行動

動画のインパクト

動物の行動を研究していると、研究内容を人に伝えるのに長々と説明するよりも、その動物の動画を見せることが手っ取り早いものです。外国人研究者に説明する時には特にそうです。撮影した動画を編集していつでも再生できるようにスマートフォンに保存してお…

ヘッピリムシの護身術

「ヘッピリムシ」ことミイデラゴミムシという昆虫がいます。江戸時代には「行夜(こうや)」という名称で、別名「へひりむし」「へこきむし」と呼ばれ、その後「三井寺はんめう」「ミイデラゴミムシ」と呼び名が変遷してきたことが知られています。 「へっぴ…

イモムシ・ケムシの護身術

イモムシやケムシといえば、柔らかい体にたくさん脚があってうねうねと動くので、気持ち悪がられる代表的な虫たちです。実際、虫好きを自認する私も子供の頃から生理的に受け付けませんでした。イモムシが多い4,5月は森や林に行くのもためらわれるほど。…

ハワイガラスの道具使用

最も有名な科学雑誌の一つ『Nature』誌で、個人的には最近おもしろいという記事はあまりなかったのですが、久しぶりに興奮した論文に出会えました。 以前に「島での道具使用と食性進化」という記事で、ガラパゴス諸島固有のキツツキフィンチとニューカレドニ…

イモムシ・ケムシは手足をどう使うか

新緑の季節です。新しい葉は柔らかく、いかにもおいしそうです。つまり、葉を食べる虫たちにとっては待ちに待った季節なのです。 昆虫少年時代、イモムシやケムシはあまり好きではありませんでした。しかし、大学院生になって、生態学や進化学の視点から新た…

日本産陸上発光動物一覧

ノーベル賞の対象ともなったオワンクラゲの発光物質の研究に見られるように、海産の発光動物はよく知られています(参考:wikipedia「生物発光」)。陸上では、ホタルの仲間が多くの種類で知られ、日本でもゲンジボタル、ヘイケボタルというように夏の風物詩…

カブトムシと樹液

子供の頃からずっと昆虫採集を続けてきましたが、今年ほどカブトムシをたくさん採集した年はなかったでしょう。たくさんの個体を必要とする案件があったからですが、今の職場の構内だけでかなりの数を採ったと思います。実家は大阪の住宅街にあって、少年時…

サムライアリの季節

昨日の夕方、研究所の構内でアリの行列を見つけました。ひょっとして、と思いしばらく観察していると、その集団はクロヤマアリの巣に入っていきました。 クロヤマアリの巣に入り込むアリの集団 さらに観察を続けると、巣の中から繭を運び出しています。 クロ…

ヒカリコメツキが光る理由

先日放映されたテレビ番組の中で「ヒカリコメツキの発光」映像が大変興味深かった。 世界の生物多様性のホットスポットを、福山雅治がナビゲーターとして訪れていくという番組です。ホットスポットの定義については、以前に少し触れました(ホットスポットと…

マイマイカブリの地理的変異:首が細いか太いか

日本列島に固有の生物について、その多様性や地理的変異を明らかにするという研究に強く興味をもっています。最近、Evolution 誌に日本固有のマイマイカブリの地理的変異についての論文が出版されたようで、さっそく読んでみました。 カタツムリを捕食するマ…

潜葉虫の自然史

待望の(?)潜葉虫(せんようちゅう)に関する本が出ました。 絵かき虫の生物学 目次 絵かき虫の生物学(序論) I. 絵かき虫の分類・多様性 コウチュウの絵かき虫 葉に潜るハエとその進化史 潜葉性をもつガ類の多様性 ハチの絵かき虫 II. 絵かき虫の生態 チ…

新種のオドリバエにみられる珍奇な前脚

英国王立協会の速報誌 Biology Letters にて新種記載されたオドリバエの前脚が謎めいていておもしろい。 オドリバエ科(Empididae)といえば、成虫は捕食性で、オスは餌(小昆虫)を捕まえ、それをメスにプレゼント(婚姻贈呈)して交尾するというちょっとキ…

陸生のウズムシ:最強の外来種?

プラナリア(ウズムシ綱 Turbellaria)は生物の教科書に頻出するため一般にもよく知られた扁形動物(Platyhelminthes)でしょう。体の一部を切断しても、その切断片から一つの個体に再生可能なことで知られ、このため生物実験によく使われているわけです。 …

扁形動物の社会性:吸虫の兵隊カースト

ミツバチやアリなどの社会性ハチ類、そしてシロアリ類では、自らは繁殖しない階級(カースト)の存在が知られています(参考:真社会性)。例えば、ミツバチのワーカーは餌をとり幼虫の世話をしますが、自らは繁殖しません*1。繁殖するカーストとしないカー…

米国開催の進化学会に参加

オレゴン州のポートランドで開催された Evolution 2010 に参加してきました。実は、日本国外で開催された学会に参加するのは初めての経験です。 ポートランド市街を走るマックス・レイル(町の中心部に限り無料で利用できる) ポートランドは札幌とほぼ同じ…

