私自身、人と話すのも、講演するのも好きな方だと思います。ただ、セミナーや講演会の準備にはそれなりの時間がかかり、限られた時間を自身の研究など(野外観察、行動実験、論文執筆)にもっと費やしたいので、外部からの依頼には断ることが多くなっています。そもそも大学での講義を毎年多数こなす必要があり、講演したい意欲が低下しているのかもしれません。
ただ、外部での講演やセミナーでの発表というのは、研究者にとっての重要な仕事の一つと考えられています。一般市民向けは自身の研究分野のアウトリーチ(広報)活動であり、研究者向けでは自身の研究成果の普及や発展につながるものです。
学生時代はセミナー発表でのスライド作りはそれなりに楽しんだり時間をかけていました。しかし、外でのセミナーや講演については、依頼もほとんどなかったですし、特別に準備したという記憶はありません。仕事についてからも、我流で適当にやっていました。しかし、十数年前に、より良い発表をしてみようと、1年くらいかけて真剣に口頭発表やスライドについて研究しました。なぜ、良い発表を目指すようになったのか、その動機は覚えていないのですが、海外留学から帰国し、何か新しい取り組みをしようと思っただけかもしれません。
発表技術を磨くと決めたその1年の研究の結果たどりついた技術として、シンプルなスライド作りにあります。これは私自身のオリジナルでもなんでもなく、いろんなブログ記事だったり、ハウツー本だったりで繰り返し述べられていることです。
私が大学生だったころは、スライドを現像に出していた時代は終わりつつあり、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)やダイレクトプロジェクターが主流の時代でした。その後、大学院生になって、PowerPointなどによるプロジェクターでの発表に移行し、2020年のコロナ禍になってZoom等によるオンライン発表が増えました(ただし、PowerPoint等のアプリを使っている人が多いのは変わりません)。
スライドを現像に出していた時代、OHPの時代というのは、スライド1枚にそれなりの金銭的な、または時間的なコストがかかっていたので、1枚のスライドになるべく多くの情報を詰め込む傾向がありました。しかし、PowerPointの時代になると、マウスのクリックひとつでコストなしで簡単に新しいスライドを追加することができるようになりました。同じスライドを複製して少し違うスライドを作ることも非常に簡単です。このようにスライド1枚のコストがゼロになったにもかかわらず、昔の名残か、1枚のスライドに詰め込む情報が多いままが現状です。研究室では代々、先生や先輩の研究発表を聴いて、その真似をして卒論や修論発表のためのスライドを作っていくので、昔のやり方がずっと保持されてきたのだと私は考えています*1。
話はそれますが、学生時代、所属研究室には「104」と呼ばれる実験室がありました。しかし、「104」という部屋に行っても、プレートにもどこにも「104」という番号は書かれていませんでした。どうも、以前は「104」という部屋番号だったのが、建物の改修によってその番号は消え、新しい部屋番号に変更になったそうです。しかし、それまで使っていた学生たちは急に変わった番号を使わずに相変わらず「104」と呼んでいたので、新しく研究室にやってきた学生も「104」と覚えてそれを後輩へと伝えていったというわけでした。
話は戻って、発表スライドも「104」状態で昔のまま1枚のスライドにはたくさんの情報が入ったままのごちゃごちゃしたものが続いてきたといえると思います。1枚のスライドにたくさんの文章や図が入った状態で、注目する場所にポインターをあてて説明するくらいなら、新たなスライドに切り替えて話した方がわかりやすいと思います。
シンプルなスライド作りにこそ、わかりやすい発表につながるという言説に賛同します。
・スライドには1つの情報(図)しか載せない。
・文章(1文)は2行にわたらない(体言止めなどを使用)。
・箇条書きでも4行以上は記さない。
・文字や図に余計な囲いは使わない
以上を徹底することでかなりシンプルなスライドができます。
また、iPhoneを発表する際に故スティーブ・ジョブスが行ったプレゼンテーションを研究発表にも十分手本になると思います(これも多くのプレゼン指南本でも触れられています)。私はMacintoshを使用しており、プレゼンソフトKeynoteがもともと入っていたので、スティーブ・ジョブスの発表構成やフォーマットを参考にしました。
ジョブスのプレゼンを観てもらったわかるように、写真をうまく切り抜いてスライドに貼り付けているところもポイントです。そのような写真加工機能が、KeynoteにもPowerPoint自体にも備わっています。Photoshopや類似ソフトで加工してから貼り付けても良いと思います。
また、トラジッション(スライドの切り替え)やアニメーションを使用するのも、意外な動きによって聴衆の興味を引き出すための技術として使えます。もちろん、多用しすぎないような配慮も必要でしょう。
そして最後に最も重要なのが発表練習です。大事な発表では、実際にスライドを送りながら声に出して少なくとも5回は練習すべきです。練習しているうちにわかりにく、話しにくいスライドは改訂することもできます。発表原稿を作っても良いですが、練習しているうちにこなれた話し言葉になります。最終的には原稿を読まなくてもスラスラと話せるようになるまで練習するべきと思います。
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