ゴミを食べるコアホウドリ

 多様性の保全外来種関係などでいつも参考にしているのが、Conservation Magazine の Journal Watch Online です。最近出版された論文をブログ形式で紹介しています。ナショナルジオグラフィックに比べて、保全などに関係したちょっと暗い話題が多いのですが、いろいろと勉強になります。


 さて、その中にあった最近出版された論文紹介。

 High-Junk Diet(粗悪な食事)


 オアフ島のカエナポイントでは、長期間かけてコアホウドリの繁殖を人工的に誘致してきました。最近、小笠原の聟島諸島でも類似した手法を使ってアホウドリの繁殖誘致計画が行われつつあります。オアフ島のコロニーは数十ペアを含むまでに成長し、最近では、メス同士が強力して子育てを行うという興味深い発見もありました(参考:オアフ島のコアホウドリ)。


今回紹介されている論文では、ハワイで繁殖するコアホウドリが、雛にあたえる餌の中にプラスチックやビニールなどのゴミが高頻度で含まれていることを報告しています。ゴミを食べた雛が死んでしまうこともあるようです。



コアホウドリの雛の死体(胃の中にゴミ)
Young et al. 2009より


調査は、前述のオアフ島と、2000km離れた北西ハワイ諸島のクレ環礁で行われました。調査の結果、クレのコロニーの雛は、オアフ島の雛に比べて約10倍ゴミを含んだエサを与えられていることがわかりました。それぞれの島でコロニーを形成するコアホウドリの親は、異なった場所でエサを採っているものの、いずれもゴミに汚染された場所を含んでいます。どうも、オアフ島で繁殖する個体は慎重にエサを選んで雛に与えているようです。これは、オアフ島のコロニーでは75ペアからなるのに対し、クレは3900ペアからなる大規模なコロニーであるため、ミッドウェイやクレ周辺ではエサをめぐる競争で、質の良い(ゴミが含まれていない)エサを選択する余裕がないのかもしれません。


 北西ハワイ諸島コアホウドリがエサをとる場所のゴミは、日本を含む東アジアに由来している可能性が高いそうです。捨てられたゴミが遠く離れた無人島の海鳥たちに影響を与えているかもしれないと考えると、ちょっと暗い気持ちになります。


原著論文
Young, L. et al. (2009). Bringing home the trash: Do colony-based differences in foraging distribution lead to increased plastic ingestion in Laysan Albatrosses? PLoS ONE, 4(10): e7623.


追記:コアホウドリのエサの分析は、雛が残した未消化物をもとに行っています。エサとしてはイカのくちばし(beak)などが残っていて、ゴミとしては海洋に浮遊するプラスチック製のもの、はっきりわかるものとして釣り具に関連するものがあるようです。


追加参考ページ
http://www.hawaiianatolls.org/research/June2006/albatross_death.php