どこまで復元すべきか

ナショナルジオグラフィックニュース
絶滅した動物は復活させるべきか?


 DNA情報から絶滅種の復元を目指すという映画「ジュラシックパーク」にも登場したアイデアについて、より現実的に考えた場合の議論です。これは何も絶滅種の復元だけに限らず、生態系の復元や保全生物学でも常に考えるべき問題でしょう。


例えば、小笠原の自然を復元する時でも、どの段階、どの時代の生態系の回復を目指すべきでしょうか。外来種を完全に排除(根絶)するのが目標でしょうか。それとも、とりあえずは侵略的な外来種のみを排除するのが目標でしょうか。それとも、人が入植する以前の状態を目指すべきでしょうか。人が入植する前には、海鳥の繁殖地だったはずで、人を島から追い出さない限りはその時代への復活は難しいでしょう。


そもそも生態系には常に一定の状態(平衡状態と呼ぶ)があるのでしょうか?


古くは、ある気候帯や地域には放っておくと遷移が進んで一定の森林(極相林)が形成されると考えられてきました。しかし近年の研究によって、必ずしもそういう平衡状態が期待されないことがわかってきました。つまり、時間の変遷とともに景観もまた変わってきてるということです。


種の保全についても、かろうじて野生絶滅が免れている状態を維持することでとりあえず満足するか、はたまた本来その種が持っている生態系機能を発揮できるほどの密度にまで回復する努力するか、その達成目標によって大きく異なります(参考:オオコウモリによる種子散布:密度が減ると機能しない)。


生態系の保全や復元を目指す時、共通認識として目標が設定されていないと、その成果に対する評価は人によって全く異なってくることになるでしょう。