やっぱり日本の夏は暑いです。湿度が高いのはもちろんですが、実際の気温も高い。ハワイでは寝苦しくて目が覚めたのは2年間で1,2日くらいだったのに。
暑いと海に行きたくなるそうですが、内陸生まれの内陸育ちで、海には全く馴染みがありません。ハワイに2年間もいたのに、一度も海で泳がなかったほど。したがって、海の生物の知識はほとんどありません。ただ、全く興味がないわけではなく、機会があれば観察したいと思っていました。現在の職場も森林メインなので、海に出る機会もなかなか訪れなかったのですが、6月の大潮の頃、知人に東京湾の藻場に案内してもらいました。
藻場(もば)とは被子植物であるアマモやコアマモといった海草(うみくさ)が茂る場所です。アマモは時期がくればちゃんと花をつけます。
訪れた浜は遠浅で、大潮だったので歩いて藻場までたどり着くことができました。
アマモの葉上には、ナナフシそっくりのワレカラの仲間が見られます。ワレカラというのは節足動物ですが、昆虫ではなく、エビやカニが属する甲殻類の方に所属しています。
ワレカラの一種(茶色の個体と緑色の個体:アマモに隠れやすいための隠蔽色)
ワレカラの体表には何かモヤモヤしたゴミのようなものがついているのですが、これをよくよくみると、なんとワレカラの子供たちだったのです。
実は、ワレカラの仲間は育児する亜社会性の動物なのです。子供の頃、ダンゴムシのお腹に卵や生まれたばかりの子供がいるのを観察したことはないでしょうか。ダンゴムシやワレカラは同じフクロエビ上目という大きなグループに含まれる仲間なのです*1。
日本でもワレカラ類の育児行動は研究されているのですが、なるほどこれはおもしろい研究テーマだろうと納得しました。ワレカラ類の親は、天敵から子を守るが、直接給餌するわけではないことから、「子守行動」と呼ばれているようです。
参考文献
これまで藻場の生態系についての知識は、名著「日本の渚―失われゆく海辺の自然」で読んだくらいで、ワレカラはこれまた名著「原色検索日本海岸動物図鑑〈2〉」で図版を眺めては憧れていただけでした。こうして実際に藻場を訪れ、ワレカラを観察し触れてみることで興味が深まることを感じました。やっぱりフィールドは良いものです。