるのに対し、論文の結果を代表で…

小学生にサイエンスはできるか?

数年ぶりに風邪をひいてしまいました。仕方なく自宅で安静にしていた時に興味深いテレビ番組を観ました。 スーパープレゼンテーションという番組です。各界のユニークな演者が15分ほどプレゼンを行うというTEDの動画を日本向けの語学番組として紹介したもの…

研究留学

異国の地で一定期間留まって研究に従事することをここでは研究留学と呼ぶとします。研究者を志すなら、一度はこの研究留学を体験しておきたいものです。しかし、研究留学がどういうものか、大学生や大学院生の頃から事前に知っておくのは大切なことだと思い…

「種間相互作用の島嶼生物地理」の特集記事

かの大震災から1年と9ヶ月。地震が起こったのは、札幌開催の生態学会において自身が企画していた「種間相互作用の島嶼生物地理」での講演の最中でした(参考:「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画)。その企画集会の内容をもとに、学会の和文誌に特集記事…

論文のカラー図作成

論文の中で、研究に使った試料や動植物をカラー写真を使って示したい時がしばしばあります。また、複雑な図をわかりやすくするために凡例や線を色分けしたい場合もあるでしょう。つい数年前まではカラーチャージを気にして、なかなか思い切ってカラーにでき…

メールで論文請求

職場で図書委員というのをやっています。確か中学1年生の時以来です。中学生の頃の図書委員会では廃棄する本を決めたりしたことを覚えていますが、今は研究所で購読する学術雑誌を決めたりすることが主な仕事です。 今の職場ではNatureやScienceの冊子は購…

論文質をとられる

論文を投稿していてしばしばあることなのですが、投稿先の雑誌から他人の論文の査読を頼まれます。もちろん、論文を投稿するからには、自分の論文に少なくとも3人(担当編集者と査読者)が関わるわけですから、自らがその役割を求められたら従うのは当然でし…

なぜすぐに論文を再投稿できないのか

せっかくの良い季節なのに、天気がこうも悪いと本当にもったいないなあと感じる日々です。 さて、最初に投稿してから長く時間がかかっている論文があります。その改訂を行いようやく再投稿しました。論文の改訂や再投稿について、いろいろ反省することが最近…

大学院修了後の歩む道

わたくしごとですが、大学院を修了後、ポスドク(国内の大学研究室)を経て、独立行政法人(独法)の研究所に入所し、研究留学(海外の大学研究室滞在)をはさんで、現在も独法研究所で勤務しています。独法研究所というのは、たぶん、一般の人からだけでな…

種間関係の多様性を俯瞰する

さまざまな生物間相互作用に興味のあるナチュラリスト向けの本が出版されました。 『種間関係の生物学―共生・寄生・捕食の新しい姿』 目次 はじめに 第1部:食うー食われるの新しい姿 第1章:形を変えるオタマジャクシ:操作実験からのアプローチ 第2章:右…

千石先生と島の生物学

悲報でした。 千石先生が死去 「わくわく動物ランド」「どうぶつ奇想天外!」で人気 私の子供時代、「わくわく動物ランド」を毎週楽しみに観てたものです。しばしば番組に登場されていた当時の千石先生の年齢が、現在の(私の)年齢に近いと知って少し感慨深…

ミツバチは重要な送粉者か?

生態学・進化学の最新のトピックを扱うTrends in Ecology and Evolution、略してTREEという雑誌があります。新規なデータに基づく原著論文は含まれておらず、出版された論文紹介(Update)や、意見交換(Letter)、新規なアイデアや意見(Opinion)、そして…

写真撮って専門誌に発表

3年ぶりの日本のフィールドシーズンということで、毎週のように出かけており更新が滞っておりました。 さて、連休でちょっと一息ついたということもあって、久しぶりの更新です。 おなじみのナショナルジオグラフィックニュースから 豪州で発見、道具を使う…

追悼・あこがれの昆虫学者

コーネル大学名誉教授のトーマス・アイズナーさん(Thomas Eisner)が先月逝去されました。 New York Times Thomas Eisner, Who Cracked Chemistry of Bugs, Dies at 81 長年患っていたパーキンソン病の合併症で亡くなられたようで、享年81歳とのこと。安ら…

研究をしてきた理由

年度末の大学では、退職される先生の最終講義というイベントがあります。研究所でも、退職される研究員の方が最後のセミナーをして送別会が催されることもあります。この度の震災で、いろいろ変更があったのですが、所属している研究所でも3月末に退職される…