「種間相互作用の島嶼生物地理」の特集記事

 かの大震災から1年と9ヶ月。地震が起こったのは、札幌開催の生態学会において自身が企画していた「種間相互作用の島嶼生物地理」での講演の最中でした(参考:「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画)。その企画集会の内容をもとに、学会の和文誌に特集記事として、講演者4人によって執筆したものが出版されました。



 このように特集記事をまとめるのははじめでしたので、参考までに簡単にその流れを書き留めておきます(もちろん、学会によって異なると思います)。まず、私自身が学会における集会を企画し、講演をして欲しい人に打診し承諾を頂いた時点で企画案を大会の担当者に申請しました。無事企画が受理され、その後和文誌編集長の方から、企画内容を特集記事としてまとめてみる可能性があるかどうかを打診されました。講演者の方々にその旨を伝え、特集記事としてまとめる承諾を得て、改めて特集記事の企画を編集部の方に申請し受理されました。そして企画集会が開催され、その後締め切りを決めて原稿を集め、相互にチェックし合った後、まとめて投稿しました。それからは通常の論文投稿の流れ(担当編集者、2名の査読者によるコメント、改訂)を経て受理されました。なかなか予定通りにはいかず、和文誌は年に3号の発行ですが、当初の計画よりは半年くらいは遅れました。しかし、こうして無事掲載されてホッとした次第です。


日本生態学会誌 62巻3号:313-350頁(下記のアドレスから無料でPDFをダウンロードできます)
http://ci.nii.ac.jp/vol_issue/nels/AN00193852/ISS0000485113_ja.html


特集:種間相互作用の島嶼生物地理


1)種間相互作用の島嶼生物地理
2)絶対送粉共生はいかに海を渡ったか―コミカンソウ科−ハナホソガ属共生系の島嶼生物地理
3)オカダトカゲの色彩パタンの進化―捕食者に対応した地理的変異―
4)展望:島嶼生物地理学で拡散共進化を紐解く
5)種数−面積関係の展開:種間相互作用ネットワークと生息地面積との関係


 個人的にはこのブログでも度々解説してきた種数−面積関係(下記参考)について、「種数−面積関係の展開:種間相互作用ネットワークと生息地面積との関係」としてまとめる機会がもてたのはよかったです。このブログは自分勝手に柔らかめに書いていますが、学会誌では論文を読んで審査してくれる方(査読者)がいるため、比較的堅めに書かれているかと思います。より専門的な観点から興味のある方には役立つかもしれません*1


 生態学関連の研究者にとっては英語論文のみが重要視されていますが、少し異なる分野の勉強には日本語の方がわかりやすいものです。自身の研究をわかりやすい形でまとめておくことは、一般の人たちに限らず少し異なる分野の同業者にとっても有用だと信じますし、和文誌の存在意義もそこにあるように思っています。


種数−面積関係についてこれまでとりあげてたきた内容
島面積と種数の関係:メカニズムのまとめ
島が大きくなるほど種分化がおこりやすい
種分化に必要な最小の島面積は?
島の生物地理学の理論、再び
島が大きくなると食物連鎖長がのびる
島面積と種間相互作用の関係

*1:本誌は生態学会に所属している会員に送られるものですが、大学図書館等にも置いてあると思います。また、数ヶ月経つとCiNiiにて無料でダウンロードできるようになります。もちろん、希望者にはPDFを個人的に送付することも可能です