2009-01-01から1年間の記事一覧

アリのいなかった島(2)海鳥のヒナを襲う外来アリ

今日は午後に Ph.D. Defense(博士論文公聴会)がありました。 ハワイ諸島にはもともとアリがいなかったことが知られていますが、現在では多くの種が侵入し(参考)、在来生態系に影響を与えていると考えられています。その影響の一つとして、海鳥のヒナがア…

ハワイの雨期

結局、8月から10月にかけて特に暑くなることもなく涼しくなることもなく、季節の変化を感じることもありませんでした。ずっと良い天気でした。夜間の室内温度は28から29℃くらい。 しかし、今日は昼前からずっと雨です。どうもハワイは雨期(Rainy season)に…

ゴミを食べるコアホウドリ

多様性の保全や外来種関係などでいつも参考にしているのが、Conservation Magazine の Journal Watch Online です。最近出版された論文をブログ形式で紹介しています。ナショナルジオグラフィックに比べて、保全などに関係したちょっと暗い話題が多いのです…

先祖はどこの国からやってきた?

先日、とある生物のサンプルのミトコンドリアDNAを増やしてシークエンスした結果を、データベースにかけてみるとHomo sapiens と一致してしまいました。つまり、ヒトのDNAを間違って増やして解析してしまった、いわゆるコンタミになるのですが、これを詳しく…

ハワイでキャンプ:絶滅種の再発見をめざして

ハワイマイマイ類(Achatinella)は約100種が知られていますが、その多くが絶滅したと考えられています。特にオアフ島はハワイマイマイの種数が多く(42種)、人による攪乱が最も大きいため、絶滅種(もしくはその絶滅危惧種)が最も多い島でもあります。 他…

熱帯ほど生物の種間関係が深い

生物間の相互作用に関して、観察したり、文献を読んだり、論文を書いたりするのが、私の研究の大きな割合を占めています。最新の Annual Review に興味深い総説が出ていたので勉強してみました。 ほとんどすべての生物で低緯度地域(熱帯)の方が、高緯度地…

コアは複葉と単葉をもつ:適応的な意義は?

ハワイの天然林を構成する樹種として、フトモモ科のオヒア(ハワイフトモモ Metrosideros polymorpha)とマメ科のコア(Acacia koa)が最も代表的です。いずれもハワイにのみ見られる固有種ですが、いずれの島にも分布し、少し山に入ればどこでも見られる樹…

ハワイから分散した植物

ハワイ諸島において、さまざまな生物群が多様に分化し、多くの固有種が生まれてきました。また、多様化した一部の種が他の太平洋の島々に渡り、さらに種分化して多様性が増加するというメカニズムが明らかになりつつあります。 ハワイで多様化したショウジョ…

海南島固有のランはミツバチの警報フェロモンを発する

植物とその受粉を担う動物(ポリネーター)との関係には、しばしば驚くようなつながりがあります。 中国は海南島に固有のランで、ミツバチの警報フェロモンを真似た匂いを出し、その天敵であるスズメバチをおびき寄せて送粉してもらうらしい。 世界で約3万種…

生物的防除の成功率

問題となる外来種の個体群を低密度に抑える(コントロール)するために、原産地から天敵を導入するという(古典的)生物(的)防除は、どれくらいの率で成功しているのでしょうか。 持ち込まれた外来種のうち10%が野外に逸出し、その10%が定着し、定着した…

ハワイの珍奇なる虫たち(7)陸生のヤゴ

ハワイには変わった昆虫がすんでいることが知られています(参考:ハワイの珍奇なる虫たち 1, 2, 3, 4, 5, 6)。そのきわめつけは陸生のヤゴでしょう。 ヤゴといえば、トンボの幼虫で、水の中で生活し、他の昆虫や小さな魚を食べたりする捕食者として知られ…

テニュアトラックではないポジション

(米国の)大学教員におけるテニュアトラックという制度、つまり採用数年後に審査があってこれに認められればテニュア(永久在職権)が与えられるというものです。このテニュアトラックへの募集自体がかなりの競争があるのですが、その後の審査も非常に厳し…

ウォーレスが投稿していた雑誌

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したウォレス(Alfred R. Wallace)*は、動物地理区の境界線の解明(ウォレス線)や、ダーウィン(Charles Darwin)と同時に「自然選択(淘汰)説」を発表した博物学者として著名な存在です。 ダーウィンは裕福な家に生ま…

アーム付きゴミ収集車

米国は環境問題についてはずいぶん遅れているイメージがあります。実際、ハワイの建物内は冬でもクーラーがガンガンかかっているし、トイレには手をふくための紙が大量にあるし、ゴミの分別はほとんどないし、電池はリサイクルしていないし・・・。 さて、日…

生物的防除が落とした影(5)スペシャリストを用いても危険?

