サムライアリの季節

昨日の夕方、研究所の構内でアリの行列を見つけました。ひょっとして、と思いしばらく観察していると、その集団はクロヤマアリの巣に入っていきました。 クロヤマアリの巣に入り込むアリの集団 さらに観察を続けると、巣の中から繭を運び出しています。 クロ…

藻場と海草とワレカラ

やっぱり日本の夏は暑いです。湿度が高いのはもちろんですが、実際の気温も高い。ハワイでは寝苦しくて目が覚めたのは2年間で1,2日くらいだったのに。 暑いと海に行きたくなるそうですが、内陸生まれの内陸育ちで、海には全く馴染みがありません。ハワイに2…

写真撮って専門誌に発表

3年ぶりの日本のフィールドシーズンということで、毎週のように出かけており更新が滞っておりました。 さて、連休でちょっと一息ついたということもあって、久しぶりの更新です。 おなじみのナショナルジオグラフィックニュースから 豪州で発見、道具を使う…

種数面積関係にもとづく絶滅率の推定は過大?

本日5月22日は国際生物多様性の日だそうです。 久しぶりにナショナルジオグラフィック ニュースの記事から 「種の絶滅率はそれほど高くない?」 昨今地球上の生物はかなりの速度で絶滅していると言われています。絶滅原因の最も大きな要因は、生息地の破壊で…

日本の固有植物

ようやく初夏らしい日が続くようになってきました。フィールドシーズン到来です。ゴールデンウィークより、いろいろな花を見る機会がありました。日本の初夏は3年ぶりということで、日本の植物の良さを感じるとともに改めて自身が日本で生まれ育った日本人な…

究極のレピ図鑑? 日本産蛾類標準図鑑

すっかり春らしい陽気が続いています。余震も、放射性物質も、花粉も気になる毎日ですが、先日は研究所の同僚とお花見をしながら外でお弁当を食べました。 考えてみればサクラの開花をみるのも3年ぶり? こんな世の中ですが、大著が出版されました。その名も…

追悼・あこがれの昆虫学者

コーネル大学名誉教授のトーマス・アイズナーさん(Thomas Eisner)が先月逝去されました。 New York Times Thomas Eisner, Who Cracked Chemistry of Bugs, Dies at 81 長年患っていたパーキンソン病の合併症で亡くなられたようで、享年81歳とのこと。安ら…

研究をしてきた理由

年度末の大学では、退職される先生の最終講義というイベントがあります。研究所でも、退職される研究員の方が最後のセミナーをして送別会が催されることもあります。この度の震災で、いろいろ変更があったのですが、所属している研究所でも3月末に退職される…

震災後

札幌滞在中に震災があって、自宅周辺のライフラインがしばらく復旧しないと踏んで、有給休暇をとってそのまま札幌滞在を延ばしました。その間、北大の知り合いをたよりに研究室訪問などをして過ごしました。お忙しい中お相手してくださった方々に感謝です。 …

「種間相互作用の島嶼生物地理」を企画

日本生態学会の札幌大会に参加しました。 この数年、島の生物学を勉強したり研究したりして、島の生物間相互作用について少しまとまった形として何かしたいなあと漠然と考えてきました。ハワイから帰国して、次も島の生物学を研究できるという保証(例えば研…

至高のレピ図鑑?

学生の頃、樹木につく様々な蛾(ガ)*1の幼虫を採集し、飼育して、その天敵である寄生蜂や寄生蝿を羽化させる研究をしていました(参考)。 採集した幼虫は、まず、保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑(全2巻)」(1965年)か、講談社の「日本産蛾類生態図鑑」(1…

アリバチ図鑑

「月刊むし」に掲載された「日本産アリバチ図鑑」がすばらしい。 月刊 むし 2011年 03月号 アリバチとは、アリとは全く異なる科に属するハチのグループ(アリバチ科 Mutillidae)です。雄には羽があるものの、雌はアリと同様に無翅なので、よくアリに間違わ…

クニマスの定着に導入圧は重要だったのか?

過去に絶滅したと思われていたクニマスが本来生息していなかった湖から再発見されたというニュースが昨年末にちょっとした話題になりました(参考:“絶滅”した幻のクニマスを発見)。10年くらい前学生だった頃に「むしクン」と呼ばれからかわれた身としては…

被子植物のうち87.5%の種が動物媒

そろそろスギ花粉が飛散する季節になってきました。スギはご存知のように風によって花粉が運ばれる風媒花をつけます。温帯から寒帯にかけて多く分布する針葉樹などの裸子植物では、風媒の種がほとんどです。一方、被子植物では、風媒の種の割合はそれほど高…

博物館標本の価値

気候変動による影響、絶滅種/絶滅危惧種の増加、外来種の移入/分布拡大、などなどさまざまな問題について、根拠となる長期データが必要とされています。特に、過去(例えば20世紀初期、古くは19世紀以前)の標本が貴重なデータを提供しうることはもっと認…

