アルフレッド・ラッセル・ウォレス賞とは

 進化学や生物地理学で有名なウォレス(Alfred Russel Wallace)の名を冠した賞はいくつかありますが、国際生物地理学会(International Biogeography Society)が2004年から「Alfred Russel Wallace Award」を授与しています。

 
 国際生物地理学会が発行する『Journal of Biogeography』誌の電子版をみていると、2015年の受賞者であるシンバロフ(Daniel Simberloff)の紹介記事がありました。

Sanders NJ (2015) Island biology and the consequences of interspecific interactions. Journal of Biogeography


 記事では、生物地理学におけるシンバロフ博士のこれまでの業績をおおまかに紹介しています。シンバロフの業績として有名なのは、島嶼生物地理学の理論を検証するためにウィルソン(Edward Osborne Wilson)と一緒に行った珊瑚礁の島での野外実験でしょう。


島の生物地理学の理論:ウィルソンによる回想


さらに彼が指導し『Journal of Biogeography』誌に最近掲載された学生の論文についての概要も述べられています。この論文では、世界の多くの島に生物防除目的で導入され外来種として問題となっているマングースを材料に、他の捕食者との競争がある島とない島で形質を比較し、形質置換が起こっている可能性を指摘しています。この論文は、「島」、「外来種」、「生物防除」、「島の法則」、「ベルクマン則」、「種間競争」などがテーマとなっており、シンバロフのこれまで行ってきた研究や興味がよく反映されているそうです。


Barun et al. (2015) Possible character displacement of an introduced mongoose and native marten on Adriatic Islands, Croatia. Journal of Biogeography, doi:10.1111/jbi.12587 (WILEY link)


 ウォレス賞はシンバロフですでに6人目の受賞者とのこと。シンバロフの宿敵(?)ダイアモンド(Jared M. Diamond)や、マクロ生態学の名付け親のブラウン(James H. Brown)もすでに受賞されているようです。しばらくは生物地理学のリジェンドたちの受賞が続きそうです。


その他、参考ページ

島の生物地理学の理論、再び

島嶼生物地理学の理論を保全へ応用:SLOSS 論争とは

チェッカー盤分布をめぐる論争

半島効果(Peninsula Effect):半島部に種の多様性勾配はあるのか?