種苗会社と外来植物

 外来植物はどのように持ち込まれ、定着するのか。人の活動が強い影響を与えているのは間違いないですが、具体的な活動を分析するのは重要なことです。 


最も考えられる道筋として、園芸植物として売られ、野外へ逸出し定着することで侵略的な外来植物になることです。


 フロリダ南部のとある種苗会社(Royal Palm Nurseries)の園芸植物の売買について、1887年から1930年の記録(43年のうち32年の記録)を使って、どれくらいの期間売られていた種類が帰化(逸出し定着)しやすいのか、侵略的になりやすいのか、またどのような特性をもつ種が帰化し侵略的になりやすいのか等を解析した。


 結果、1903種の在来でない植物のうち、15%が帰化していた。その帰化率は、売買されている期間が長いほど増加した。つまり、最終的に帰化しなかった種の売買期間は平均6.8年に対して、帰化種は平均14.8年、帰化後侵略的になった種は平均19.6年にわたって売買されていた。30年以上にわたって売買された種のうち、70%は最終的に帰化していた。


 意外なことに、初期に売買されはじめた種類は、後に売買された種に比べると帰化する率は低かった。これは、フロリダでの生育に適さない多くの種が初期に売買されたというその種苗会社特有の方針によるのかもしれない。


 アフリカとアジアの両方の凡熱帯に分布する種が、他の小地域に分布する種よりも帰化する率が高い傾向があった(42%)。また、生活系によって帰化率が大きく異なり、最も高いのが水草(36.8%)、次に蔓植物(30.8%)と続いた。さらに、サトイモ科(Araceae)、キョウチクトウ科(Apocynaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、クワ科(Moraceae)、モクセイ科(Oleaceae)、クマツヅラ科(Verbenaceae)が帰化率が高い分類群だった。


 多要因を考慮した解析の結果(information theoretic model selection)、売買された年数単独か、もしくは最初に売買された年をあわせた要因が、帰化率の強い指標となっていた。


文献
Pemberton RW, Liu H (2009) Marketing time predicts naturalization of horticultural plants. Ecology 90: 69-80.


 長い期間売買されるということはつまり、何度も多くの個体数を導入しているという意味で導入圧(propagule pressure)を高めていることになるでしょう。当然ながらその結果帰化率が高まることは予想できることです。ただ、古い種苗会社の売買記録を使って、おおよそ何年売買されていたという具体的な数字が求められたということにこの研究のアイデアのユニークさと意義があるのでしょう。