シタバチに発信機を装着

私の大好きな生態学者であるハインリッチ(Bernd Heinrich)*1は、マルハナバチの採餌行動を調べるために、自ら走ってハチを追跡したという逸話があります。 多くの植物のポリネーター(送粉者)であるハナバチがどの程度の採餌範囲を持っているのかは、昆虫…

カメハメハチョウの巣作り

ハワイにはさまざまな固有の昆虫が知られていますが、チョウはわずか2固有種しか知られていません。1種はハワイルリシジミでした。そしてもう1種はカメハメハチョウ(Vanessa tameamea)と呼ばれるアカタテハの一種です。 カメハメハアカタテハ (研究室のあ…

水陸両生のハワイカザリバガ

ハワイの珍奇なる虫たちシリーズの3回目でとりあげたハワイカザリバガ類(Hyposmocoma)ですが、続編が米国科学アカデミーの紀要に最近発表されたようです。 ハワイで数百もの固有種に分化したカザリバガですが*1、幼虫がカタツムリを食べる肉食の種類や、渓…

オオコウモリによる種子散布:密度が減ると機能しない

種の絶滅は、その果たしていた生態系機能が消えてしまうこと意味しています。しかし、実際には生態系機能の消失は絶滅する前から起こっています。 熱帯、亜熱帯域に分布するオオコウモリ類(Fruit bats)は、植物の種子散布に重要な役割を果たしていると考え…

直翅類による送粉

植物の花粉媒介(送粉)は、通常さまざまな種類の動物(鳥、昆虫など)によって行われます。ただし、一部の植物では、送粉を特定の動物にのみ依存することがあります。 海洋島では、分散力のある特定の種しか島にたどりつけなかったため、大陸などで優占して…

爬虫類による送粉と種子散布

恐竜が種子散布を行っていたくらいですから、現存する爬虫類も植物との共生関係をもっていてもおかしくありません。実際、トカゲやヤモリが花を訪れて蜜を舐めたり、果実を食べたりすることは頻繁に観察されてきました。これらの観察結果を集計してみると、…

「利己的な遺伝子」を読んで

研究室に入ったばかりの学生たちがリチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)の著書を知らないことに先生は嘆いておられました。もちろんその著書とは「The Selfish Gene」(1976年)のことです。 私は大学院に入ってからすでに十年以上たっているのでおお…

ハワイの珍奇なる虫たち(8)樹上に進出したヨコエビ

先日夜間に調査する機会がありました。場所は、オアフ島の標高700mくらいの尾根部で、おもにオヒア(ハワイフトモモ)の低木林で構成される原生植生です。 懐中電灯でオヒアなどの樹冠部を照らして観察していると、ピョンピョンと跳ねる1cmも満たない「むし…

理想の論文?

ナショナルジオグラフィック ニュース 「メジロダコの不思議な生態:道具を使う」 無脊椎動物では珍しい道具を使うという行動を報告した論文です。タコがココナツの殻に隠れるのですが、移動する時にも持ち歩くというユニークな行動がビデオに撮影されていま…

アリのいなかった島(2)海鳥のヒナを襲う外来アリ

今日は午後に Ph.D. Defense(博士論文公聴会)がありました。 ハワイ諸島にはもともとアリがいなかったことが知られていますが、現在では多くの種が侵入し(参考)、在来生態系に影響を与えていると考えられています。その影響の一つとして、海鳥のヒナがア…

ゴミを食べるコアホウドリ

多様性の保全や外来種関係などでいつも参考にしているのが、Conservation Magazine の Journal Watch Online です。最近出版された論文をブログ形式で紹介しています。ナショナルジオグラフィックに比べて、保全などに関係したちょっと暗い話題が多いのです…

海南島固有のランはミツバチの警報フェロモンを発する

植物とその受粉を担う動物(ポリネーター)との関係には、しばしば驚くようなつながりがあります。 中国は海南島に固有のランで、ミツバチの警報フェロモンを真似た匂いを出し、その天敵であるスズメバチをおびき寄せて送粉してもらうらしい。 世界で約3万種…

島に侵入した外来アリが固有鳥類による種子散布を阻害する?

植物の果実がしばしば色鮮やかに目立つのは、動物に食べてもらってその中に含まれる種子をよそに運んでもらうためでしょう。とくに、鳥は、さまざまな植物の果実を食べ、その移動能力の高さから、優秀な種子散布者といえます。 インドネシアの海洋島・クリス…

捕食性カタツムリ・ヤマヒタチオビ

低気圧(ハリケーン Felicia)の影響はまだ続いているようです。湿度が高くて、日本の梅雨のようです。しかし、カタツムリやナメクジたちにとっては絶好の天候で、屋外にはたくさんのカタツムリやナメクジが見られます(もちろん外来種ばかり)。特にアシヒ…

地上を徘徊するコウモリ

いつも更新を楽しみにしているのが、ナショナルジオグラフィック(National Geographic)のサイトです。最近の記事で、「“歩くコウモリ”の化石が定説を覆す?」というのがありました。 ニュージーランドには、何度か述べているように、コウモリを除く哺乳類…