今日は研究室のミーティングで論文紹介をすることになったので、最近勉強中の生物(的)防除のリクスに関する論文を紹介してみました。 これまでの事例から、いろいろな種の天敵となるようなジェネラリストを生物防除目的に導入してしまうと、本来ターゲット…

生物的防除が落とした影(4)ハワイでの是非をめぐって

害虫を防除するためにその天敵を放す生物(的)防除(Biological Control、Biocontrol)*は、ターゲットとしない種にまで影響を及ぼす可能性があります。特に、ハワイ諸島のようなもともと天敵が少ない環境下では多数の固有種が、生物防除によって放たれた…

著者数の多い論文ほど引用されやすい?

論文が他の研究者によって読まれ、他の論文で引用されることが科学の健全な流れといえるでしょう。多くの論文に引用されるほどその論文の評価が高まり、執筆者の評価も高まるということになります。 これまで、専門誌に論文が投稿された時、論文著者の母国語…

生物的防除が落とした影(3)タヒチでカタツムリが大量絶滅?

陸産貝類(いわゆるカタツムリ)は、特に島では固有種が多くその移動能力の小ささや分布域の狭さから、世界でも最も絶滅しやすい生物群の一つです(参考:世界で最も絶滅してしまった生物とは・・・)。 絶滅の主要因として、人が島に入植した時代では生息地…

ダーウィンが投稿していた雑誌

自然選択説を提唱したダーウィン(Charles Darwin)は、職業的な研究者(大学教授など)というわけではなく、いわゆる資産家で自宅で研究を行ってきた19世紀の博物学者です。彼の著名な業績の多くは、本という著作物として出版されているわけですが、彼自身…

生態的ネットワーク:最も狭い世間

「世間って狭いなぁ」というほどに、人と人との関係は近い。英語では、「It's a small world」と言われます。例えば、知り合いの知り合いの知り合いをたどっていけば、多くの人はだいたい5人ほどで日本の総理大臣までたどりつけるでしょう。人によってはもっ…

外来種による間接効果

外来種が在来種に影響を与えるというのは、直接捕食したり、干渉したりするのを直接的な効果(Direct effects)とするなら、第三者を介した影響を間接効果(Indirect effects)とよんでいます。外来種問題は、近年、この間接効果を念頭におかないと、外来種…

ハワイの学校は金曜日が休みに?

Hawaii teachers agree to 17 furlough days ― a 7.9% loss in pay 知り合いの奥さんが公立小学校の先生をやっているので、こんなニュースを耳にしました。どうも、大学をのぞくすべての公立学校の先生の給与が約8%カットになるという(2年間の)契約を労…

島から外来種を除去する順番

外来種が生態系に与える問題点を考えるとき、その外来種は他の外来種や在来種とも深く結びついていることを念頭におく必要があります。個体数が増加した外来種の場合はなおさらでしょう。 以前に、外来種のネコとネズミ、そして保全対象となる海鳥を考えたと…

研究者の評価

研究者の大事な仕事として、(1)論文を書いて専門誌に発表する、(2)これらの雑誌に投稿された論文を審査する、というのがあります。しかし、研究者としてその仕事が評価されるときは(職場での採用、昇進など)、発表論文をもとにされることが多いでし…

島に侵入した外来アリが固有鳥類による種子散布を阻害する?

植物の果実がしばしば色鮮やかに目立つのは、動物に食べてもらってその中に含まれる種子をよそに運んでもらうためでしょう。とくに、鳥は、さまざまな植物の果実を食べ、その移動能力の高さから、優秀な種子散布者といえます。 インドネシアの海洋島・クリス…

島の百科事典

島の生物学(生物相、進化、生態)と地質学に関する百科事典が出版されたようです。それぞれの分野で著名な研究者が、島の専門用語、動植物(ハワイミツスイやドードー、島ではないけど陸の島の湖の動物シクリッドなども)や代表的な島嶼部(日本列島やハワ…

研究室のミーティング

大学院生の時およびポスドクの時に属した大学の研究室では、それぞれ週一回のセミナーがありました。個々の院生が週替わりで研究を発表するというもので、その他事務連絡や話し合いもそのときに行われました。その後に移った独法研究所では、年に一回の研究…

御器被(ごきかぶり)

日本には、カタツムリを食べるマイマイカブリという甲虫がいます。「マイマイ(カタツムリ」を食べるときにその殻を被っているように見えることから、「マイマイカブリ(蝸牛被)」という名前ができたようです。 同様に、ゴキブリも「御器(ごき:食器)」を…

キューバのハシジロキツツキは別種で絶滅?

北米大陸にかつて分布していたハシジロキツツキは、カリブ海の大島、キューバにも分布していました。北米大陸と同様、キューバでもこの100年で急速に個体数を減らし、絶滅危惧種の代表的な存在です。 以前に少し触れたかもしれませんが、キツツキというのは…

絶滅種を再発見:絶滅カツオドリは現存する種と同一種だった

古くに絶滅したと思われる種について、その形態や生態がよくわかっていないことも多いでしょう。実際、すでに絶滅されたと考えられていたカツオドリの一種が、現存する種と同一種であることが報告されています。 ナショナルジオグラフィックニュース 「絶滅…