ハワイの珍奇なる虫たち(7)陸生のヤゴ
ハワイには変わった昆虫がすんでいることが知られています(参考:ハワイの珍奇なる虫たち 1, 2, 3, 4, 5, 6)。そのきわめつけは陸生のヤゴでしょう。
ヤゴといえば、トンボの幼虫で、水の中で生活し、他の昆虫や小さな魚を食べたりする捕食者として知られています。ところが、ハワイ固有のトンボの幼虫には陸生のものがいるというのです。
ハワイ固有のハワイイトトンボ類(Megalagrion)は23種が知られていますが、オアフ島に固有の Megalagrion oahuense の幼虫が陸生である可能性が古くから指摘されています。
Perkins(1899) は「Fauna Hawaiiensis」の中で、Megalagrion oahuense の幼虫は、ユリ科の Astelia veratroides の葉間に棲んでいることを記しているが、F. X. Williams 博士の熱心な調査によって間違いであることがわかった。本種は水生ではなく、陸生であったのだ!
長径0.8mmで青白色の卵は、シダ(Glechenia linearis)群落のリター層に産み付けられ、その幼虫は、シダ群落の日陰にある湿ったリター層に棲み、その体は、(ハワイのトンボの中では最も)多くの毛に覆われている。その毛の多さは、体の湿度を保つのに役立っているのだろう。鰓(えら)も特別に変わっており、膨れており密な毛で覆われている。ただし、生活史の長さや、幼虫の餌についてはよくわかっていない。
これ以降はほとんど研究されていないようですが、もしこれが事実なら、生理学的にも生態学的にも非常に興味深く思います。ハワイでは陸上を徘徊する強力な天敵(アリなど)や競争者がいないために進化してきたのでしょうか?
ただ、ハワイ以外に、ニューカレドニアやオーストラリアでも陸性のヤゴが見つかっているようです(もちろんすべて別種)。
文献
Corbet PS (1980) Biology of Odonata. Annual Review of Entomology 25: 189-217.