ハワイはうつも自殺も少ないか?

 珍しく社会情勢の話題でも。

 日本の自殺者数やその割合の2009年データが公表されたようです。


警察庁
平成21年中における自殺の概要資料(PDF


これによると、2009年の1万人あたりの自殺者数は25.8人でした。しかも自殺の原因で最も多かったのが健康問題で、特に「うつ病」があらゆる項目の中でトップだったそうです。


 うつ病イコール自殺に直接結びつくわけでは全くありませんが、潜在的うつ病やそれに近い精神的な悩みを抱えている人が多いのは確かでしょう。実際、大学でも研究所でも、どこの学校でも職場でも、うつ病になって大学や職場にこなくなる人が一定数います。


ところが、ハワイに来て、それほど交友関係が広いわけでもありませんが、身近に大学に来なくなったという人がみあたりません。友達の多そうな知り合いに聞いても、そんな人はいないようです。やっぱりハワイのような温暖で快適な気候が人の精神状態にも良い影響を与えているのかもしれません。2日以上ずっと雨だったり曇りだった日はほとんどありませんし(もちろん、ホノルルの低地のことで、場所によってはずっと雨の場所もあります)。


 統計的なデータを調べてみたら、やっぱりハワイはうつ病(depression)や自殺(suicide)が少ないという傾向があるようです。ちょっと古いデータですが州ごとのランキングをみると、うつ病率では2番目に低く、自殺率は9番目に低いという結果です。


うつ病指標ランキング(低い順)

1. South Dakota
2. Hawaii
3. New Jersey
4. Iowa
5. Maryland
6. Minnesota
7. Louisiana (pre-Katrina)
8. Illinois
9. North Dakota
10. Texas


48. Rhode Island
49. Kentucky
50. West Virginia
51. Utah


うつ病指標とは、いくつかの要因を組み合わせて作られたもの。そこで、それぞれの細かい要因でもハワイの順位を調べてみると・・・(もちろん低い順)


12-17歳での大うつ病(major depression)経験者の割合(2004と2005年の年平均)
全州平均:8.95%
ハワイ:8.78%(18位)


18歳以上で大うつ病(major depression)経験者の割合(2004と2005年の年平均)
全州平均:8.05%
ハワイ:6.75%(1位)


18歳以上で重度の精神疾患(serious psychological distress)経験者の割合(2004と2005年の年平均)
全州平均:11.63%
ハワイ:9.81%(1位)


18歳以上で過去30日間での気分がすぐれない日数(2006年時)
全州平均:3.31日
ハワイ:2.63日(6位)



自殺率ランキング(10万人のうちの自殺者数:低い順)

1. District of Columbia: 5.3
2. New York: 6
3. Massachusetts: 6.4
4. New Jersey: 6.8
5. Rhode Island: 7.5
6. Illinois: 8
7. Connecticut: 8.2
8. Maryland: 8.9
9. Hawaii: 8.9
10. Nebraska: 9.5


48. Montana: 18.7
49. New Mexico: 18.8
50. Nevada: 19
51. Alaska: 23.1


資料
Thomson Healthcare (2007) Ranking American's Mental Helath: An Analysis of Depression Across the States. (PDF)


 日本と米国では、うつ病に対する考え方や基準も違うので、その比率を単純に比較することができないのは残念です(数値的には米国の方がうつ病経験者の率は高くなります)。しかし、10万人あたりの自殺数では、日本の25.8人は、ハワイのおよそ3倍ということです*1


 しばしば「ハワイでうつ病を治そう」という広告をみますが、あながち間違ったことを言っているわけではないのかもしれません。ただ、物価も家賃も高いので簡単には移住できないのが難点です。

*1:もちろん、うつ病と自殺との因果関係に日米で差があるかもしれませんが。