ハワイの天然林を構成する樹種として、フトモモ科のオヒア(ハワイフトモモ Metrosideros polymorpha)とマメ科のコア(Acacia koa)が最も代表的です。いずれもハワイにのみ見られる固有種ですが、いずれの島にも分布し、少し山に入ればどこでも見られる樹木です。
道すがら、コアを観察していると、非常に興味深い現象に気づきます。大きなコアの木には、普通の葉(単葉)がたくさんついているのですが、幼木ではマメ科らしく複葉をつけるのです。幼木の中には、複葉と単葉の両方つけた木も見つかります。文献によると、コアの成長にともない、複葉の葉柄部を発達させた単葉を作るようになるそうです(これは偽葉 phyllode と呼ばれる)。
生態学をかじった人なら、なぜこのような2つのタイプがあるのかが気になるでしょう。
偽葉は、複葉よりも保水力と水利用効率が優れているという実測データがあります。つまり、偽葉は乾燥に適応した形態であるのに対し、複葉は湿度の高い状態で急速に成長するのに(おそらく)優れた形態というわけです。
確かに、コアは、乾季と雨季の比較的はっきりとした地域の尾根筋に生えていることが多い気がします。ただ、この偽葉は、ハワイ以外のアカシア(Acacia)にもしばしば見られるようなので、ハワイで独自に進化した可能性は低いかもしれません。
コアの幼木の展葉(赤矢印が新しく出た複葉、白矢印が葉柄が発達した単葉)
日本にはこのように木の成長とともに単葉になる種はあまり知られていませんが、2タイプ以上の葉がある植物はよく見られます。水草の沈水葉と浮水葉、カクレミノやヒイラギ、ツタなどの異形葉がありますが、これらの適応的な意義も同様に興味深いと感じます。
オヒアやコアは、ハワイの森林に優占する樹種だけあって両種は生態学的にも非常に興味深い種です。機会があれば、いろいろな生態や他生物との関係についても調べてみたいところです。