妖精の輪と悪魔の庭

AFPBB Newsより
『「妖精の輪」、実はシロアリが原因』



Fairy circle(Wikipedia より:by Thorsten Becker)


 アフリカの草地に「妖精の輪(Fairy circle)」と呼ばれる、円形の「裸地」が出現する現象は古くから知られていたそうです。これはシロアリの一種 Psammotermes allocerus による「除草」によるものであるという仮説がこれまであり、最近サイエンスに出版された論文ではその仮説を支持しているということです。シロアリは草本の根っこを食べて結果枯らしてしまうそうです。下記のリンクに「妖精の輪」の画像がたくさん見られますが、これらがシロアリによって形成されたと思うと感慨深いものがあります。


Creators Of Mysterious African 'Fairy Circles' Found


Juergens N (2013) The biological underpinnings of Namib desert fairy circles. Science 339:1618-1621.


このような独自の景観を作り出すのがシロアリというのも興味深いですが、熱帯林やアフリカ・南米の乾燥地でシロアリが重要な生態系機能を担っているのはよく知られたことです。


そしてシロアリとは全く分類群は異なりますが、アリもまた重要な生態系機能を果たす昆虫です。多種多様な樹木が生育するはずのアマゾンの熱帯林の中に、特定の樹木(アカネ科の Duroia hirsuta)のみが生育する「悪魔の庭(Devil's garden)」と呼ばれる林分が知られています。このような場所は、D. hirsutaと共生関係にあるコンボウアリ属の一種 Myrmelachista schumanni が他の樹種に蟻酸を注入し枯らしてしまうことで形成されることが知られています。


Frederickson ME et al. (2005) ‘Devil’s gardens’ bedevilled by ants. Nature 437 495–496.


Frederickson ME, Gordon DM (2007) The devil to pay: a cost of mutualism with Myrmelachista schumanni ants in ‘devil’s gardens’ is increased herbivory on Duroia hirsute trees. Proceedings of the Royal Soceity B 274: 1117-1123.


 ある種の生態系を作り出す生物を生態学者は「エコシステム・エンジニアecosystem engineer)」と呼ぶことがありますが、シロアリやアリはまさにその定義に当てはまる虫たちでしょう。