島固有の捕食者がもたらす生態系サービス

 昨今「生態系サービス(ecosystem service)」という用語が一般的にも普及しつつあります。生態系が保持している機能から人々がいかに恩恵をうけているかを定量的に査定したものです*1


 島の固有種が生態系サービスを提供しているかもしれないという興味深い論文が最近発表されました。


 インドネシアスラウェシ(セレベス島)のカカオ植林地において、固有のセレベスヒキガエルIngerophrynus celebensis)が外来種であるアシナガキアリ(Anoplolepis gracilipes)を主に捕食することで、在来アリ相を保全し、カカオの害虫や病原菌を抑制しうるという生態系機能が報告されています。アシナガキアリは島の在来アリ相ばかりでなく、生物間相互作用を攪乱することで最近注目されています(参考:クリスマス島のお護り 固有のカニ)。


しかし、農薬の大量使用はヒキガエルに負の影響を与えるので、ヒキガエルの生態系機能はカカオの収穫にとって重要かもしれないということです。


 島での農林業を発展させることと、島の在来生態系を保全することは一見矛盾することですが、途上国ではこの両方の観点をうまく考慮する必要があるでしょう。


 つまり、この研究では、(1)外来種による島嶼生態系への影響、(2)在来種による外来種を抑えるという生物的抵抗(biotic resistannce)、(3)熱帯林の植林地化、(4)在来種による生態系サービス、といった最近注目されているトピックをうまく融合して論じています。


文献
Wanger TC et al. (2010) Endemic predators, invasive prey and native diversity. Proceedings of the Royal Society B, online published.

*1:ただし、うがった見方をすれば、一般的に語感が心地よい言葉をかかげてその重要性を訴え、研究費をとろうという政治的な用語といえなくもありません。