「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画

 日本生態学会の札幌大会に参加しました。

 
 この数年、島の生物学を勉強したり研究したりして、島の生物間相互作用について少しまとまった形として何かしたいなあと漠然と考えてきました。ハワイから帰国して、次も島の生物学を研究できるという保証(例えば研究資金)もないので、とりあえず情熱があるうちに、なんらかの形でまとめておきたいという気がありました。


そのきっかけの一つとして、学会で集会を開くということを考えてみました。研究者による多くの学会(meeting)では、口頭発表やポスター発表とは別に、テーマを絞って数件の講演からなる2,3時間の集会(session)というのを企画できます。そこで、自身を含めて4人の講演者からなる「種間相互作用の島嶼生物地理」という集会を企画しました。


 講演者の選定は、知人に相談しつつ、自分自身が関心があるもの、そして日本列島を中心に、さまざまなタイプの島嶼(海洋島、大陸島、古い大陸断片)、そして多様な陸上生物の種間相互作用(送粉共生、防衛共生、捕食−被食関係など)を含めるような構成を考えました。事前に講演者候補に問い合わせし、企画案を作り、学会本部に申し込んで採用されるという点順を踏みました。


 当日は、まず冒頭で企画者が趣旨説明を行い、次に順次20-30分の発表を行ってもらいました。


ラインナップは、
(1)世界各地の島嶼カリブ海から太平洋、インド洋)における植物と蛾の絶対送粉共生関係
(2)伊豆諸島における島ごとに異なる捕食圧がトカゲの尻尾の色に与える影響
(3)八重山諸島から台湾にかけてのカタツムリとそれを食べるヘビの共進化
(4)小笠原諸島において島の面積がアリと植物の花外蜜腺を介する相互作用ネットワークにおよぼす影響
というものでした。


(1)−(3)の発表は、既出版の研究の優れたレビューであり、さらに未発表のデータも含まれていたため、今後の展開をも期待させるものでした。


講演途中に件の大地震があったにも関わらず、会場の中で揺れに全く気づかなかったという、とある講演者の集中力に舌を巻くこともありました。


なにぶんにも企画集会を主担するのははじめてで、事前の宣伝といった配慮もなかったものの、多い時には50を越える人が聴いてくださったようでした。


個人的に興味があって開きたいという、少しわがままな集会だったかもしれませんが、他の人にも楽しんでもらえたなら、それは嬉しいことに違いありません。


 それにしても、大地震津波の影響について新たな情報が入ってくる度に心が痛みます。どの人にとっても悪い方向にならないことだけを祈りたいです。