メクラヘビの生物地理

ナショナルジオグラフィック ニュースから
新種のメクラヘビ、生息分布の謎に迫る


 ミミズそっくりの小型(せいぜい全長20cm)のヘビ、メクラヘビ類は、地表や地中にいるアリやシロアリの卵や蛹などを食べると言われています(もちろん人に危害は加えない)。普段はめったに姿を見ないのですが、温暖な地方で石や倒木を起こしているとしばしば目にします。現在は、南極をのぞくすべての大陸に分布していますが、その起源はどこにあって、どのように世界中に分布するようになったのかが明らかになりつつあります。


 3科あるうちの最も大きな科であるメクラヘビ科(Typhlopidae)から主に96種をサンプリングして分子系統解析を行い、その起源を調べました。メクラヘビの祖先は、かつて存在した超大陸ゴンドワナに生まれ、大陸の分断とともに分布がわかれていったと推定されました。また、インド亜大陸マダガスカルがアフリカ大陸と分断した後に、インド+マダガスカルであらたな種群が進化し、これがさらなる陸地の分断だけでなく、海洋をこえて他の陸地へと分散した可能性があるそうです。メクラヘビという飛べない動物でも、流木などの“筏”に乗って遠く海をこえて分散した可能性を指摘しているわけです(参考:分散/分断分布論争、再び)。



島の外来種ブラーミニメクラヘビ(マウイ島にて)


 とはいえ、ハワイや小笠原のような孤立した海洋島にはメクラヘビ類が到達することはできませんでした。現在ではいずれもブラーミニメクラヘビRamphotyphlops braminus)という外来種が分布しています。本種は、雌のみで繁殖する単為生殖をするため、外来種として定着しやすい性質をそなえています。また、以前少し飼っていたことがあるのですが、飢餓耐性が比較的高いように感じました。つまりこれは、資材や土壌に紛れて生きたまま運ばれやすいだけでなく、流木といった筏に乗って海を越えやすい性質なのかもしれません。


文献
Vidal N et al. (2010) Blindsnake evolutionary tree reveals long history on Gondwana. Biology Letters online published.