ハワイ諸島はつながっていたか?

 他の陸地との結びつきのない海洋島では、海をこえた分散(dispersal)によって生物相が形成されます。しかし、海洋島でも、島間をつなぐ陸橋が途切れたり、また島が複数の島に分断(vicariance)されることもありえます。


 ハワイ諸島を例にあげましょう。現在ハワイ島(Big Island)の近くにあるホットスポットと呼ばれるマグマの噴出口より島が形成され、プレートに乗って北西方向に移動します。そのため、ハワイ諸島は、ハワイ島から北西方向にむかって、複数の島が連なっているわけです(参考:ハワイ諸島の形成史)。しかし、下図にあるように、マウイ島、カフォラヴェ島、ラナイ島、モロカイ島の4島は以前、(現在のハワイ島よりも)大きな島を形成しており(80万から220万年前)、あわせてマウイ・ヌイと呼ばれています。このマウイ・ヌイ(今のモロカイ島)は、さらに西にあるオアフ島と陸橋によって結ばれていた時期があるとも言います。



ハワイ諸島Googleより)(海の色が薄い場所ほど浅く、濃い場所ほど深い)


一方で、ハワイ島とマウイ・ヌイ、またオアフ島とカウアイ島との間が陸続きになっていたという証拠は全くありません。マウイ島とハワイ島とはかつてはわずか15kmしか離れていなかったとはいえ(現在は50km離れている)、深い海峡で仕切られており、完全につながったことはないと考えられています。


つまり、島間で近縁種が分布している時、陸続きになったことのない場合は海を超えた分散が主要因ですが、陸続きになったことのある場合は、分散と分断の両方の可能性があります。


また、島内でも火山噴火の溶岩により、生息域が分断されることもよく知られている現象です。


つまり、海洋島においても、分散モデルだけでなく分断モデルも重要な代替仮説の一つということです(参考:分散/分断分布論争、再び)。


文献
Ziegler AC (2002) Hawaiian Natural History, Ecology and Evolution. University of Hawaii Press, Honolulu, Hawaii, USA.


Nelson G (2006 )Hawaiian vicariance. Journal of Biogeography 33: 2154-2155.


Holland BS, Cowie RH (2006) Dispersal and vicariance in Hawaii: submarine slumping does not create deep interisland channels. Journal of Biogeography 33: 2155