論文質をとられる

 論文を投稿していてしばしばあることなのですが、投稿先の雑誌から他人の論文の査読を頼まれます。もちろん、論文を投稿するからには、自分の論文に少なくとも3人(担当編集者と査読者)が関わるわけですから、自らがその役割を求められたら従うのは当然でしょう(参考:査読という仕事論文の再査読)。よっぽど分野が違えば査読を断ることもありますが、この場合は担当編集者は自分の投稿論文から専門分野をよく知っているので、そういう分野の違いもあり得ません。


そういうわけで好き嫌いにかかわらず論文を査読することになるわけです。しかしこれまでの経験上、あまり良い思い出がありません。


これまでで最も悲しかったのは、査読を終えてレポートを編集部に送ったところ、しばらくして自分の方の論文は却下されたことでしょう。自分の論文だけでなく査読レポートも良くなかったのかな、などと結構複雑な思いでした。


次に悲しかったのは、はりきって査読を終えて自らの論文の結果を待つも、なかなか返事がなく、先に査読をした論文はさっさと受理されて出版されたのを知った時でした。


そして最近のお話です。投稿している雑誌から査読があったと同時に自らの論文の査読結果も受け取りました。割と好意的なコメントで改訂すれば受理されそうな内容でした。もちろん査読の方も引き受け、とりあえずはすぐに対応できそうな自らの論文を改訂しさっさと再投稿しました(参考:なぜすぐに論文を再投稿できないのか)。査読の方も少しずつ進めそろそろ提出しようかと思っていた時でした。再投稿した原稿の結果が送られてきました。わずかな修正でしたし、受理されたのかなと期待しつつメールを読むと、さらなる改訂を要求するものでした。まだ足りないかあ、と思いつつコメントを確認しようとメールをスクロールするも、コメントがなぜか空欄・・・。コメントがないのですぐに送るよう編集部にメールを送るも担当編集者から1週間返事がなし。これでは査読レポートも送りにくいなあと思い、さらに担当編集者に直接メールを送っても音沙汰なし。再び1週間経って編集部に催促のメールを送るも、担当編集者と連絡がとれないとのこと・・・。これは、自分の査読レポートを送らないと自らの論文の返事ももらえないということなのでしょうか? 


人や言や物が質にとられることはあっても、論文原稿もとられてしまうとは思ってもみませんでした。


それにしても、その雑誌に投稿しているのに他の論文の査読をする場合、中立であろうとするのは当然ですが、なんらかの自分の論文への不利益も生じるのではないかという思いが生じることもあります。これは利益相反行為を促してしまうような気もします。


 そろそろ査読レポートを編集部に送ります。