小笠原諸島など海洋島における生物相やその進化について一般的にわかりやすい本が出版されていました。この2年間ここで紹介してきたような話が、かなりわかりやすくまとまっています。
小笠原諸島に学ぶ進化論 ―閉ざされた世界の特異な生き物たち―
「Island Biology」を著したカールキスト(Sherwin Carlquist)は、ハワイなどの海洋島での生物相の特徴を島症候群(アイランド・シンドローム island syndrome)としてまとめました。カールキストのいうアイランド・シンドロームに著者が追記する形でまとめられているのは便利です。本書では、この一般的な現象に照らし合わせながら、小笠原での生物相の特徴を紹介しています。
海洋島でみられる生物相や生態系の特徴(アイランド・シンドローム)
- 生物相が貧弱である
- 生物相が非調和(アンバランス)である
- 独自性(固有性)が高い
- 属島ごとの固有種が多い(単島固有種)
- 適応放散が起こりやすい
- 食物連鎖が単純である
- 生態的解除現象が見られる
- 植生遷移が単純である
- 移動(分散・散布)能力が低下する
- 防御能力が低下する(恐れ知らず)
- 新ニッチを開拓する
- 草本が樹木化する
- 目立たない花が多く、雌雄異株の割合が高い
- 希少性が高い(絶滅しやすい)
- 外来種が侵入しやすい
「小笠原諸島に学ぶ進化論 ―閉ざされた世界の特異な生き物たち―」のP.54より