日本産陸上発光動物一覧

 ノーベル賞の対象ともなったオワンクラゲの発光物質の研究に見られるように、海産の発光動物はよく知られています(参考:wikipedia生物発光」)。陸上では、ホタルの仲間が多くの種類で知られ、日本でもゲンジボタルヘイケボタルというように夏の風物詩ともなっています。実は、陸上の動物でも、ホタルの他に発光動物が知られています。以前紹介したヒカリコメツキは日本には分布しませんが、キノコバエ、イボトビムシヤスデ、ジムカデ、ミミズといった多様な動物群で生物発光が見られることはあまり知られていないように思います。ということで、日本産陸上発光動物についての英文総説を読む機会があったので紹介しておきます。


 日本産の陸上発光動物として、昆虫類ではホタル51種、ツノキノコバエ2種、イボトビムシ1種、多足類ではヤスデ1種、ムカデ1種、ミミズでは2種、合計58種が生物発光する種として記録されている。



昆虫綱(INSECTA)
鞘翅目(Coleoptera)
ホタル科(Lampyridae)およびオオメボタル科(Rhagophthalmidae→Phengodidae)「日本産ホタル科の全リスト」を参照(ただし以下の1種はのぞく)


Pyropyga sp. 分布:本州(東京、埼玉、神奈川)、北米(?)


ホタル類以外は以下の通り


双翅目(Diptera)
ツノキノコバエ科(Keroplatidae)
ツノキノコバエ亜科(Keroplatinae)
52. ニッポンヒラタキノコバエ Keroplatus nipponicus (Okada, 1938)  分布:北海道、本州、八丈島
53. メスグロヒラタキノコバエ Keroplatus biformis (Okada, 1938)  分布:北海道、本州、極東ロシア


粘管目(Collembola)
イボトビムシ科(Neanuridae)
54. アカイボトビムシ属の一種 Lobella sp. 分布:本州(東京)


倍脚綱(DIPLOPODA)
フトマルヤスデ目(Spirobolida)
カグヤヤスデ科(Spirobolellidae)
55. タカクワカグヤヤスデ Paraspirobolus lucifugus (Gervais, 1836)  分布:熱帯(沖縄本島、台湾を含む)


唇脚綱(CHILOPODA)
ジムカデ目(Geophilomorpha)
オリジムカデ科(Oryidae)
56. ヒラタヒゲジムカデ Orphnaeus brevilabiatus (Newport, 1845) 分布:熱帯・亜熱帯(沖縄本島、台湾を含む)


貧毛綱(OLIGOCHAETA)
ナガミミズ目(Haplotaxida)
ムカシフトミミズ科(Acanthodrilidae)
57. ホタルミミズ Microscolex phosphoreus (Dugès, 1837) 分布:本州、四国、九州、欧州、北南米


フトミミズ科(Megascolecidae)
58. イソミミズ Pontodrilus litoralis (Grube, 1855)  分布:広域分布(本州、九州を含む)


文献
Oba Y et al. (2011) The terrestrial bioluminescent animals of Japan. Zoological Science 28:771-789.


 日本産陸上発光動物のリストと和名、シノニムリスト(かつて使用されてきた学名などを整理)、DNAバーコーディングデータに加え、各種が写真入りで解説されているのが良い感じです。発光動物に関わる歴史や背景、生態など多方面な解説もあって、なかなか興味深い総説論文です。ただし英文で書かれているので、日本の一般の人向けとはいえないかもしれません。いずれ日本語でも詳細な解説が出ることを期待しています(すでに出ているかもしれませんが)。