周辺環境が食物網を通じ害虫の大発生を抑える

天敵の多様性が高まれば害虫の個体数を低く抑えることが可能でしょうか? 実際、天敵が多様なほど、害虫を減らすということが報告されています(参考:有機農法が害虫の天敵の多様性を高め収穫量を増やす)。しかし、天敵の多様性が高い系で必ずしも害虫が大…

全動物種の記載にかかる推定予算

地球上の生物種は何種くらいいるのか、また未だ記載されていない種を全部記載するのにどれくらいの期間がかかるのか。では、それにかかる予算は? 最近 Trends in Ecology & Evolution 誌に出た短い論文で、全動物種の記載にかかるコストが推定されていまし…

全盲の博物学者

「博物館行き」という言葉にみられるように、現代では「博物学」とか「博物学者」と呼ばれるのは、あまり名誉なことではないかもしれません。しかし、自然史(ナチュラルヒストリー/natural history)を研究している学者を、ダーウィンやウォーレスの流れを…

ヒカリコメツキが光る理由

先日放映されたテレビ番組の中で「ヒカリコメツキの発光」映像が大変興味深かった。 世界の生物多様性のホットスポットを、福山雅治がナビゲーターとして訪れていくという番組です。ホットスポットの定義については、以前に少し触れました(ホットスポットと…

オサ掘り

お正月は関東地方らしい良い天気でした。初日の出は九十九里浜で迎え、この海の遠く先にハワイがあるのかあと思ったり。 せっかくなので、新年早々オサ掘りをしてきました。「オサ掘り」というのは、晩秋から初春の間に、土中や朽木中で越冬中のオサムシを掘…

マイマイカブリの地理的変異:首が細いか太いか

日本列島に固有の生物について、その多様性や地理的変異を明らかにするという研究に強く興味をもっています。最近、Evolution 誌に日本固有のマイマイカブリの地理的変異についての論文が出版されたようで、さっそく読んでみました。 カタツムリを捕食するマ…

潜葉虫の自然史

待望の(?)潜葉虫(せんようちゅう)に関する本が出ました。 絵かき虫の生物学 目次 絵かき虫の生物学(序論) I. 絵かき虫の分類・多様性 コウチュウの絵かき虫 葉に潜るハエとその進化史 潜葉性をもつガ類の多様性 ハチの絵かき虫 II. 絵かき虫の生態 チ…

亜熱帯大陸島・沖縄本島を訪問

沖縄本島北部に来ています。先月の西表島に引き続き、大陸島の生物多様性の高さを感じているところです。南西諸島で最大の島ですから、多様性が高いのは当たり前かもしれませんが。 北部の森林(イタジイと呼ばれるシイが優占する常緑広葉樹林) 沖縄といっ…

昆虫学会の支部会

先日の日曜日、久しぶりに昆虫学会の支部会に参加してきました。 京都にいる時は毎年のように支部会に参加していたのですが、関東地方に移ってからは参加したことがありませんでした。ちょっと遠い場所で開催されていたのと、いろいろ忙しかったからです。 …

蔓脚類の自然史

以前から気になっていた蔓脚類(まんきゃくるい)についての一般向けの書物を、西表島への出張の道すがら読んでみました。 フジツボ―魅惑の足まねき 一般にはフジツボと呼ばれていますが、ダーウィンもかなり真剣に研究に取り組んだ動物の仲間です。固着性で…

亜熱帯大陸島・西表島を訪問

西表島を訪れています。帰国後の寒さで顔にあかぎれができそうなほどでしたが、当地ですっかり回復しました。やっぱり南の島は心地よいです。 大きな地図で見る ここ数年、小笠原諸島やハワイ諸島といった海洋島でのフィールドワークがメインでしたので、南…

植物の種多様性が食物網に与える影響

とあるグループの種多様性が減少することで、食物網を通じて他の生物にどのような影響を与えるのでしょうか。 例えば、植物の種数が増えれば、それらを食べる植食者の種数が増えることが予想されます。では、植食者を食べる捕食者の種数や個体数は増えるので…

飛行機によって運ばれる外来種

ホノルルから帰国する機中で、キイロショウジョウバエを見かけました。自然状態で何千から何万年に一度くらいしか成功しないような、異なる生物地理区を越える移動イベントは、飛行機に乗るとほんの数時間でなしとげてしまいます。 島に固有の鳥類を絶滅に追…

アイランド・シンドローム

小笠原諸島など海洋島における生物相やその進化について一般的にわかりやすい本が出版されていました。この2年間ここで紹介してきたような話が、かなりわかりやすくまとまっています。 小笠原諸島に学ぶ進化論 ―閉ざされた世界の特異な生き物たち― 「Island …

日本列島の生物多様性とは

帰国して最初に読む本は決まっていました。*1 生命は細部に宿りたまう ミクロハビタットの小宇宙 日本列島の生物とは、生物多様性の保全とは、いろいろと考えるのに良い本です。日本列島に固有の生物とその種間相互作用について、さまざまな事例を紹介してい…