論文を投稿して査読者によるコメントをもとに編集者がその掲載の是非を検討するというのが、ピア・レビュー(peer review)と呼ばれるシステムです(参考:査読という仕事 / 査読コメントが辛いわけ)。
論文の掲載が断られなかった(リジェクトされなかった)場合、査読者の指摘に従って改訂した原稿を編集部に再提出することになります。この時、査読者の指示にどのように従ったかまたは従わなかったかを説明するレターを添えます*1。このあと、原稿はどのような過程を経るのでしょうか。これまで論文投稿者として、査読者として以下のパターンを経験してきました。
- 改訂された原稿を編集者(編集長または担当編集者)が読んで十分改訂されているかどうかを判断する。
- 査読者に送らずに受理する。
- 査読者に送らずに却下する
- 改訂をもう一度著者に要求する。
- 改訂された原稿を、もう一度査読者に送って、改訂内容について査読してもらう。この時、査読者は、以前査読した人と同じことが多いが、しばしば別の新しい査読者に送られる。これらのコメントをもとに編集者が判断する。
- 受理する。
- 却下する
- 改訂をもう一度著者に要求する。
再査読は以前と同じ査読者に送られるものだと考えられがちですが、そうでない場合もあります。匿名査読者の場合、最初と同じ査読者だったのか否かが判断しにくいことがあるので混乱しがちです。また、新しく加わった査読者が、以前の査読者の指摘にしたがって改訂されているかを検討する場合もあれば、新たに別の指摘をしてくることもあり、さらに複雑になってくることもあります。
ちなみに、論文の査読システムは、多数決のように民主的に必ずしも判断されるわけではなく、(担当)編集者による独断でも決定されうるのに注意が必要です。査読者によるコメントは、編集者が判断する時の単なる材料にすぎないのです。*2
自然科学は客観的に判断されるべきだと思いますが、論文審査には客観性だけでなく主観性もおおいに入り交じった世界といえるかもしれません。
ちょっと身近で編集者によって振り回された事例があり、思うところあってまとめてみたしだいです。