被子植物のうち87.5%の種が動物媒

 そろそろスギ花粉が飛散する季節になってきました。スギはご存知のように風によって花粉が運ばれる風媒花をつけます。温帯から寒帯にかけて多く分布する針葉樹などの裸子植物では、風媒の種がほとんどです。一方、被子植物では、風媒の種の割合はそれほど高くありません(他に水草の中には水媒というのもごく一部あります)。多くが昆虫などの動物によって花粉が運ばれる動物媒です。



では、被子植物約35万2千種のうち、昆虫や鳥によって花粉媒介される種はどれくらいいるのでしょうか? 


これまでさまざまな推定値(およそ67%から96%)があげられてきましたが、最新の推定結果を紹介しておきます。


 まず温帯から亜熱帯、熱帯にかけての42(箇所)の植物相のデータ(既存研究)を使って、動物媒の種の割合を調べた。その結果、動物媒の割合は、温帯で平均78%、亜熱帯で平均83%、熱帯で平均94%、世界平均85%だった。つまり352000種のうち推定299200種が動物媒ということになる。


しかし、熱帯の方が温帯や亜熱帯よりも被子植物の種数は多い。より高い精度で推定するにはこれを考慮する必要がある。そこで、被子植物は熱帯に50.5%、亜熱帯に27.7%、温帯に21.8%分布するという推定値を使って、地域ごとの動物媒の種数を推定しその合計(世界)値を求めた。


(A) 熱帯における被子植物の動物媒の種数:352000 × 0.505 × 0.939 = 166916.64
(B) 亜熱帯における被子植物の動物媒の種数:352000 × 0.277 × 0.830 = 80928.32
(C) 温帯における被子植物の動物媒の種数:352000 × 0.218 × 0.784 = 60161.024
温帯における被子植物の動物媒の種数 = (A) + (B) + (C) = 308005.984


つまり、被子植物のうち推定208006種(全体の87.5%)の花粉が動物によって媒介されている。


文献
Ollerton J et al. (2011) How many floewring plants are pollinated by animals? Oikos, online published.


 被子植物の花の色や形の美しさは、もちろん人の目を楽しませるためではなく、もともと昆虫や動物に訪れてもらうためなのです。