大学院生の研究費

 米国でも日本でも、研究者は研究費を獲得するために提案書を書いて申請します。国の研究費だったり、民間の研究費だったりします。日本では科学研究費補助金(いわゆる科研費)が一般的です。米国では国立科学財団(NSF)の支給する研究費がそれにあたります(参考:大学教授の仕事:研究費の獲得など)。


 大学院生もまた研究をするのに資金が必要です。今の研究室では、修士の学生から積極的に研究申請書を書いているようです*1。院生のパット君に聞いたら5つくらい出すそうです。ちょうど彼のやっているテーマの文献を知りたいと言ったら、申請初の1つ(15万円くらいの申請)を見せてくれました。全部で2600ワード、引用文献をのぞけば1900ワードからなる申請書でした。Summary(要約)、Introduction(導入)、Goals and Objectives(目的)、Methods(方法)、Preliminary Data(予備データ)、Budget(予算)、References(引用)の順です。研究テーマに関して、引用文献を含んだちょっとしたレビューになっています。このままデータをとって結果と考察を加えれば小さな論文になりそうです。


 米国では研究室によっては資金が潤沢で、個々の学生が特に研究費を申請する必要ない場合もあるようです。今の研究室はそれほど裕福ではないのでしょうが、先生は学生の教育としてこれを薦めているような気もします(申請書はきっちり添削されています)。確かに、研究者として独立すれば自分で研究費を獲得する必要があるので、そういった訓練は最初からしておくにこしたことはないでしょう。たとえ研究者にならない場合でも、企画書を書く職場は多いと思います。


 もちろん日本でも大学院生の頃から研究費の申請を行うのはごく一般的です。日本学術振興会(いわゆる学振)の特別研究員に応募(申請書と面接による公募)して採用されれば、博士課程から給与が支給されるだけでなく科研費を使うことができます。特別研究員になれない場合でも、民間の研究費に申請することはできます。学生の頃から積極的に研究費を申請し支給されている人は、順当に研究者への道を進んでいるように思われます*2


追記:先生に聞いたら、大学院生向けの研究費申請書(grant proposal)の書き方の授業もやっているらしい。日本でもこういうのがあったら教育的に良いかもしれません。私の時代にはなかったけど、現在はけっこうあるのかもしれませんが。あ、でも、研究所なんかでは(研究員に向けたセミナーとして)熱心にやっています。

*1:これはフェローシップではなく給与は含まれていません。給与は研究室のプロジェクトから支払われていて、そのプロジェクト業務は割り当てられた日数で別に行う必要があります。

*2:日本でも米国でも研究費の獲得は重要な業績としても考慮されます。採用、昇進、テニュア獲得といった際に評価されます。