今日は午後に Ph.D. Defense(博士論文公聴会)がありました。
ハワイ諸島にはもともとアリがいなかったことが知られていますが、現在では多くの種が侵入し(参考)、在来生態系に影響を与えていると考えられています。その影響の一つとして、海鳥のヒナがアリに襲われるという問題があるそうです。
ツヤオオズアリの兵アリと働きアリ(いずれも同じ種:兵アリの形態からBig-headed antsと呼ばれている)
外来アリ類が海鳥の繁殖に与える影響を明らかにするために、オアフ島の沿岸にある4つの小さな島(すべて面積は 5 ha 未満)において、アリ除去実験が行われた。2つの島ではツヤオオズアリ(Pheidole megacephala)が、もう2つの島ではアカカミアリ(Solenopsis geminata)が優占しており、それぞれ1つの島で殺虫剤を使って除去を行い、もう一つの島を対照区として、除去前後のオナガミズナギドリ(Puffinus pacificus)のヒナの生存過程を調査した。
使用した殺虫剤(AMDRO)は、ツヤオオズアリには効果的で根絶に成功したのに対し、アカカミアリには密度減少には成功したものの根絶には失敗した。ツヤオオズアリはオナガミズナギドリのヒナを襲うことはほとんどなく生存過程に影響は与えていなかったのに対し、アカカミアリはしばしばヒナを攻撃していた(ヒナの脚を刺したりかじったりしていた)。つまり、アカカミアリの密度を減少させた島では、対照区の島に比べて、卵のふ化率や巣立ち成功率が上昇していた。
アカカミアリは、Fire antsと呼ばれ、人を刺すことが知られています(日本でも沖縄と硫黄島に侵入しています)。鳥のヒナも同様に刺されるのですが、これはアリが積極的に襲っているのか、コロニーの防衛目的で刺しているのかは、明確にはされていませんでした。
海鳥以外にも、他の節足動物相に与える影響についてのデータもあったのですが、これについては、近いうちに論文が発表されることでしょう。