亜熱帯大陸島・沖縄本島を訪問

 沖縄本島北部に来ています。先月の西表島に引き続き、大陸島の生物多様性の高さを感じているところです。南西諸島で最大の島ですから、多様性が高いのは当たり前かもしれませんが。



北部の森林(イタジイと呼ばれるシイが優占する常緑広葉樹林


 沖縄といってももう12月、さすがに風は冷たいです。ハワイに比べるとずっと気温は低いようです(ホノルルは冬でもあまり20℃を切らない)。ツワブキの花をみても、南国における冬の到来を感じます。
 


ツワブキの花


気温が低いので、さすがにチョウやトンボといった大型の昆虫は少ないようです。とはいえ、フカノキの花にはイシガケチョウが訪れているのを見ました。本州ではあまり見かけないイシガケチョウですが、沖縄では個体数が多いのです。



フカノキの花を訪れるイシガケチョウ(幼虫がイヌビワ類の葉を食べるので、南にいくほど個体数が多い)


朽ちた木を割ると、その中にも虫が潜んでいます。島の甲虫といえば、クワガタムシは特筆すべきでしょう。海洋島であれ、大陸島であれ、朽ち木に生息するクワガタムシは比較的個体数が多いのです。



ルイスツノヒョウタンクワガタ(大アゴが特徴的)


同様に、朽ち木の中で社会生活を行うゴキブリも見られました。本州ではオオゴキブリがいますが、南西諸島にはクチキゴキブリが見られます。同様に、朽ち木の中で親子そろって仲良く生活しています。シロアリもゴキブリも同じ仲間だと実感する瞬間かもしれません。



リュウキュウクチキゴキブリ


 小笠原やハワイなどで調査していたので、キセルガイ類も新鮮な気持ちで見ることができます。日本列島には多くのキセルガイがいますが、太平洋の島々ではほとんど分布していません。日本列島は世界的にもキセルガイの多様性が極めて高いといえるでしょう。



スジイリオキナワギセル(他のカタツムリと違ってキセルガイ科のほとんどの種が左巻き:隣は外来種として近年問題のヤンバルトサカヤスデ


 在来の陸上爬虫類が多いのも大陸島の特徴でしょう。沖縄本島だけで18種の在来種が知られています(小笠原では在来1種、ハワイでは0種)。中でも、アオカナヘビは尾が極めて長くて美麗な種だと思います。



アオカナヘビ


 海洋島とは違い、大陸島では在来の両生類も豊富です。日本産イモリ3種のうち2種が分布しています。そのうちの1種がシリケンイモリ沖縄本島では比較的普通に見られる種でしょう。



シリケンイモリ(本州のアカハライモリと同じく腹面はオレンジまたは赤色で、フグ毒テトロドトキシンをもつという警告色)


 中南米やオーストラリアに固有の両生類を絶滅に追いやっているといわれるカエルツボカビは、実は日本列島を含む東アジアに元々の起源があるという説が最近唱えられました。沖縄本島シリケンイモリ野生個体群は、カエルツボカビの野生感染率が最も高いことが報告されています(沖縄本島の野生24個体のうち12個体(50%)が感染し、しかも菌のハプロタイプ数は多い:Goka K et al. 2009 Molecular Ecology)。カエルツボカビ感染によるシリケンイモリへの影響はないようなので、ひょっとすると菌とイモリはこの島で長い共進化過程を経てきたのかもしれません。


 渓流にも興味深い動物が生息します。その一つが、オキナワオオミズスマシ。本州で見かけるオオミズスマシをより大型にしたような種です。しかも、いざとなったら水中にも潜ることができるのが格好良いです。



オキナワオオミズスマシ(ミズスマシの複眼は特殊で水上用と水中用に分かれている)


 実は、1996年に沖縄本島北部に来たことがあるので14年ぶりの訪問となりました。以前訪れたところは野帳に詳しく記してあるので再訪してみましたが、やはり14年の歳月は長く、全く同じような環境が保持されているところはほとんどありませんでした。


 今回は本来の目的(?)である丸太運びとその切断で多いに時間と体力消費したので、イマイチ元気がありませんでしたが、虫や花にとって良い季節に再訪したいところです。



琉球列島―生物の多様性と列島のおいたち



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