論文査読の黄金律

 論文の査読システムについては何度か触れてきました。論文を発表することは研究者にとって最も大事な仕事といえます。しかしその発表にあたっては、同じ分野の研究者による査読(審査)を受けることが一般的です(peer review system)。論文を投稿してその審査結果が返ってくるまでは、なかなか落ち着かないという人も多いでしょう。次の仕事にさっさと移れば良いのに、なかなか気になってしまうものです。それゆえに、なるべく返事が早い(査読期間が短い)雑誌に投稿する傾向になっていきます。


 論文査読は、相互利他的なシステムである。つまり、自分の論文のために他人の論文を査読する。時間が許せば査読を引き受け、完全でフェアで建設的な批評を行うべきだろう。


 American Naturalist 誌の2008年における査読期間の調査を行った。編集者が査読者への依頼を行ってから最終的な査読結果が編集部に届くまで、通常4〜6週間、短くて2週間、最長は16週間以上かかっていた。求められた期間(21日)以内に査読結果が編集部に返送されてきた論文はわずか8%にすぎなかった。つまり、多くの査読者が期間を遵守すればより査読期間はより短くなるだろう。


文献
McPeek MA et al. (2009) The golden rule of reviewing. The American Naturalist 173: E155-E158.


 自分の論文の査読結果がはやく返って来てほしいと願うなら、他人の論文もなるべくはやくに査読して返しなさい、ということでしょうか。


 しかし、こういう共生系には必ずチーター(論文は投稿するけど査読は必ず断るという人)が現れるというのも興味深いところです。