蔓脚類の自然史

 以前から気になっていた蔓脚類(まんきゃくるい)についての一般向けの書物を、西表島への出張の道すがら読んでみました。



フジツボ―魅惑の足まねき


 一般にはフジツボと呼ばれていますが、ダーウィンもかなり真剣に研究に取り組んだ動物の仲間です。固着性で、貝類のような殻に囲まれているのですが、節足動物類に所属するなかなかにユニークな海産動物です。一般には潮間帯の岩に固着しているのをよく目にしますが、種によってはクジラやウミガメ、カニ、カイメンなどさまざまな動植物に付着しているのがおもしろい。


本書は、フジツボ類の一般的な形態の解説からはじまり、その生態、人との関係まで広く扱われています。写真や絵が豊富にあってたいへん読みやすい本です。


ただし、いずれのトピックもごくごくさわりだけの紹介で、より深い内容については専門誌にあたる必要がありそうです。そういう意味で、文中や巻末に書籍や文献の紹介があってもよかったかもしれません。あと個人的には、標本の作り方というのもほしかったところです。



西表島の海岸に打ち上げられたエボシガイ(浮きに付着していた)