研究の道

「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画

日本生態学会の札幌大会に参加しました。 この数年、島の生物学を勉強したり研究したりして、島の生物間相互作用について少しまとまった形として何かしたいなあと漠然と考えてきました。ハワイから帰国して、次も島の生物学を研究できるという保証(例えば研…

全盲の博物学者

「博物館行き」という言葉にみられるように、現代では「博物学」とか「博物学者」と呼ばれるのは、あまり名誉なことではないかもしれません。しかし、自然史(ナチュラルヒストリー/natural history)を研究している学者を、ダーウィンやウォーレスの流れを…

論文受理に至る長い道のり

ようやく1本の論文が受理されました。データをとりはじめたのが11年前、取り終えたのが8年前、博士論文の1章としてまとめたのが6年前、最初に論文を投稿したのが4年前、そして複数誌に却下されて、ようやく受理に至ったというわけです。特に難易度が高い雑誌…

さまざまな専門誌(2年間のまとめ)

この二年間でいろいろな話題をとりあげてきましたが、その都度、できるだけ原著論文や総説論文を引用するようにしてきました。どういう位置づけの雑誌であるかはふれてきませんでしたが、実にさまざまな専門雑誌があります。具体的に引用文献、参考文献とし…

気候変動に備えた人為的な生息地移動(managed relocation)の是非

今日届いた電子メールを開くと、アンケートの依頼がありました。最近、投稿雑誌や新規雑誌のアンケート依頼がよくあるのですが、「Managed Relocation」というキーワードをみて、真剣に取り組んでみる気になりました。今話題の「気候変動に備えた人為的な生…

虫談義

本土の大学で学位を取得されハワイ大の隣の研究室にやってきたポスドクの人がいます。なんと、日本での昆虫少年の経験もありながら米国で昆虫学を学んだという憧れの経歴を持っておられます。 先月昼食をとりながらじっくり話す機会があったのですが、昆虫少…

英語のセミナー発表

これまでなんとなく英語でのセミナー発表を避けてきたのですが、ついに発表をせざるをえなくなりました。もっとも、研究室のミーティングや学会(Evolution 2010)などで15分程度の短い発表はしてきたのですが、30分をこえる発表は準備などがちょっと面倒な…

論文の再査読

論文を投稿して査読者によるコメントをもとに編集者がその掲載の是非を検討するというのが、ピア・レビュー(peer review)と呼ばれるシステムです(参考:査読という仕事 / 査読コメントが辛いわけ)。 論文の掲載が断られなかった(リジェクトされなかった…

学部生の論文とオーサーシップ

本土の大学からやってきていたインターンシップの学生が先週帰っていったそうです。2ヶ月くらいの滞在で、がんばって実験していたのが印象的でした。 せっかく実験するのだから学術論文としてまとめたらいいいのにと内心思っていたのが通じたのか、先生がけ…

同好の士

研究への情熱を感じる良い話。 九州のアマチュア天文家が見つけた新星が、強い放射線を出す新種の天体であることを、京都大・広島大などの研究グループが確かめた。13日付の米科学誌サイエンスに、アマとプロ、連名で発表する*1。研究者は「連携がうまくい…

インパクトファクターの信頼性

インパクトファクター(impact factor:以下IF)とは、トムソン・ロイター(Thompson Reuters)社の有料サービス Journal of Citation Reports によって提供される科学雑誌の評価基準です。IF は毎年計6月下旬頃に発表されています。例えば、最新の2009年の …

昆虫少年の歩む道

米国でそれほど多くの知人がいるわけではないけれど、学生や大学院生、教員の中に、いわゆる子供の頃からその対象生物にどっぷりつかっているという人をほとんどみていません。 例えば、幼少の頃から昆虫を採集して標本を作成しているような昆虫少年が、その…

米国開催の進化学会に参加

オレゴン州のポートランドで開催された Evolution 2010 に参加してきました。実は、日本国外で開催された学会に参加するのは初めての経験です。 ポートランド市街を走るマックス・レイル(町の中心部に限り無料で利用できる) ポートランドは札幌とほぼ同じ…

海外からのアウトリーチ?

最近の科学研究費に対する厳しい情勢なのか、海外に滞在する研究費にもアウトリーチ活動というのが求められているようです。義務ではないようですが、報告書には論文や学会発表などの業績の他に「アウトリーチ活動」の結果を書くよう求められているわけです…

英文の個人差

先日、とある論文について共著者であるネイティブのお二人に英文原稿をチェックしてもらった件について書きました。 一人目のコメントや修正案にしたがって直したのものを、二人目に送りました。一人目は、当然のことながら私の英文を真っ赤になるほど添削し…

夏休みのインターンシップ

先日、大学の図書館に行ったら、セメスター中にはあれだけいた学生がほとんどいませんでした。やはり試験や授業のために勉強していたのでしょう。夏休みは実家に帰ったり、アルバイトをしたりして過ごしているのかもしれません。 出入している研究室の一つに…

会議は火曜の午後3時が最適か?

