島のイグアナといえば、ガラパゴスのイグアナたちを思い浮かべてしまいます。ガラパゴスのイグアナたちの起源は最も近い大陸である南アメリカ大陸であると考えられています(ガラパゴスは南米大陸から約1000km西にあります)。実際、イグアナの仲間は現在、北米、中米、南米の新大陸に主に分布しています。
ところが生物地理に例外はつきものです。南アメリカ大陸から西に8000km離れたフィジーやトンガの島々にも分布するのです。
フィジーイグアナ(Brachylophus fasciatus) Wikipediaより
なぜ新大陸から遠く離れた島にイグアナが分布しているのでしょう。可能性として二つが考えられています。
(1)旧大陸にももともとイグアナが分布していがほとんど絶滅してしまった
(2)8000kmの海を渡ってやってきた
(1)これまで、太平洋の島々でイグアナの化石が見つかっているのはフィジーとトンガだけです。また、イグアナに似た爬虫類化石はアジアにも見つかっているものの、フィジーイグアナ類に直接関連しているという証拠は全くありません。もしアジアにイグアナがいたとして、どのようにフィジーにやってきたのでしょうか。実はフィジーはかつて陸橋によってニューギニアなどと陸続きになっていたという説があります(島孤沿いに:下図参考)。海洋島には通常分布しない在来のカエル類がフィジーに分布しており、その近縁種がニューギニア島に分布するというのも陸橋があったことを示唆しているそうです(ただし、文献によっては陸橋の存在を否定し海洋島としているものもあります)。しかしたとえアジアに分布していたとしても、フィジーとトンガ以外ですべて絶滅し、化石証拠も見つかっていないということからこの仮説は少し苦しいかもしれません。
フィジーとトンガ周辺(画像はGoogleより):薄い色ほど浅い海を示し、過去に陸続きになっていた可能性がある。島弧(island arc)沿いにニューギニアとつながっていた・・・?
(2)ガラパゴスウミイグアナは海岸に生息し、海にもぐったり泳ぐことができます。しかし、これは例外で、ほとんどのイグアナは陸上で生活しており、海を長距離泳ぐことはできません。よって、海を渡るにはなんらかの「天然の筏」に乗ってやってくる必要があるでしょう。イグアナの一部の種では卵期間が数ヶ月におよぶものがあり、卵が巨大な倒木上に乗って海を渡ってきた可能性がなくもありません。
このように謎につつまれたフィジーイグアナ類は、これまで絶滅した2種と現存する2種しか知られていませんでした。しかし、最近になって、分子系統解析によって新たな種(隠蔽種)が見つかり少し話題になりました。