亜熱帯大陸島・西表島を訪問

 西表島を訪れています。帰国後の寒さで顔にあかぎれができそうなほどでしたが、当地ですっかり回復しました。やっぱり南の島は心地よいです。



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 ここ数年、小笠原諸島ハワイ諸島といった海洋島でのフィールドワークがメインでしたので、南西諸島のような大陸島(かつて他の大陸と地続きだった島)は久しぶりで新鮮です。何より、種多様性が高いことを実感します。


 通常、海水面の上昇やプレートの移動などで、陸地が分断され島になると、種の移入頻度が減り、絶滅率が上昇するため、全体の種数は徐々に減少します。これを島嶼生物地理学ではリラクゼーション(relaxation)と呼んでいます(Diamond J 1972 PNAS 69:3199-3203)。西表島はかつて他の陸地と地続きで、分断後の歴史は短いため、まだまだ多様性は高い状態に保たれています。大型捕食獣であるヤマネコが絶滅せずに残っているくらいですから。


ただし、西表島固有の種は多くはありません。かつて地続きだったと考えられる石垣島や台湾他との共通種が多いようです。



セマルハコガメ


 ガラパゴス諸島ではリクガメが分布していますが、小笠原やハワイなどではもちろん分布していません。西表ではセマルハコガメが分布し、森林内でノソノソと歩いているのを観察しました。



アオスジアゲハ


 小笠原とハワイの固有のチョウはわずか2種類ずつで、外来種を除けば他の種類は滅多に見られません。西表島では在来のチョウの種数も個体数も多く、いたるところで見られます。



ギランイヌビワ


 熱帯といえばイチジクの仲間でしょう。熱帯から広く分布するギランイヌビワはそれぞれの地域に分布するオオコウモリによって種子散布されます。



アオミオカタニシ


 海洋島、大陸島に限らず、島にはカタツムリの個体数、種数とも多いものです。樹上性のアオミオカタニシは葉とそっくりのきれいな緑色をしています。



マダラアシナガヤセバエ


 林内の葉上で見られるマダラアシナガヤセバエ。近縁種が小笠原にも分布しており、非常にユニークな行動を観察できました。



 西表島小笠原諸島の共通種もいます。グンバイヒルガオ、モモタマナ、オオハマボウなど、海流で種子が散布される植物たちです。


 久しぶりにさまざまな分類群にわたる動植物を観察し、今後の研究の方向性を考えたりしています。


 
 西表島フィールド図鑑