動植物研究者の女性比の比較

 動物・植物学部合同のセミナーがスタートしました。動物学部の大学院生によるPh.D. Defenseで、サンゴの細胞内共生系の浸透圧調整遺伝子発現について。方法を含めて全く馴染みのない研究だったので、英語の専門用語も含めてほとんど理解できませんでした。ただ、あまりに分野が違うのは他の人も同様なようで、質問もわずかでした。


 また、ちょうど新学期ということで新しい大学院生が簡単な自己紹介をしていました。アメリカ本土と地元(オアフ、ハワイ島)の出身者が大半でした。必ずしも全員が出席しているわけではないにせよ、女性の割合が高かったように感じました。


ちょっと男女比が気になったので、インターネットを使って性別がわかる範囲で調べてみると、ハワイ大学の動物学部の教員は18人中女性は4人(22%)、植物学部は14人中4人(29%)、大学院生の女性の割合は動物学部で43%、植物学部で52%でした(両学部あわせて総数は100名以上、ただし性別がわかった範囲で割合を算定)。


教員に女性が少ない割には大学院生の男女比はほぼ1:1と見て良いでしょう。教員はともかく、日本の大学院ではそんなに高くなかったような気がします。


同様に(インターネットで性別がわかる範囲で)日本でのデータを調べてみました。ハワイ大と同規模の教員数をもち、動物学と植物学という古典的?な区分を残している大学といえば京都大学しか思いつきません。動物学教室の教員13人のうち女性は1人(8%)、植物学教室14人中3人(21%)、大学院生の女性の割合は動物学教室で20%、植物学教室でも24%でした。


教員の割合はハワイ大の方がやや高いですが(特に京都の動物学の女性教員は少なすぎですが)、学生では京都大の女性の割合がかなり低いといえるでしょう。


教員
動物学:ハワイ22%、京都8%
植物学:ハワイ29%、京都21%


大学院生
動物学:ハワイ43%、京都20%
植物学:ハワイ52%、京都24%


 ハワイ大では、学生の男女比に比べ、教員が男性に偏っているのは違和感があります。これは、米国では教員の定年がないので、退職しないと新しい教員を採用できないと考えれば、旧体制からの移行に時間がかかっているのかもしれません。しかし、潜在的な求職者の男女比が1:1であるならば、この男性への偏りは無視できないでしょう。


 そういう意味では昨今提起されているような女性研究者(教員)の数を増やす措置が大事になってくるのかもしれません。しかし、それは潜在的な求職者の女性比がそれなりに高い場合であるのが条件でしょう。


そういう意味で日本の文部科学省の「理・工・農系の女性研究者を採用したらその研究機関には○○○万円の予算をつける」というは、あまり上品な政策ではない気がします。
 

女性教員や研究員の定員枠をきっちりと設定するのであれば、潜在的な求職者の割合を考慮しないと不公平になりうるでしょう。無理矢理に女性の定員枠をつけてしまうなら、もっと前の段階、つまり大学院生数とか学部生数でも同様の設定をしないと根本的な解決にならないと思います*。


共学の高校で男女の定員数が決まっていることが多いのに、大学では男女の定員数の決まりがほとんどありません。もし、大学入試や大学院入試で女と男の定員数をあらかじめ決めてしまったら、これまで女性の割合が低かった研究分野も高くなるかもしれません。男女に学問分野の性差がないと考えるなら、大学や大学院入試でも適用可能かもしれません(いきなり変えると女性の定員割れが起こる分野が多くなるだろうけど)。


もちろんそんな政策を現実にすべきだと思っているわけではありません。


個人的には、肉体や脳などの性差を考慮すれば、(一般化して)それぞれに得手不得手、好き嫌いの学問分野があっても不思議ではないと感じています。


*もっとも、根本的な解決を目指したいわけではなく、とりあえず対策をしてみますというお役所的な考えなのかもしれません。それぞれの役職で、任期中に実現可能で数字として成果が出やすいプロジェクトや政策を打ち出すのがお仕事なわけですから。もっとも、研究者も2-5年という短い期間で成果を出さないといけないという意味では強く批判しにくいのです。