研究の道

生物学おすすめ読み物

今日のセミナーは、生物学を専攻する学生のための書籍の紹介という内容でした。教科書を一冊丸ごと読むことはほとんどないでしょうが、一般向けに書かれた科学書(いわゆるポピュラーサイエンス)は一冊通して読むことを前提に書かれています。そこで、その…

論文の別刷りは消えていく・・・?

投稿した論文の出版が決まった後に、出版社に注文しておくと、自分の論文のページだけが印刷されたものを冊子として何部でも購入することができます。これを「別刷り(抜き刷り:offprint)」と呼んでいます。 この別刷りを購入するというのは、研究者の間で…

保全生物学の研究は遅れがち?

地球温暖化、生物多様性の減少など、生物学がかかわる環境問題は近年ますます注目されつつあります。研究をうまく政策に活かすには、迅速な研究成果の発表が重要になってきます。しかし、生物多様性の保全にかかわる保全生物学の分野では、研究の公表が他の…

NSF の査読コメント

NSF(米国科学財団)の研究費申請の結果を見せてもらう機会がありました。総合評価は4段階で上位26%ほどが採用されるようです。日本の科研費で不採用の場合は短いコメントと総合評価(A、B、C・・・)が返ってくるだけですが、NSFではプログラム・オフィサー…

Double-Blind Review:論文執筆者を匿名にすると・・・

2日、3日は土日だったので、4日から仕事始めと言う感じです。ここ最近気温が高めで長袖から半袖に戻りました。 先月問い合わせしていた論文に関してもようやく返事がありました。最初に推測した通り、同じ雑誌に投稿された複数の原稿を抱えている査読者が、…

情報の源

今年ももう終わりです。ハワイはやっぱり温暖で、むしろ最近は寝苦しいくらい気温が高い。昨晩は28℃もありました。天候もおおむね穏やかで、多少雲はあっても毎日お天道様を拝めます。ハワイで心を病む人はほとんどいないかもしれません。むしろそういった療…

「日本語が亡びるとき」を読んで

一年ほど前に話題になった「日本語が亡びるとき」を今更ながら読んでみました。 思い切って要約すると 英語はかつてのラテン語のような普遍語になった。 英語を母語としている人の多くは英語が普遍語であるということをほとんど意識していない。 日本語は普…

論文が受理される喜びとは

もう長い間やりとりしている論文があります。リジェクト(却下)されたり改訂して再投稿したりというのを毎月のように繰り返しています。 そして今日ついに論文が受理されたというお知らせが届きました。電子メールによると、最終原稿として(一人の)査読者…

理想の論文?

ナショナルジオグラフィック ニュース 「メジロダコの不思議な生態:道具を使う」 無脊椎動物では珍しい道具を使うという行動を報告した論文です。タコがココナツの殻に隠れるのですが、移動する時にも持ち歩くというユニークな行動がビデオに撮影されていま…

Ph.D. Defense の条件

昨日で今年の授業関係は終わりということで、最後のセミナーはまたもや Ph.D. Defense(博士論文公聴会)がありました。今回は、副査の人の質問に対する返答なども公開されていました。内容は、ザトウクジラの音響についての研究。 この1年、何度もDefenseを…

グラント獲得とか

R さんが NSF(米国科学財団)に申請していた研究費が採用されたそうで、今日はそのお祝い?の飲み会がキャンパス内でありました。およそ3年で500,000ドルということなので、日本の科研費でいえば基盤Aの最高額に相当するのかな。しかし「分類・系統」という…

日本の若手研究者支援の今後

文部科学省:若手研究支援についての事業仕分け(2009年11月13日) 全文テキスト 結果メモ 対象(平成22年度予算) (1)テニュアトラック制度(任期付き大学院教員)+企業へのインターンシップ補助:125億円? (2)科研費若手枠(年齢40歳未満対象):282…

署名入りコメントに込められた意味

論文は常に出し続けておきたいという思いから、審査中に別の論文を投稿することを目標にしています。通常は投稿から数ヶ月は審査待ちの時間があるので、その間に投稿するということです。また、最近の論文投稿はすっかりインターネットに依存しているので、…

テニュアトラックではないポジション

(米国の)大学教員におけるテニュアトラックという制度、つまり採用数年後に審査があってこれに認められればテニュア(永久在職権)が与えられるというものです。このテニュアトラックへの募集自体がかなりの競争があるのですが、その後の審査も非常に厳し…

ウォーレスが投稿していた雑誌

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したウォレス(Alfred R. Wallace)*は、動物地理区の境界線の解明(ウォレス線)や、ダーウィン(Charles Darwin)と同時に「自然選択(淘汰)説」を発表した博物学者として著名な存在です。 ダーウィンは裕福な家に生ま…

著者数の多い論文ほど引用されやすい?