今の研究室には、週一度のミーティングがあります。主な目的は、大学院生がサボらないように研究の進捗状況をチェックすることで、教育の一環なのでしょう。自身が学生だったら、そんなチェックされたくないですけど。 When Is The Best Time for a Meeting?…

共著論文のチェック

先日、とある論文についてネイティブに英文校閲をお願いした件を書きました。 今回は、二人のネイティブに原稿のチェックをお願いしました。共同研究でしたので、英文の校閲だけでなく研究内容に沿った改訂もしてもらいました。まず一人目に送ったら、翌日に…

英文校閲のこと

最近の研究論文の多くは英語で書かれています。もちろん、私はネイティブでもないし英語を自由に扱えるわけでは全くありませんので、英語論文を書くというよりも、単語を記号のように連ねてなんとか文章らしくしている気がします。もちろん、ネイティブが書…

論文の出版コスト

とある論文の出版に伴なうコストの請求書が出版社から届きました。開くと、1,549米ドル。日本円にしておよそ14万円!今流行りのiPadにして2台分。 内訳は、ページ超過チャージ879米ドル、カラーページチャージ439米ドル。別刷りは配布していないばかりかオー…

夏休み

今週から夏休みに入ったようで、キャンパス内の学生の出入がずいぶん少なくなりました。近くのレストランが閉まったりしてけっこう不便です。また、日中も夏休みらしく日差しが強くなりつつあるようにも感じます。 研究室は休みになるわけではないのですが、…

除菌ハンドジェル

野外調査ではいろいろな生物に触れることでしょう。個人的には植物に集まる昆虫に関心があるのですが、動物の糞や死体に集まる昆虫も大好きだし、他にもカタツムリなんかをみるとついつい触ってしまいます。ただ、そんな手のままお弁当を食べるのはちょっと…

論文リジェクトの種類

論文を投稿すると、掲載不可(リジェクト)か、改定要求(レビジョン)か、そのまま受理(アクセプト)という結果が返ってきます。ただ、その境界は曖昧で、一旦リジェクトするけど、査読者の指示にしたがって論文をうまく改訂できたらもう一度再投稿しても…

研究室旅行とピクチョナリー

あっという間に4月も終わりに近づきました。 そういえば昨年に学位をとったKさんが最近の日本で言えば特任助教(=任期付の教員)として研究室に復帰しました。卒業生を研究室スタッフとして呼び戻すというのは、日本の古典的な講座制研究室みたいでちょっと…

秘書の日

昨日21日は「秘書の日」でした。米国では4月の第4週の水曜日を「秘書の日」に定めているらしい(Wikipedia)。うちの先生はカードにみんなのサインをいれて、花と一緒に渡して日ごろの感謝の意を表していました。うちの研究センターの秘書さん(いわゆる事務…

ネガティブデータが出版されにくい理由

研究費やポジションをめぐる競争が激しい研究社会では、論文を積極的に出版することが強いられます。そのようなプレッシャーの中では、仮説にあったポジティブデータが出版されやすい傾向にあって、仮説にあわないネガティブデータは引用されにくいし出版さ…

島の種数平衡理論:独立した発見

日本人によって行われた独創的な研究が海外の研究者に無視されているという話はしばしば耳にする話です。昔は日本人は日本の雑誌に日本語で論文を発表していたため、海外の研究者はそれを見ることも読むこともできず、気づかれなかったと言っても良いでしょ…

大学院生の研究費

米国でも日本でも、研究者は研究費を獲得するために提案書を書いて申請します。国の研究費だったり、民間の研究費だったりします。日本では科学研究費補助金(いわゆる科研費)が一般的です。米国では国立科学財団(NSF)の支給する研究費がそれにあたります…

研究キーワード数や論文引用数が増加するのは必然?

『ウィルソンとマッカーサー以来「島嶼生物地理学(Island Biogeography)」は生態学において重要なテーマですが、近年ますますこの分野が脚光を浴びています。』 と紹介する時、「island biogeography」のキーワードで Web of Science *1で検索をかけて、こ…

電子付録をいまいち楽しめない理由

雑誌につく付録といえば、なんだか楽しいものを思い浮かべてしまいます。 学術論文にも付録があります。といっても、いわゆる付録ではなくて、各論文についている参考資料(補遺:supplement / materials)のようなものです。生態学の論文だと生物種のリスト…