キューバのハシジロキツツキは別種で絶滅?

 北米大陸にかつて分布していたハシジロキツツキは、カリブ海の大島、キューバにも分布していました。北米大陸と同様、キューバでもこの100年で急速に個体数を減らし、絶滅危惧種の代表的な存在です。


以前に少し触れたかもしれませんが、キツツキというのは海を渡って分布を広げるのは得意ではありません。また、キューバのハシジロキツツキは少なくとも1976年までは北米の種と同一種とされるほどよく似ています(その後はキューバ産は亜種とされた)。そのため、ネイティブアメリカンによって古くに北米からキューバに人為的に運ばれた可能性さえ指摘されていたようです。


 北米とキューバのハシジロキツツキ(Campephilus principalis)の系統関係を明らかにするために、1861年から1923年の間に採集された博物館標本(北米産7個体、キューバ産3個体、加えてメキシコ産の近縁種 Campephilus imperialis 3個体)から抽出したミトコンドリアDNAを使って系統解析を行った。


結果、3種は単系統で、遺伝的には同程度離れており、それぞれの種は別種である可能性が高い。分岐年代はおおよそ100万年前と推定された。つまり、キューバのハシジロキツツキは古くに人為的に持ち込まれたものではなかった。



文献
Fleischer RC et al. (2006) Mid-Pleistocene divergence of Cuban and North American ivory-billed woodpeckers. Biology Letters 2: 466-469.


 これまた Ancient DNA 解析による絶滅種の系統関係についての論文でした(参考)。ただし、キューバ産は、北米産とは別種として、それぞれを保全する必要があるということです。


しかし、下の解説文にみるように、キューバのハシジロキツツキも絶滅した可能性は高そうです。


 キューバではおそらく1991年までハシジロキツツキが生息していたと推定されている。キューバにおいても、生息地の破壊がハシジロキツツキ減少の主要因であろう。ペットトレードを目的とした狩猟によって影響をうけた個体群もあった。ハシジロキツツキ1ペア(つがい)に対して、餌をさがしたり営巣するための巨大な枯死木を有する8平方キロにおよぶ森林面積が必要だと考えられている。キューバでは、低地と山地林の両方で生息していたが、耕作地の拡大により山地林にのみ生息するようになっていった。1970年には、個体群はせいぜい8ペアにまで減少していたようだ。1990-1991年の調査では、本種による採餌痕が発見されたが、本種と思われる姿はほんのわずかに目撃されたにすぎなかった。それ以降の目撃記録は全くないまま現在に至っている。


参考ページ(オランダの自然史博物館)
http://ip30.eti.uva.nl/naturalis/detail.php?lang=uk&id=54


 一般にキツツキ類は森林の断片化の影響を受けやすく、北米大陸よりずっと面積の小さいキューバでは、もともと絶滅しやすいのかもしれません。そういえば、日本の対馬にも生息していた大型キツツキの一種キタタキも1920年を最後に見られなくなりました(キタタキ自体は南、東南、東アジアに広く分布し、多くの地域では現存している)。