論文が他の研究者によって読まれ、他の論文で引用されることが科学の健全な流れといえるでしょう。多くの論文に引用されるほどその論文の評価が高まり、執筆者の評価も高まるということになります。 これまで、専門誌に論文が投稿された時、論文著者の母国語…

ダーウィンが投稿していた雑誌

自然選択説を提唱したダーウィン(Charles Darwin)は、職業的な研究者(大学教授など)というわけではなく、いわゆる資産家で自宅で研究を行ってきた19世紀の博物学者です。彼の著名な業績の多くは、本という著作物として出版されているわけですが、彼自身…

研究者の評価

研究者の大事な仕事として、(1)論文を書いて専門誌に発表する、(2)これらの雑誌に投稿された論文を審査する、というのがあります。しかし、研究者としてその仕事が評価されるときは(職場での採用、昇進など)、発表論文をもとにされることが多いでし…

動植物研究者の女性比の比較

動物・植物学部合同のセミナーがスタートしました。動物学部の大学院生によるPh.D. Defenseで、サンゴの細胞内共生系の浸透圧調整遺伝子発現について。方法を含めて全く馴染みのない研究だったので、英語の専門用語も含めてほとんど理解できませんでした。た…

リジェクトの判断を下す査読者とは・・・

投稿論文についていろいろ悩んでいる私に、Yさんが興味深い論文を紹介してくださいました。 どういう査読者が投稿論文にリジェクト(掲載不可)の判断を下すのでしょうか。 生態学、進化学の分野の研究者に主に以下の質問を含むアンケート調査を行った(実際…

耐えること

長い夏休みも終わりに近づきつつあるようで、今日は珍しく研究室のメンバーが全員そろっていました。新しい大学院生も一人加わりました。学内のカフェテリアもようやく再会し、構内もにわかににぎやかになりつつあります。新しい学期がはじまりそうです。 さ…

待つこと

最近は、インターネット上にファイルをアップロードするだけで論文を投稿できてしまいます。数年前には、論文原稿を2,3部プリントアウトして編集部に郵送していたことを考えるととても便利になったものです。しかも投稿した論文の状況は、インターネット上で…

送られてくる雑誌

最近は、研究論文を入手する際、大学から支給されるアカウントを使って電子的に論文(PDF)をダウンロードしています。一般の人にはわかりにくい表現かもしれません。つまり、大学などの研究機関は出版社から論文のダウンロード件を購入しており、これによっ…

米軍会議に出席?

今日は、US Army(米陸軍)の保全関係の会議に参加させてもらいました。Rさんが研究室のスタッフや研究内容の概要を、大学院生の一人が Kaala 山の陸貝相についてを、それぞれパワーポイントを使って紹介していました(私は見てただけです)。 「大学教授の…

ヒトに最も近いのはオランウータン?:異説・珍説の扱い方

自然現象を説明するメカニズムは一つとは限りません。多くの仮説の中から、もっともらしい説明こそがそのメカニズムとして一般に解釈されています。 「99・9%は仮説:思いこみで判断しないための考え方 」 という本でも、科学における仮説について簡潔に説明…

論文投稿のとりさげ

最近、論文投稿のとりさげというのをはじめてしてみました。つまり、論文を雑誌の編集局に投稿したのですが、査読者のコメントに十分に対応することができないと判断し、自ら投稿をとりさげたということです。 いろいろ不満があって、時間の無駄と思い、別の…

予備データの重要性

今日は、研究室のアシスタントによる内輪向けのセミナーに参加しました。お昼時ということで、ピザに加えてビールまで振る舞われました。平日のお昼からビールを飲むという発想がすごいなあとは思いつつ、私は辞退しましたが(教員もさすがに飲んでなかった…

査読コメントが辛いわけ

いわゆる研究者にとって大事な仕事はいくつかあるわけですが、若手研究者にとって最も大事なことは論文を書くことかと思います。 科学論文が出版されるまでにはおおまかに以下の過程を経るのが一般的でしょう。(1)アイデアを練る(仮説をたてる)、(2)…

インフルエンザ発生や Ph.D. Defense

キャンパス内の学生寮で、いわゆる「豚インフルエンザ(swine flu)」が発生したそうです。といっても、今のところ大学が閉鎖されたり、授業がなくなるわけでもないようです。こういった情報は、大学からの一斉メールや日本総領事館からのメールで知らされま…

論文査読の黄金律

論文の査読システムについては何度か触れてきました。論文を発表することは研究者にとって最も大事な仕事といえます。しかしその発表にあたっては、同じ分野の研究者による査読(審査)を受けることが一般的です(peer review system)。論文を投稿してその…